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銀行に届く外国送金の依頼を、送金の目的・相手国・取引の履歴と社内の基準に照らして、追加で確かめる事項のある依頼を判定し、担当者の確認に回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

外国送金の依頼を受け付けた時点で、依頼の内容・顧客の情報・過去の送金の履歴を社内の確認基準に1項目ずつ照らします。追加で確かめる事項のある依頼を判定し、根拠と顧客への確認事項の案を付けて外為の担当者に回します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
金融
対象部門
カスタマーサポート/法務
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
160h/月
AI導入後
60h/月
想定削減
63%
年間削減
1,200h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 外為の事務のシステムで、受け付けた依頼を1件ずつ開く
  2. 制裁リストとのフィルタリングの結果を見る。ヒットがあれば、所管部署の手順に回す
  3. 顧客情報のシステムを開き、顧客の事業内容・取引目的・顧客リスク評価を見る
  4. 送金の目的の記載と、添付された請求書や契約書の写しを読み、事業内容と合っているかを見る
  5. 過去の送金の履歴を開き、同じ受取人への送金があるか、金額や頻度が普段と違わないかを見る
  6. 社内の確認基準の一覧を見ながら、追加で確かめる事項がないかを考える
  7. 確かめる事項があれば、店舗の担当者か顧客に連絡し、資料や説明を求める。なければ送金の手続きに進める
導入後(After)
  1. 【人/自動】 窓口の入力またはインターネットバンキングで依頼が登録される
  2. 自動制裁リストとのフィルタリングの結果を確かめる。ヒットがあれば、この構成では扱わず所管部署の手順へ回す
  3. 自動顧客情報のシステムから、事業内容・取引目的・顧客リスク評価を取り出す
  4. 自動送金の履歴から、同じ受取人への送金の有無、過去12か月の件数・金額の平均と最大を計算する
  5. 自動国・地域の区分と金額の閾値など、数と一覧で決まる項目を規則で判定する
  6. 自動Azure OpenAI が、送金の目的と事業内容・添付資料の整合など、文章を読んで判断する項目を1項目ずつ判定し、根拠を引用する
  7. 自動引用が入力の原文にあるかを照合し、`standard` / `confirm_with_customer` / `escalate` を規則で決める
  8. 人外為の担当者が `confirm_with_customer` と `escalate` の依頼を開き、判定の根拠を確かめる
  9. 人顧客に確かめると決めたものは、確認事項の案を直して店舗の担当者か顧客に連絡する。`escalate` は所管部署へ回す
  10. 人`standard` の依頼も一覧で流し見て、送金の手続きに進める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 外為の事務のシステムで、受け付けた依頼を1件ずつ開く
  2. 制裁リストとのフィルタリングの結果を見る。ヒットがあれば、所管部署の手順に回す
  3. 顧客情報のシステムを開き、顧客の事業内容・取引目的・顧客リスク評価を見る
  4. 送金の目的の記載と、添付された請求書や契約書の写しを読み、事業内容と合っているかを見る
  5. 過去の送金の履歴を開き、同じ受取人への送金があるか、金額や頻度が普段と違わないかを見る
  6. 社内の確認基準の一覧を見ながら、追加で確かめる事項がないかを考える
  7. 確かめる事項があれば、店舗の担当者か顧客に連絡し、資料や説明を求める。なければ送金の手続きに進める

(a)見る深さが担当者で違う。 8名のうち、確認基準をほぼ覚えている人は3名です。残りの5名は一覧を開いて探しながら見るので、時間がかかるか、項目を落とすかのどちらかになります。 同じ依頼が、ある担当者なら顧客への確認に回り、別の担当者なら通ります。

(b)送金の目的と事業の整合を見るのに時間がかかる。 目的の欄には「代金」「支払」としか書かれていないことが多く、添付の請求書の品名と顧客の事業内容を突き合わせて初めて整合が分かります。 請求書は英文で、品名が型番だけのこともあります。

(c)履歴との比較が漏れる。 送金の履歴は別の画面で、受取人ごとに並んでいません。「この受取人へは初めて」「この顧客の送金は普段の5倍」に気づくには、過去の一覧を自分で並べ替える必要があり、締切の近い時間帯ほど省かれます。

(d)午後に依頼が集中する。 締切に向けて依頼が増える時間帯ほど、確認が浅くなります。

  1. 【人/自動】 窓口の入力またはインターネットバンキングで依頼が登録される
  2. 【自動】 制裁リストとのフィルタリングの結果を確かめる。ヒットがあれば、この構成では扱わず所管部署の手順へ回す
  3. 【自動】 顧客情報のシステムから、事業内容・取引目的・顧客リスク評価を取り出す
  4. 【自動】 送金の履歴から、同じ受取人への送金の有無、過去12か月の件数・金額の平均と最大を計算する
  5. 【自動】 国・地域の区分と金額の閾値など、数と一覧で決まる項目を規則で判定する
  6. 【自動】 Azure OpenAI が、送金の目的と事業内容・添付資料の整合など、文章を読んで判断する項目を1項目ずつ判定し、根拠を引用する
  7. 【自動】 引用が入力の原文にあるかを照合し、standard / confirm_with_customer / escalate を規則で決める
  8. 【人】 外為の担当者が confirm_with_customer と escalate の依頼を開き、判定の根拠を確かめる
  9. 【人】 顧客に確かめると決めたものは、確認事項の案を直して店舗の担当者か顧客に連絡する。escalate は所管部署へ回す
  10. 【人】 standard の依頼も一覧で流し見て、送金の手続きに進める

8番目が、この設計の分かれ目です。 担当者は顧客の情報と履歴の画面を行き来するのではなく、AIが挙げた項目と、引用された依頼や履歴の記載を見て判断します。 standard と出た依頼も、担当者が確かめたうえで送金に進めます。

7番目を規則で決めているのも、意図してのことです。 どの項目に当たったら顧客に確かめ、どれを所管部署へ回すかは、銀行のリスク評価で決まり、後から変わります。AIには項目ごとの当てはまりと根拠だけを付けさせ、行き先は規則の側に置きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
外国送金の依頼(窓口の入力/インターネットバンキング)
   ▼【トリガー】外為の事務のシステムに依頼が「受付済み」で登録される
Azure Functions(依頼の受け取りと前処理)
   ├──▶ フィルタリングの結果の確認(ヒットは所管部署の手順へ。以降は扱わない)
   ├──▶ 顧客情報のシステムから事業内容・取引目的・顧客リスク評価
   ├──▶ 送金の履歴から受取人ごとの件数・金額を計算
   └──▶ 国・地域の区分、金額の閾値など規則で決まる項目の判定
   ▼
Azure OpenAI(構造化出力)── 文章を読む項目の判定と根拠の引用、確認事項の案
   ▼
Azure Functions ── 引用の照合、判定(standard / confirm_with_customer / escalate)
   ▼
【外為の担当者が確認】
   ├──▶ 店舗の担当者・顧客への確認(確認事項の案を直して連絡)
   └──▶ マネロン対策の所管部署へ(escalate のみ)
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(依頼の受け取り、履歴の計算、規則の判定、引用の照合)Power Automate
保管Azure SQL Database(判定、根拠、担当者の確認の記録)社内のデータベース
通知外為の事務のシステムの画面(判定の表示)と社内のチャット社内のメール

外為の事務のシステムには、判定の結果を表示するだけです。 送金の実行、取消、保留の操作はこの構成から行いません。送金を止めるか進めるかは、担当者がいまと同じ画面で行います。

Azure OpenAI を選ぶ理由は2つです。 1つは、構造化出力で JSON スキーマに沿った出力を受けられることです。公式の説明では、Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使え、指定した JSON スキーマに従うとされています。確認項目ごとの判定を決まった形で受けられるので、後段の照合と振り分けを規則で書けます。

もう1つは、データの扱いです。 公式の説明では、プロンプトと出力は他のお客様に提供されず、OpenAI にも提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないとされています。顧客の氏名、取引の内容、送金先を扱うので、ここを先に確かめておきます。 ただし、Global や DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうるとされているので、デプロイの種類は銀行の外部委託の規程に合わせて選びます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

外為の事務のシステムで、依頼が「受付済み」になったことを起点にします。 窓口の入力でもインターネットバンキングでも、受付済みになった時点で依頼の内容はそろっています。入力の途中の依頼を判定しないために、状態の変化を起点にします。

起動のしかたは、外為の事務のシステムが何を出せるかで決まります。状態の変化を通知できるなら、その通知で Azure Functions を呼びます。 通知が無いシステムなら、受付済みの依頼の一覧を数分おきに読み出し、まだ判定していないものだけを処理します。どちらでも、依頼番号で一度だけ判定するように、判定済みの依頼番号を記録します。

依頼の内容が後から訂正されたときは、判定をやり直します。 金額や受取人が変わると、当てはまる項目が変わるからです。訂正の前の判定は消さず、版を上げて残します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
送金の依頼送金人、受取人の名称と所在国、受取銀行、金額と通貨、送金の目的の記載、添付資料(請求書・契約書の写し)外為の事務のシステム
フィルタリングの結果制裁リストとの照合の結果(ヒットの有無と対応状況)フィルタリングのシステム
顧客の情報事業内容、取引目的、顧客リスク評価、直近の顧客情報の更新日顧客情報のシステム
送金の履歴過去12か月の外国送金(受取人、国、金額、目的)外為の事務のシステム
社内の確認基準項目の番号、見る内容、判定の材料、該当したときに顧客に確かめる事項と求める資料、行き先マネロン対策の所管部署が管理する文書
国・地域の区分社内で決めた区分(高リスク・要注意など)と更新日同上

質を決めるのは、社内の確認基準の「判定の材料」の列です。 「送金の目的が事業内容に照らして合理的か」とだけ書かれた項目は、AIにも担当者にも判断の幅が残ります。「顧客情報の事業内容に無い品目の代金」「取引目的に無い種類の送金」のように、何と何を比べるかまで書くと、判定がそろいます。 金融庁のガイドラインも、顧客の営業内容や所在地が取引目的・取引態様に照らして合理的でないなどのリスクが高い取引について、追加的な措置を講ずることを求めています。

フィルタリングの結果は、判定の材料ではなく入口の条件です。 ヒットのある依頼は、この構成の対象から外して既存の手順に回します。制裁リストとの照合をAIにさせることはしません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから方法
依頼の内容外為の事務のシステム依頼番号で読み出す(連携の口が無ければ、受付済みの一覧の書き出し)
添付資料外為の事務のシステムの添付PDFや画像を取り出し、文字を読み取ってから渡す
顧客の情報顧客情報のシステム顧客番号で読み出す
送金の履歴外為の事務のシステム顧客番号で過去12か月分を読み出す
確認基準と国・地域の区分所管部署の管理する文書版の番号付きで読み込み、関数の中に持つ

送金の履歴は、AIに丸ごと渡しません。 過去12か月で数百件の送金がある法人もあります。Functions の中で受取人ごとの件数・金額の平均と最大、初回かどうかを計算し、その要約だけを渡します。 AIに数百行を読ませて「普段と違うか」を判断させると、計算を言葉で行うことになり、数が合わなくなります。

確認基準と国・地域の区分には版の番号を付けます。 区分は国際的な動向や当局の公表に応じて更新されます。どの版で判定したかが分からないと、後から判定の理由を説明できません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. フィルタリングの結果の確認 … ヒットがあれば、ここで処理を止めて既存の手順に回します
  2. 添付資料の文字の読み取り … 請求書や契約書の写しから文字を取り出します。読み取れないものは「添付読取不可」の印を付けます
  3. 履歴の要約 … 同じ受取人への過去の送金の件数、金額の平均と最大、初回の日付を計算します
  4. 規則で決まる項目の判定 … 受取人の所在国の区分、金額が過去の最大を大きく超えるか、初めての受取人か、を計算と一覧の照合で決めます
  5. 顧客情報の鮮度の確認 … 顧客情報の更新日が社内の定める期間より古ければ、「顧客情報の更新が必要」の印を付けます
  6. 文章を読む項目の選び出し … 確認基準のうち、送金の目的と事業内容の整合のように文章を読まないと決められない項目だけを選びます
  7. 渡す情報の絞り込み … 個人の顧客の生年月日や住所など、判定に要らない項目を外します

4番目と5番目をAIにさせないのは、数と一覧で決まるものは規則のほうが確実だからです。 国の区分は一覧と照らせば決まり、金額の比較は数の大小です。AIに任せるのは、6番目で選んだ、文章を読まないと決められない項目だけです。

2番目の「添付読取不可」は、確認に回す理由として残します。 添付の請求書が読めないまま、目的の欄の「代金」だけで整合を判定すると、事業内容と合っているかを確かめないまま standard になります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、文章を読む確認項目について、1項目ずつ当てはまりを判定し、根拠の記載を写し、顧客に確かめる事項の案を書くことです。

見るものさせること判断の材料
送金の目的と事業内容目的の記載と添付の品名・役務が、顧客の事業内容に照らして説明がつくか顧客情報の事業内容、依頼の目的、添付資料の文字
送金の目的と取引目的口座開設時などに聞いた取引目的に、この種類の送金が含まれるか顧客情報の取引目的
受取人と添付資料受取人の名称・所在国が、添付の請求書や契約書の記載と合っているか依頼の受取人、添付資料の文字
送金の目的の具体性目的の記載が、確認基準の求める具体性を満たしているか確認基準の例示
顧客への確認事項当てはまった項目について、確認基準の「顧客に確かめる事項」から案を作る確認基準

各項目の判定は3つのうちから選ばせます。not_applicable(当てはまらない)、applicable(当てはまる)、insufficient(材料が足りず決められない)です。insufficient を用意するのが大事です。 これが無いと、材料の無い項目をAIはどちらかに寄せて答えます。

させないこと理由
送金を受けるか断るかの結論銀行の判断で、担当者と所管部署の領分
制裁リストとの照合既存のフィルタリングのシステムで行う。名前の似た人を推し量らない
外為法上の許可等の要否の判断確認の義務を負うのは銀行で、担当者が確かめる
疑わしい取引に当たるかの判断届出の要否は所管部署が総合的に判断する
国の区分や金額の比較一覧と計算で決まる。規則で行う
顧客の属性からの推測国籍や名前の響きで当てはまりを決めない

最後の行は、指示と照合の両方で守ります。 根拠の引用を「依頼・添付・顧客情報の記載」に限ると決めておけば、記載に無い属性で判定した項目は、引用ができずに照合で落ちます。

1行目と3行目を外すのは、法令の求める確認の主体が銀行だからです。 外為法第17条は、銀行等が顧客の支払等について許可等を要しないこと、または要件を備えていることを確認した後でなければ、為替取引を行ってはならないとしています。AIの判定はその確認の材料の1つで、確認そのものではありません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは銀行の外為事務センターで、外国送金の依頼を受け付けたときに、
社内の確認基準に照らして追加で確かめる事項がないかを洗い出す担当者を手伝います。
渡された情報だけを見て、確認項目ごとに判定してください。

【やること】
1. 渡された確認項目それぞれについて、status を次の3つから選ぶ。
   not_applicable … 当てはまらない
   applicable …… 当てはまる
   insufficient … 渡された情報だけでは決められない
2. applicable と insufficient の項目には、根拠にした記載を quote に写す。
   quote の出典を source に書く(request / attachment / customer_profile / history_summary)。
3. applicable の項目には、確認基準の「顧客に確かめる事項」をもとに、
   この依頼に合わせた確認事項の案を customer_questions に書く。

【厳守事項】
- 送金を受けてよいか、断るべきか、疑わしいかを書かないでください。
  「問題ありません」「不正です」「疑わしい」という言葉を使わないでください。
- 制裁の対象かどうかを判断しないでください。名前が似ているかを考えないでください。
- 国籍、名前の響き、性別、年齢から当てはまりを決めないでください。
  根拠は、渡された記載に書かれていることだけにしてください。
- quote は原文の文字を1字も変えずに写してください。要約や言い換えをしないでください。
- 金額の比較や国の区分は、渡された計算の結果をそのまま使ってください。
  自分で計算し直さないでください。
- 材料が足りないときは insufficient を選んでください。
  not_applicable に寄せないでください。
- 確認事項の案は、確認基準に書かれた事項と資料から作ってください。
  確認基準に無い資料を求める案を作らないでください。

【確認項目(版:{rule_version})】{rule_items}
【依頼の内容】{request}
【添付資料の文字】{attachment_text}
【顧客の情報】{customer_profile}
【送金の履歴の要約】{history_summary}
【規則で判定した項目の結果】{rule_results}

「疑わしい」という言葉を名指しで禁じないと、出てきます。 確認基準にマネロン対策の考え方が書かれているので、AIは自然に結論まで書こうとします。結論の言葉を禁じ、項目の番号と引用だけを返させます。

「not_applicable に寄せない」を書くのは、見落としのほうが重いからです。 余計な確認は担当者が1つ外せば終わりますが、当てはまらないとされた項目は誰の目にも止まりません。

Step7

出力形式を固定する

次の形の JSON を、構造化出力で受け取ります。

{
  "request_id": "",
  "rule_version": "",
  "items": [
    {
      "item_id": "P-03",
      "status": "not_applicable | applicable | insufficient",
      "quote": "",
      "source": "request | attachment | customer_profile | history_summary",
      "customer_questions": ""
    }
  ],
  "attachment_readable": true
}

構造化出力を使う理由は、後段で規則を当てるためです。 item_id と status が決まった形で返るので、「この項目が applicable なら顧客に確かめる」「この項目なら所管部署へ」という振り分けを Functions の側で書けます。公式の説明では、すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定する必要があるとされています。引用の無い項目も、空文字で返させます。

判定は Functions が次の規則で決めます。

判定条件
escalate所管部署へ回す扱いの項目が applicable。または規則の判定で高リスクの区分の国・地域が当たった
confirm_with_customer顧客に確かめる扱いの項目が applicable、または insufficient がある。顧客情報の更新が必要、添付読取不可
standardどれも無い
共通quote が入力の原文に見つからない項目は insufficient として扱い、人へ

quote の照合は必ず行います。 原文に無い引用が返ったら、その項目の判定はAIの思い込みかもしれません。照合に落ちた項目は消さず、「引用不一致」の印を付けて担当者に見せます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
外為の事務のシステム状態の通知、または受付済みの一覧の読み出し依頼の内容・添付・履歴を読む。判定の結果を画面に表示する
フィルタリングのシステム照合の結果の参照ヒットのある依頼を対象から外す
顧客情報のシステム顧客番号での参照事業内容、取引目的、顧客リスク評価、更新日
Azure OpenAIAPI 呼び出し(構造化出力)文章を読む項目の判定、引用、確認事項の案
Azure SQL Database書き込み判定、根拠、担当者の確認の記録
社内のチャット通知escalate の依頼を所管部署へ知らせる

外為の事務のシステムの送金の状態には触れません。 判定は画面の表示と記録までで、保留や取消の操作は担当者が行います。 自動で保留をかける作りもできますが、誰の判断で止めたのかが記録に残らない形になります。

Step9

人が確認する

外為の担当者が全件を確かめます。 開き方を判定で変えます。

  1. escalate を先に見る … 当たった項目と引用を読み、所管部署へ回します。回すときは、引用と規則の判定の結果を添えます
  2. confirm_with_customer の根拠を確かめる … 引用の箇所を依頼や添付の原文で見て、当てはまりが正しいかを判断します
  3. 顧客に確かめるかを決める … 確認事項の案を直し、店舗の担当者か顧客に連絡します。連絡そのものは人が行います
  4. standard を一覧で流し見る … 受取人、国、金額、目的を並べて見て、送金の手続きに進めます
  5. 判定を覆したら理由を残す … 「過去に同じ取引を確認済み」「顧客情報が古かった」など、選択肢から選びます

4番目を省かないでください。 standard は「確かめる事項が見つからなかった」というだけで、送金してよいという判断ではありません。 外為法上の確認も、いまと同じく担当者が行います。

目標は、1,200件をならして1件3分です。 confirm_with_customer と escalate が2割前後という想定で、それを大きく超える月は、確認基準の判定の材料が曖昧になっているか、顧客情報の更新が遅れています。

Step10

例外に対処する

起きること対応
フィルタリングでヒットがあるこの構成では扱わない。既存の手順へ回す
添付資料が読めない・添付が無いconfirm_with_customer。添付を求める
顧客情報の事業内容・取引目的が空整合の項目は insufficient。顧客情報の更新を店舗に依頼
送金の履歴が無い(初めての外国送金)履歴の項目は「初回」として規則で判定し、人へ
quote が原文に無い「引用不一致」の印を付けて人へ
確認基準の版が更新された更新の日時より後の依頼から新しい版で判定。前の版の判定は書き換えない
Azure OpenAI が応答しない・出力を拒否する依頼を未判定のまま一覧に残し、目視の手順に戻す
送金の締切まで30分を切っている判定にかかわらず、担当者の一覧の先頭に出す
依頼の内容が訂正された版を上げて判定し直す。前の判定は残す

7行目は設計の最初に入れておきます。 判定が出ないことを理由に送金が止まると、顧客の支払が遅れます。判定が出なければ、いまと同じ目視の確認で進められるようにしておきます。

Step11

記録を残す

  • 判定にかけた依頼の版(依頼番号、訂正の回数、受付の日時)
  • 規則で判定した項目の結果と、使った国・地域の区分の版
  • Azure OpenAI に渡した入力と、返った JSON の全文
  • 使った確認基準の版の番号
  • 判定、担当者の確認の結果、覆した理由、顧客への確認の内容と回答
  • 所管部署へ回した依頼と、所管部署の判断の結果

確認基準の版を残すのは、基準が直るからです。 検査や監査で「この依頼でなぜ顧客に確かめなかったのか」と聞かれたときに、当時の基準と当時の判定の根拠を並べて示せるようにしておきます。ガイドラインも記録の保存を求める事項に挙げています。

覆した理由の記録は、確認基準を直す材料になります。 同じ項目で「過去に確認済み」が続くなら、その顧客や取引の型について、確認の頻度を変えるかを所管部署が検討する時期です。

04実装レベルの3段階

最小構成:依頼と顧客の情報を手でまとめ、確認基準とあわせて生成AIの画面に貼る / 文章を読む項目の判定
半自動化:上記+Functions が依頼・顧客情報・履歴を読み出し、履歴の要約と規則の判定を行い、Azure OpenAI の判定を一覧にする / 情報の取り出し、履歴の比較、項目ごとの判定の一覧化
本格構成:上記+受付済みを起点に自動で動き、引用の照合と振り分け、外為の事務のシステムの画面への表示、所管部署への通知まで回す / 受付時の確認の全体と、確認事項の洗い出し

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつまとめて貼るので、月1,200件には使えません。確認基準の出来を確かめる段階です。 半自動化で、履歴の画面を行き来する作業が無くなります。 受取人ごとの件数と金額の比較は機械が出すので、②の2分がほぼ消えます。本格構成で、判定の根拠を確かめる作業だけが残ります。 差が大きいのは、判定を外為の事務のシステムの画面に出すかどうかで、担当者が別の一覧を開く手間が変わるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、insufficient が多い項目と、顧客情報が古い顧客が先に分かります。そこを直してから本格構成に進むほうが、顧客への空振りの確認が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
1,200 件
1件あたり現在時間
8 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  1,200件 × 8分 ÷ 60 = 160 時間/月
導入後 1,200件 × 3分 ÷ 60 = 60 時間/月
月間削減時間
100h
削減率
63%
年間削減時間
1,200h
年間金額換算(時間単価3,500円)
420万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 外国送金を扱い、窓口とインターネットバンキングから月に数百件から千件を超える依頼を受けている地方銀行・信用金庫などの金融機関。外為の事務を集中部門で処理しており、依頼ごとに送金の目的と顧客の事業が合っているか、過去の送金と比べて不自然でないかを担当者が目で確かめている場合。社内の確認基準(確認項目の一覧、国・地域の区分、追加で求める資料)が文書になっているが、担当者によって見る深さが違う場合。
向いていない
  1. 外国送金の件数が月に数十件で、担当者が全件を丁寧に見られる場合。社内の確認基準が文書になっておらず、何を確かめるかが担当者の経験だけで決まっている場合(先に基準を作る必要があります)。なお、制裁リストとの照合、外為法上の許可等の要否の確認、送金を受けるか断るか、疑わしい取引の届出をするかの判断は、この構成では代替できません。これらは既存のフィルタリングのシステムと、担当者・マネロン対策の所管部署が行います。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の外国送金の依頼から30件を選ぶ(うち数件は、担当者が顧客に確かめた依頼を入れる)
  2. 依頼ごとに、顧客の事業内容・取引目的、送金の目的、添付の品名、過去の同じ受取人への送金の件数を1枚にまとめる。氏名・口座番号・住所は伏せる
  3. 社内の確認基準のうち、文章を読む項目を5つほど選んで1つのテキストにまとめる
  4. 社内で使える生成AIの画面に、確認基準と1件分のまとめを貼る
  5. 「各項目について、当てはまる・当てはまらない・材料が足りないのどれかを選び、根拠の記載をそのまま写してください。送金してよいかは書かないでください」と指示する
  6. 出てきた判定を、当時の担当者の確認の記録と突き合わせる

30件は必ずやってください。 判定の当たり外れより先に、確認基準の「判定の材料」が足りているかが分かります。

出てきた内容判断
当時の担当者と同じ項目が挙がったFunctions と構造化出力に進む
「疑わしい」「問題ない」と書いてきた指示で直る。禁じる言葉を足す
材料が足りないの判定ばかりになる顧客情報の事業内容が粗い。 先に顧客情報の更新の運用を見る

3行目が出ることは珍しくありません。 事業内容が「卸売業」だけでは、AIも担当者も整合を決められません。

この段階では、実際の顧客の氏名や口座番号を貼らないでください。 伏せたまとめで試します。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「疑わしい」「問題ない」と結論を書いてくる結論の言葉を名指しで禁じ、項目の番号と引用だけを返させる
原文に無い記載を引用してくるquote を原文と照合する。 落ちたものは「引用不一致」で人へ
材料の無い項目を当てはまらないに寄せるinsufficient を用意し、寄せないと指示する
履歴の比較をAIが言葉で行い数が合わない件数と金額の計算は Functions で行い、要約だけを渡す
名前や国籍で当てはまりを決める根拠を記載に限り、引用できない判定は照合で落とす
確認基準の項目が曖昧で判定が割れる「何と何を比べるか」を判定の材料の列に書く
顧客情報が古く、整合が判断できない更新日を見て「顧客情報の更新が必要」を規則で付ける
国・地域の区分が古いまま判定される区分に版を付け、更新の日時を境に判定を分ける
判定が出ないと送金が止まる未判定は目視の手順に戻せるようにする
フィルタリングのヒットまでAIに渡すヒットのある依頼は入口で外す
standard を「送金してよい」と読む画面の表示で「確かめる事項が見つからなかった」と書く

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれもAIが「親切に」答えようとして起きます。結論を書かせない、原文から写させる、材料が無ければ決めさせない。 この3つを指示と照合の両方で守ります。

下の2行も早く効いてきます。 入口で分けておかないと、AIの判定が確認の代わりとして扱われ始めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客の氏名・名称、事業内容、取引目的、顧客リスク評価、送金の相手と金額、添付の請求書や契約書、そして銀行の確認基準と国・地域の区分です。

  1. AIに渡す項目を絞る … 判定に要るのは事業内容、取引目的、送金の目的、受取人、国、履歴の要約です。個人の顧客の生年月日、住所、口座番号は渡しません
  2. デプロイの種類を確かめる … 公式の説明では、Global や DataZone のデプロイではプロンプトと応答が指定の地域の外で処理されうるとされています。銀行の外部委託とデータの所在の規程に合わせて、デプロイの種類を選びます
  3. 不正使用の監視の扱いを確かめる … 公式の説明では、不正使用の監視のためにプロンプトと出力が保存され、人が確認する場合があるとされ、変更の申請の手続きがあります。顧客の取引の情報を扱うので、申請の要否を先に検討します
  4. この構成は銀行の判断を代替しません … 送金を受けるか、外為法上の許可等が要るか、疑わしい取引の届出をするかは、担当者と所管部署が決めます。AIが出すのは、確認基準のどの項目に当たりそうかと、その根拠までです
  5. 顧客への連絡を自動で送らない … 確認事項の案は下書きです。顧客との関係と、取引の秘密に直接関わります
  6. 確認基準と国・地域の区分を社外に出さない … 銀行がどこを見ているかが分かる文書です。閲覧を外為事務センターと所管部署に絞ります
  7. 属性での偏りを監視する … 国籍や名前で判定が偏っていないかを、覆した理由の記録と項目ごとの当てはまりの割合で定期的に見ます

誤りが起きた場合のリスクは、確かめるべき依頼を standard として通すことと、確かめる必要の無い顧客に何度も資料を求めることの2つです。 前者は insufficient と担当者の全件確認で、後者は確認基準の判定の材料と覆した理由の記録で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:確認基準に「判定の材料」の列を足す

確認基準の約30項目を、規則で決まる項目(国の区分、金額の比較、初回かどうか)と、文章を読む項目に分けます。文章を読む項目には、「何と何を比べるか」を書き足します。所管部署と一緒に行います。

2週目:30件で試す

先月の依頼から30件を選び、伏せたまとめを作って、社内で使える生成AIの画面で試します。当時の担当者の記録と突き合わせ、「疑わしい」と書いてこないか、材料の無い項目を当てはまらないに寄せていないかを最優先で見ます。

3週目:読み出しの口と審査の準備

外為の事務のシステム、顧客情報のシステム、フィルタリングのシステムから何をどの形で読み出せるかを、システムの担当部署と確かめます。あわせて、クラウドで顧客の情報を扱う審査の書類を準備します。

4週目:履歴の要約と規則の判定をつなぐ

Functions で依頼と履歴を読み出し、受取人ごとの件数・金額と、規則で決まる項目の判定までを作ります。この時点では Azure OpenAI を呼ばず、規則の判定の一覧だけを担当者に見てもらいます。

2か月目: Azure OpenAI の構造化出力と引用の照合を足し、振り分けを出します。担当者が覆した判定を毎週数えます。3か月目以降: 外為の事務のシステムの画面への表示と所管部署への通知を足し、1件8分が何分になったかを実測します。覆した理由の記録から確認基準を直す流れが回り始めた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-13/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
ガイドラインが令和8年3月31日付であること。海外送金等の業務を行う金融機関等に、国際的な動向を踏まえた対応が求められること。海外送金等で外為法などの法規制に則り制裁リストとの照合等の必要な措置を講ずること、海外送金等をリスクベース・アプローチの枠組みの下で位置付けること。顧客の営業内容・所在地等が取引目的・取引態様に照らして合理的でないなどのリスクが高い取引について追加的な措置を講ずること。取引フィルタリングで制裁リストを最新に保つこと。記録の保存を求めていること金融庁: マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(令和8年3月31日)2026-10-13
銀行等が、顧客の支払等について許可等を要する支払等に該当しないこと、または許可等の要件を備えていることを確認した後でなければ、為替取引を行ってはならないこと(第17条)e-Gov 法令API: 外国為替及び外国貿易法2026-10-13
Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使えること。すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトに additionalProperties: false を設定する必要があること。オブジェクトのプロパティは最大100個、入れ子は最大5レベルであることMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-13
プロンプトと出力が他のお客様や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないこと。Global・DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうること。不正使用の監視でプロンプトと出力が保存・確認される場合があり、変更の申請ができることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-13

送金を受けるか、外為法上の確認、疑わしい取引の届出の要否は、担当者とマネロン対策の所管部署が判断してください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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