【2026年】業務フローにAIを差し込む順番|任せる所を決める

【2026年】業務フローにAIを差し込む順番|任せる所を決める

「AIを入れると決まったのですが、どこから手を付けるかが決まりません」「まず業務を書き出してくださいと言われて、3か月たちました」——導入が決まった直後の会社で、判断が止まる典型の形です。現場は全部やってほしいと言い、情報システムの側は業務を書き出してほしいと言う。どちらも間違っていないのに前に進みません。原因は熱意でも体制でもありません。本当は、書き出しの目的が「全部を書くこと」になっていて、差し込む場所を決めるための書き出しになっていないことです。この記事では、いまの業務の流れを書き出して、どこにAIを差し込むかを決めるまでの順番を並べます。


カメ先生カメ先生

業務の書き出しは、細かく正確に書くほど良いと思われがちなんだけど、本当は差し込む場所を決めるのに必要な列だけを書くほうが早いんだ。


カメ子カメ子

全部を書かなくてもよい、ということですか。


カメ先生カメ先生

うん。全部書こうとすると終わらない。終わらない図は誰も読まないから、書いた分まで無駄になってしまう。


カメ子カメ子

決めるための図と、記録として残す図は、別のものなんですね。


この記事のポイント
  • 書き出しが止まるのは目的が2種類混ざるから。差し込む場所を決めるための列だけを書く
  • 1工程は担当が変わるか道具が変わるところで切る。件数と1回あたりの時間を必ず数字で入れる
  • 差し込み先の4条件は、同じ判断の繰り返し、入力の形がそろう、取り返せる、件数が多い

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目次

場面:業務の書き出しから始めた3か月後、1つも差し込めていなかった

具体的な場面を1つ置いて、記事の最後まで同じ題材で追います。産業機器を扱う従業員450人規模の商社で、経営会議がAIの導入を決めました。着手の方針は「まず現状の業務を書き出す」。情報システム部門が書式を1枚作り、営業、業務、技術の3部門に配りました。

3か月後に集まったのは、合計で900行を超える一覧でした。ところが、どこにAIを差し込むかは1つも決まりませんでした。理由は2つあります。1つ目は粒度がそろっていなかったことです。ある部門は1日分の仕事を6行で書き、別の部門は同じ範囲を40行に割っていました。行数の多い部門が忙しいように見えるだけの資料になっていました

2つ目は、件数と時間の列が空欄だったことです。書式には列があったのに、数えていないので埋まりません。件数と時間が入っていない一覧は、どれから手を付けるかを決める材料になりません。この2つを直すところから、この記事の手順は始まります。

手が止まる本当の原因は、書き出しの目的が2種類混ざっていること

同じ詰まり方は、多くの会社で起きています。帝国データバンクが2026年5月14日に公表した「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」では、生成AIに関する懸念や課題として「生成AIを活用すべき業務の範囲」を挙げた企業が40.0%ありました。情報の正確性が50.4%、専門人材やノウハウの不足が41.3%に続く3番目の項目です。調査は2026年3月17日から31日に全国2万3,349社を対象に行われ、有効回答は1万312社、回答率は44.2%でした。

この40.0%は、道具の性能や予算の話ではありません。範囲が決まらないという課題です。そして範囲が決まらない最大の原因は、書き出しの目的が2種類混ざっていることにあります。記録として残す図と、差し込む場所を決めるための図は、必要な列が違います

記録として残す図は、引き継ぎや監査のために作ります。例外の分岐、根拠となる社内規程、画面の名前まで書く必要があり、完成には時間がかかります。決めるための図は、比べて選ぶために作ります。必要なのは、担当、道具、件数、時間、判断の有無です。先に必要なのは決めるための図で、記録として残す図は差し込む場所が決まった後に作ります。順番を逆にすると、完成を待っているあいだに導入の機運が終わります。

業務フローとは何か。記法を選ぶより先に決めること

言葉を1つ整理します。業務フローとは、ある仕事が始まってから終わるまでの工程を、担当と順番と分岐が分かる形に並べたものです。図で描くとは限りません。表でも一覧でも、この3つが読み取れれば業務フローとして機能します。

図の記法には国際的な標準があります。業務プロセスを図で表す記法は2004年に初版が公開され、2011年に2.0版が出て、2013年に国際規格として承認されています(規格番号は19510)。要素は3つに集約できます。活動を四角、事象を丸、分岐をひし形で表し、担当は縦か横の区分で分ける形です。国内の実務では、日本産業規格に沿った流れ図の記号(開始と終了の端子、処理の四角、判断のひし形)もよく使われます。

この記法には、粒度を考えるうえで参考になる決まりがあります。矢印が3種類に分かれている点です。実線は同じ組織の中の順序、破線は組織をまたぐ連絡、点線はデータの関連を表します。組織をまたぐ受け渡しだけが別の線で描かれる設計になっています。次の節で扱う粒度の基準は、この考え方と一致します。担当が変わる境目は、記法の側でも特別扱いされている境目です。

ただし、記法を先に選ぶと止まります。記号の使い方の議論が始まり、書き手ごとの解釈の差を埋める作業に時間が移るからです。記法が必要になるのは、決めた後に残す図のほうです。決めるための書き出しは、表計算の1枚で足ります。図にするかどうかは、比べる作業が終わってから判断してください

書き出す粒度:担当が変わるか、道具が変わるところで切る

次に粒度です。ここが冒頭の商社でずれた場所でした。基準は2つだけに固定します。担当が変わるところ、そして道具が変わるところです。この2つ以外では切りません。

理由は単純です。AIを差し込める単位が、この2つの境目にしか置けないからです。同じ人が同じ道具で続けてやっている作業の途中に差し込むと、渡す作業と受け取る作業が新しく増えて、合計の時間が増えます。境目でない場所に差し込むと、速くするために足した工程が遅れの原因になります

見積の作成を例にすると、6行に収まります。仕様を聞き取る(営業・電話)、条件を整理する(営業・表計算)、型式を選ぶ(技術・部品表)、価格を算定する(業務・見積の道具)、承認を得る(上長・見積の道具)、送付する(営業・電子メール)。この基準で切ると、同じ仕事は部門が違っても近い行数になります。粒度の基準が2つに固定されていれば、部門をまたいで比べられます。40行に割った部門は、担当も道具も変わらない操作の単位で切っていました。

書き出しの雛形:1工程の行に入れる9項目

粒度が決まったら、書式を固定します。列は9つで足ります。多くしないことがこの雛形の要点です。そして空欄そのものが意味を持つように設計します。

書く内容空欄のときに読み取れること
工程の名前動詞で書く(条件を整理する)担当者が作業として認識していない
担当役職ではなく役割(営業・技術・業務)複数部門が同じ工程を持っている
使う道具その工程で開くもの紙か口頭で回っている工程
入ってくるもの前の工程から受け取る形起点が不明で経路を追えない
出すもの次の工程に渡す形その工程の成果が定義されていない
月の件数回数を幅で書く(80件から120件)数えていない。優先順位を付けられない
1回の時間分で書く(実測が望ましい)感覚で語られている工程
差し戻しの割合やり直しになる割合品質の問題が見えていない
判断の有無人が決めていることを1行で定型作業か判断かが分かれていない

9列のうち、6列目から8列目が入っていないと差し込み先は決められません。冒頭の商社で3か月かけて何も決まらなかったのは、まさにこの3列が空だったためです。件数と時間と差し戻しは、書き出しの作業ではなく数える作業なので、書式を配っただけでは埋まりません

逆に、記録として残す図に必要な列はここに入れません。例外の分岐、根拠の社内規程、システムの画面名、承認の権限の範囲。どれも後で必要になりますが、いま入れると1行あたりの記入時間が3倍になります。決めるための列は9つ。それ以上は差し込む場所が決まった後に足します

件数と1回あたりの時間を、必ず数字で入れる

9列のうち2列に絞って、書き方を具体にします。件数と時間です。この2つが入ると、年間の時間が計算できるようになり、順番の議論が感触の話から抜けます。

計算はごく単純です。月に100件あり、1回に30分かかる工程なら、月50時間、年間で600時間です。一方、月に3件で1回に3時間かかる工程は、年間108時間にとどまります。1回の重さで判断すると後者が大きく見えますが、年間で見ると6分の1以下です。順番を決める材料は、1回の重さではなく年間の合計になります。

実測の取り方には工夫が必要です。全部の工程を測ると終わらないので、対象を絞ります。件数が多いと申告された上位の工程だけ、3営業日、担当2人分。これで十分に判断できます。測る対象を絞る決断を先にしないと、測る作業そのものが新しい業務になります

数字は1点で書かず、幅で書きます。月80件から120件、1回20分から40分。1点で書くと、後で実態と違ったときに一覧全体の信頼が落ちます。幅で書いておけば、幅の中に収まっている限り書き直す必要がありません。3か月後に見直すときの手間が大きく変わります。

差し込み先を見分ける4条件

ここが記事の核です。9列の一覧がそろったら、工程ごとに4つの条件を当てます。4つそろう工程から入れるのが原則です。

  1. 同じ判断を繰り返している(判断の基準を言葉で書ける)
  2. 入力の形がそろっている(受け取るものの形が毎回同じ)
  3. 間違えても取り返せる(外に出る前に人が見る形になっている)
  4. 件数が多い(年間の合計時間が回収の水準に届く)

4つのうち3つでも差し込めますが、欠けている1つによって起きる問題が変わります。だから点数を付けるだけで終わらせず、欠けている条件の名前を工程ごとに書き残します。名前が書いてあれば、次に何を手当てすればよいかが分かります。

この4条件は、実際に差し込まれている工程の偏りも説明します。先の帝国データバンクの調査では、活用している業務は文章の作成や要約、校正が45.1%と最も多く、情報収集が21.8%、企画立案のアイデア出しが11.0%と続きます。一方、データの集計や分析は7.4%にとどまります。数字を扱う工程が伸びないのは、需要が無いからではなく、条件2と条件3で落ちるからです。集計の元になる表は形がそろっておらず、出た数字はそのまま次の判断に使われるため取り返しにくい。逆に文章の工程は、入力が文章で形がそろいやすく、直してから使う前提なので取り返せます。

経験上、4つ全部がそろう工程は、部門の中で一番地味な工程です。目立つ工程ほど判断が混ざっていて、地味な工程ほど条件がそろいます。冒頭の商社では、問い合わせの一次振り分けと、見積の条件を整理する工程がここに入りました。どちらも会議では話題にならない工程でした。

条件1と2:同じ判断の繰り返しか、入力の形がそろっているか

4条件を2つずつ見ていきます。1つ目は、同じ判断を繰り返しているかどうかです。判定の仕方は1つで、その判断の基準を言葉で書けるかを試します。

たとえば「金額が50万円を超えたら技術の確認に回す」なら書けています。「案件の雰囲気で決める」なら書けていません。基準が書ければ差し込めますが、書けない工程は人の判断であって定型作業ではありません。ここを区別せずに載せると、担当者が結果を毎回作り直すことになり、確認の時間だけが増えます。書けるかどうかは、その工程の担当者に3分で口述してもらえば分かります。

2つ目は、入力の形がそろっているかどうかです。前の工程から受け取るものが、毎回同じ形かを見ます。電子メールの本文と紙と表計算のファイルが混ざって届く工程は、そろっていません。

この場合の手当ては順番が決まっています。形をそろえる工程を先に差し込み、判断の工程は後にします。入力がそろっていない工程に載せると、間違いの原因が入力なのか処理なのか切り分けられません。原因が切り分けられない状態では、直しても直った理由が分かりません。形をそろえる工程は地味ですが、後の全部の精度を決めます

条件3と4:間違えても取り返せるか、件数が多いか

3つ目は、間違えても取り返せるかどうかです。判定は「結果が外に出る前に人が見る形になっているか」で行います。取引先へ自動で送る工程、支払を実行する工程、データを消す工程は取り返せません。

取り返せない工程を最初に選ぶと、1回の失敗で導入そのものが止まります。実際に多いのは、送付の工程を最初に選び、1件の誤送で全社の利用が凍結されるという展開です。最初の3か月は、取り返せる工程だけに限るという方針を先に決めてしまうほうが早く進みます

4つ目は件数です。判定の目安として、年間の合計時間で見ます。本記事の提案としては、年間100時間を1つの境に置きます。前に計算したとおり、月100件で1回30分の工程は年間600時間ですが、月3件で1回3時間の工程は年間108時間です。

なぜ件数が要るのか。差し込んだ後には、確かめる作業と、手順を直す作業が必ず残ります。この維持の手間は件数に関係なく発生するため、件数が少ない工程では回収できません。件数の少ない工程は、うまくいっても組織に残りません。担当者が異動した時点で使われなくなり、次の人が元の手作業に戻します。

差し込み先を見分ける判断表

4条件を実際の工程に当てた例を表にします。自社の一覧に当てるときの読み方の見本として使ってください。右端は判断で、3種類に分かれます。

工程の例満たす条件の数欠けている条件判断
問い合わせの一次振り分け4つなし最初に入れる
見積の条件を整理して転記する4つなし最初に入れる
打ち合わせの記録から要点を出す3つ入力の形(録音の質が不均一)形をそろえてから入れる
請求書を発行して送る3つ取り返せない(外に出る)送る前に人が見る形にして入れる
特注品の仕様を決める1つ同じ判断の繰り返し、件数入れない
価格の最終決定1つ取り返せない、判断そのもの入れない

表の使い方は2段階です。まず自社の一覧の各行に、満たす条件の数を書きます。次に、4つに届かなかった行に、欠けている条件の名前を書きます。点数だけを付けて名前を書かないと、翌月には何が足りなかったのか誰も思い出せません

そして、判断の列は3種類に限ります。最初に入れる、手当てしてから入れる、入れない。「検討する」という判断を作らないことが、この表が機能する条件です。検討という欄を1つ作ると、判断の8割がそこに集まります。

差し込んではいけない4種類の工程

入れない側も明確にしておきます。4種類あります。判断そのもの、取り返せない工程、件数が少なく前提が毎回違う工程、そして根拠を説明しなければならない工程です。

1つ目と2つ目は前に触れました。3つ目は、月に数件しかなく、しかも毎回の前提が違う工程です。特注品の仕様決定や、大口の取引条件の調整が当たります。前提が毎回違うので手順が固まらず、固まらないので確かめ方も決まりません。前提が毎回違う工程は、件数が少ないことより手順が固まらないことのほうが致命的です

4つ目が見落とされます。根拠を説明する義務がある工程です。監督官庁への報告、客先への技術的な回答、社内の懲戒や評価に関わる判断がここに入ります。この種の工程は、出た答えが正しくても、なぜその答えになったのかを人が説明できないと使えません。説明の責任は、出力の正しさとは別の要件です

では、入れないと決めた工程は放置するのか。そうではありません。判断そのものには入れず、その1つ前と1つ後に入れます。前の工程では判断の材料を集めて並べる。後の工程では決まった内容を所定の形に整える。判断には差し込まず、判断の1つ前と1つ後に差し込む。この置き方なら、決めるのは人のままで、前後の時間が減ります。

進める順番を5工程に固定する

ここまでの内容を、そのまま着手できる順番に並べます。1と2は会議室でできますが、3は現場に出る作業です。

STEP1
書き出す範囲を、1つの仕事に限る

部門の全業務ではなく、1つの仕事の始まりから終わりまでに限ります。見積の作成、問い合わせの対応、月次の請求のうち1つです。範囲を限らないと終わりません。

STEP2
担当が変わるところと道具が変わるところで切る

この2つの基準以外で切りません。1つの仕事が10行を超えたら、切りすぎていないかを確かめます。

STEP3
件数と1回の時間を、上位の工程だけ実測する

件数が多いと申告された上位の工程に絞り、3営業日、担当2人分で測ります。数字は1点ではなく幅で書きます。

STEP4
4条件で点数を付け、4つそろう工程を2つ選ぶ

欠けている条件の名前も同時に書きます。選ぶのは2つまでです。3つ以上を同時に始めると、どれも確かめ切れません。

STEP5
選んだ2工程で1か月動かし、差し戻しの割合を測る

見るのは出来栄えの印象ではなく、差し戻しの割合と確かめにかかった時間です。1か月後に、続けるか戻すかを決めます。

この5工程で最も飛ばされるのは1です。範囲を限る判断は、限られた側の部門から不満が出るため、決めにくいのです。範囲を限らずに始めた書き出しは、例外なく途中で止まります。冒頭の商社も、3部門の全業務という範囲から始めていました。

書き出した図が使われなくなる原因と、3か月後も使える残し方

書き出しには、作った直後に読まれなくなるという固有の失敗があります。原因は2つに絞れます。作った人しか読めない書き方になっていることと、更新の契機が決まっていないことです。

作った人しか読めなくなる原因は、社内の略称と部門の呼び名です。「一次チェック」「甲側の確認」「例の様式」。書いた本人には自明でも、半年後の別の担当には読めません。対策は、工程の名前を動詞で書くという1つの決まりだけです。動詞で書けない工程は、そもそも何をしているかが共有されていない工程です

更新されない原因は、更新の契機が書かれていないことです。契機は2つに決めます。使う道具を入れ替えたときと、担当する部門が変わったときです。この2つに限れば、年に1回か2回で済みます。更新日と書いた人の名前を行ごとに残しておくと、次の担当が誰に聞けばよいか分かります

国内の解説メディアが2026年7月に更新した業務フロー作成の道具の比較記事でも、失敗として、作成のルールが統一されず書き方がばらつくこと、更新されずに形だけ残ること、現場での実行が伴わないことが挙げられています。道具の側の状況も1つ書いておくと、業務可視化の道具は、レビューを掲載する国内のサイトで31製品が並んでいます(2026年8月10日の集計時点)。系統は2つで、図を描く道具と、端末や仕組みの操作記録から実際の流れを起こす道具です。後者は書き出しの手間を減らせますが、人が何を判断しているかは記録に残らないため、9列のうち判断の有無の列は聞き取りで埋めることになります。

AIの使いどころ。聞き取りの整理と、抜けの指摘

この作業そのものにも、AIを使える場所があります。2つです。どちらも量と定型に対して効く使い方で、判断の代行ではありません。

1つ目は、現場への聞き取りの整理です。担当者に業務の流れを話してもらい、その記録から工程の候補を並べる作業がここに当たります。手がかりは決まっています。担当が変わる言い方(渡す、依頼する、回す)と、道具が変わる言い方(開く、入力する、出力する)です。この2種類の言い方が出てくる箇所を拾えば、粒度の基準に沿った候補が並びます。ただし出てきた候補は候補として扱い、話した本人に1回読ませてから確定させてください。

2つ目は、書き出した一覧の抜けの指摘です。9列の雛形は、空欄そのものに意味を持たせる設計にしてあります。だから、空欄の場所と数を数え、意味を並べる作業は機械的にできます。担当が変わる境目で切れていない行、出すものが空の行、入ってくるものと前の行の出すものが一致していない行。抜けの指摘は、正しさを判定する仕事ではなく、突き合わせの仕事なので任せられます

補足として、似た工程をまとめる候補を出す使い方もあります。3部門が同じ内容を別の呼び名で書いている行を拾う作業です。呼び名が違うだけの工程を1つに寄せると、一覧の行数が2割前後減ることがあります。減った分だけ、比べる作業が軽くなります。

どこに差し込むかの決定は、AIに出させない

一方で、任せてはいけない場所が1つあります。どの工程に差し込むかの決定です。理由は精度ではなく、責任の所在にあります。

差し込む場所を決めるとは、その工程を持つ部門が「間違いが出たら自分が受ける」と引き受けることと同じです。順位表を根拠に決めると、引き受ける人がいなくなります。誰も引き受けていない導入は、最初の1件の失敗で止まります。止まった後に誰が判断を戻すかも決まっていないため、そのまま放置されます。

もう1つ実務的な理由があります。順位表は条件の重みで簡単に順序が変わります。件数を重く見れば大量の定型作業が上に来て、取り返せるかを重く見ればまったく別の並びになります。どの条件を重く見るかを決めることが、本来の意思決定の中身です。重みを決めずに出てきた順位は、その意思決定を飛ばした結果にすぎません。

実務の形にすると3つの決まりになります。1つ、4条件それぞれの根拠(数字と、その数字の出どころ)を並べさせる。2つ、数えていない列には「未計測」と明記させる。3つ、選ぶ2工程を書く最後の1行は人が書く。並べるのは機械の仕事、選ぶのは人の仕事という分担にしておくと、後で経緯を説明できます

差し込み先の選び方でやりがちな失敗

最後に、相談の場で実際に見かける失敗を並べます。どれも道具の選び方ではなく、書き出しと選び方の順番の問題です。

  • 部門の全業務を範囲にして書き出しを始め、途中で止まっている
  • 粒度の基準を決めずに配り、部門ごとに行数が数倍違う一覧が集まっている
  • 件数と1回の時間を数えず、感触で優先順位を付けている
  • 最初に選んだ工程が、取引先に自動で送る工程になっている
  • 満たす条件の数だけを付けて、欠けている条件の名前を書いていない
  • 入力の形がそろっていない工程に載せ、原因が入力か処理か切り分けられていない
  • 記録として残す図の完成を待って、差し込む場所の判断を後回しにしている

特に多いのは3つ目と7つ目です。3つ目は、声の大きい部門の工程が最初に選ばれるという形で表に出ます。7つ目は、図が9割の完成度で半年止まり、その間に導入の話そのものが流れるという形で表に出ます。決めるための図は不完全なまま使ってよい、と最初に宣言しておくことが実務では効きます

  • 本記事では、AIに載せた後の流れの設計(工程をどの単位で区切るか、どこに承認を置くか、失敗したときにどこへ戻すか)は扱っていません。差し込む場所が決まってから考える範囲です
  • 業務可視化の道具の固有名は挙げていません。製品の入れ替わりが速く、2026年8月時点の記述はすぐ古くなります。9列の雛形と4条件のほうは、道具が変わっても使い続けられます
  • 課題の数値は、帝国データバンクが2026年5月14日に公表した「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」によります。3つまでの複数回答である点に注意してください

まとめ

AIを入れると決まっても手が止まるのは、書き出しの目的が2種類混ざっているからです。帝国データバンクの2026年3月の調査では、活用すべき業務の範囲を課題に挙げた企業が40.0%ありました。先に必要なのは、記録として残す図ではなく、差し込む場所を決めるための図です。列は9つで足ります。

粒度の基準は2つに固定します。担当が変わるところ、道具が変わるところ。そして件数と1回あたりの時間を数字で入れます。差し込める単位は担当と道具の境目にしかないので、粒度の基準がそのまま判断の精度になります。数字は1点ではなく幅で書いてください。

差し込み先を見分ける条件は4つ。同じ判断を繰り返している、入力の形がそろっている、間違えても取り返せる、件数が多い。4つそろう工程を2つだけ選んで1か月動かします。判断そのものと、取り返せない工程と、根拠を説明する義務がある工程には差し込まず、その1つ前と1つ後に置きます。並べるのは機械、選ぶのは人。この分担を先に決めてから、1つの仕事の書き出しに着手してください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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