エネルギー使用量を月次で集計して、増減の理由と見通しを出す
拠点ごとのエネルギー使用量を入力に、原単位と前年同月比を計算し、増減の要因を切り分ける材料をそろえます。担当者の作業は、数字を集めて表にすることから、出てきた増減の理由を拠点に確かめることに変わります。
- 利用ツール
- ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Make/Power Automate/Python
- 対象業界
- 宿泊/小売/物流/製造
- 対象部門
- 生産
- 対象業務
- 書類作成/集計・分析
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/属人化している/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 予測
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 月初に、各拠点からエネルギー使用量の報告を受ける
- 電力会社のWeb明細をダウンロードする
- ガス・重油・LPGの請求書を経理から受け取る
- Excelに数値を転記する
- 原単位の分母(生産量、出荷ケース数)を生産管理・物流から集める
- 原単位を計算し、前年同月と比べる
- 大きく増えている系統について、拠点に理由を聞く
- 回答をまとめて、月次の資料にする
- 年度末に、定期報告書と中長期計画書を作る
- 自動毎月、各拠点のエネルギー使用量を取り込む
- 自動原単位の分母(生産量、出荷ケース数)を生産管理・物流から取り込む
- 自動系統ごとに、使用量・原単位・前年同月比・年度累計を計算する(AIを使わない)
- 自動気温(気象データ)と稼働日数で補正した比較値を計算する
- 自動原単位が前年から悪化している系統を抽出する
- 自動拠点の記録(設備の更新、故障、生産品目の変更)と照らし、要因の候補を整理する
- 自動年度末の原単位の見通しと、年平均1%低減に対する現在地を示す
- 自動拠点への確認事項を作る
- 人担当者が要因の整理を確認し、拠点に確認する
- 人回答をもとに、月次の資料を仕上げる
- 自動定期報告書に必要な項目を、月次データから積み上げる
各工程の詳しい説明を読む
- 月初に、各拠点からエネルギー使用量の報告を受ける
- 電力会社のWeb明細をダウンロードする
- ガス・重油・LPGの請求書を経理から受け取る
- Excelに数値を転記する
- 原単位の分母(生産量、出荷ケース数)を生産管理・物流から集める
- 原単位を計算し、前年同月と比べる
- 大きく増えている系統について、拠点に理由を聞く
- 回答をまとめて、月次の資料にする
- 年度末に、定期報告書と中長期計画書を作る
問題は5つあります。
(a)データの集め方がばらばら。 Web明細、紙の請求書、拠点からのメール、計測システム。6拠点×4種別で、取得元が入り混じっています。
(b)原単位の分母が拠点で違う。 工場は生産量、物流センターは出荷ケース数、本社は延床面積。同じ表に並べても比較できません。
(c)増減の理由が「生産量が増えたから」で終わる。 原単位で見れば生産量の影響は除かれているはずですが、その説明で止まってしまい、本当の要因に届いていません。
(d)気温の影響と設備の劣化が区別できない。 夏に電力が増えるのは当たり前ですが、「例年より増えているか」は気温を補正しないと分かりません。
(e)年度末に慌てる。 定期報告書の作成が7月に集中します。月次の記録が揃っていないため、過去12か月分をさかのぼって確認することになります。
- 【自動】 毎月、各拠点のエネルギー使用量を取り込む
- 【自動】 原単位の分母(生産量、出荷ケース数)を生産管理・物流から取り込む
- 【自動】 系統ごとに、使用量・原単位・前年同月比・年度累計を計算する(AIを使わない)
- 【自動】 気温(気象データ)と稼働日数で補正した比較値を計算する
- 【自動】 原単位が前年から悪化している系統を抽出する
- 【自動】 拠点の記録(設備の更新、故障、生産品目の変更)と照らし、要因の候補を整理する
- 【自動】 年度末の原単位の見通しと、年平均1%低減に対する現在地を示す
- 【自動】 拠点への確認事項を作る
- 【人】 担当者が要因の整理を確認し、拠点に確認する
- 【人】 回答をもとに、月次の資料を仕上げる
- 【自動】 定期報告書に必要な項目を、月次データから積み上げる
自動化されるのは「集める」「計算する」「補正する」「整理する」「積み上げる」の5つです。残るのは「本当の要因を拠点と確かめること」です。
02今回想定するシステム構成
各拠点(使用量の報告)/電力会社Web明細/請求書 │ ▼ Google スプレッドシート(取り込み用) │ ▼【トリガー】毎月5日 朝7時(時間主導型) Google Apps Script │ ├──▶ 生産管理・物流から原単位の分母を取得 │ ├──▶ 計算(AIを使わない) │ ├─ 原油換算・原単位 │ ├─ 前年同月比・年度累計 │ ├─ 気温・稼働日数による補正 │ └─ 年度末の見通しと年平均1%低減に対する現在地 │ ├──▶ 気象データの取得(拠点ごとの月平均気温・空調度日) │ ├──▶ Gemini API ── 要因の切り分けの材料の整理 │ + 拠点への確認事項 │ + 報告資料向けの説明文 │ ▼ 月次のエネルギー管理レポート ──【担当者が確認・拠点に照会】 │ ▼ 定期報告書に必要な項目の積み上げ(年度末)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 実行環境 | Google Apps Script | Power Automate、Python、Make |
| 生成AI | Gemini API | Claude API、OpenAI API |
| データの置き場 | Google スプレッドシート | Excel、SharePoint リスト |
| 計測システム | 各社のエネルギー管理システム | - |
エネルギー管理システム(BEMS/FEMS)を導入する選択肢と比べてください。 計測から集計、報告書の出力まで提供される製品があります。自前で組む価値があるのは、計測システムが一部の拠点にしか入っておらず、請求書と手集計が混在している場合です。
Google Apps Script を選んだのは、スプレッドシートでの集計をそのまま自動化できるためです。 現在の運用がExcelなら、Power Automate でも同じ考え方で成立します。新しいシステムを入れずに、いまの表を動かすのがこの構成の方針です。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
毎月5日の朝に、定時で一括処理します。 前月分の請求書と検針票がそろうタイミングです。
Apps Script のインストール可能なトリガーには「時間主導型」があり、最短1分ごと、最長で月1回まで設定できます。月次の処理はこれで動かします。
年度末(4月)には、年度の集計を確定させる処理を別に走らせます。 定期報告書の提出期限は毎年7月末なので、4月に確定して5〜6月に確認する時間を取れる設計にしてください。
なお、インストール可能なトリガーは作成した人のアカウントで動きます。 担当者の異動で止まらないよう、部門の共用アカウントで作成してください。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 電力使用量 | 拠点ごとの月間使用量(kWh)、契約種別、デマンド | 電力会社のWeb明細 |
| ガス使用量 | 都市ガス(m3)、LPG(kg) | 請求書・検針票 |
| 燃料使用量 | A重油(L)、灯油 | 納品書・在庫記録 |
| 原単位の分母 | 工場=生産量(t)/物流=出荷ケース数/本社=延床面積 | 生産管理・物流・総務 |
| 原油換算係数 | エネルギー種別ごとの換算係数 | 省エネ法の告示 |
| 稼働日数 | 拠点ごとの稼働日数、稼働時間 | 生産管理 |
| 気象データ | 拠点の最寄りの月平均気温、空調度日 | 気象庁の公開データ |
| 拠点の記録 | 設備の更新、故障、生産品目の変更、ラインの停止 | 拠点からの月次報告 |
| 過去の実績 | 過去3年分の使用量・原単位 | Excel |
| 省エネ施策の実施状況 | 実施した対策と、その効果の見込み | 生産技術 |
「拠点の記録」がこの構成の効き目を決めます。
原単位が悪化したときに、その理由を数字だけから特定することはできません。「7月にコンプレッサーが1台故障して、予備機で運転した」という記録があって初めて、要因が分かります。
この記録を月次で集める運用を、先に作ってください。 自由記述で構いません。むしろ自由記述のほうが、この構成では役に立ちます。
「原油換算係数」は省エネ法の告示で定められています。 自分で決めないでください。エネルギー種別ごとの係数を、告示から転記します。
データの取得方法を決める
電力: 電力会社のWeb明細からCSVをダウンロードします。自動取得できるかは契約と会社によります。 手動ダウンロードでも、月1回なら運用に乗ります。
ガス・燃料: 請求書または納品書からの転記です。OCRで読み取る構成も取れますが、月に十数枚なので、手入力のほうが早いことが多くあります。 ここに労力を割かないでください。
原単位の分母: 生産管理システム・物流システムから取得します。分母の定義を拠点ごとに固定してください。 「生産量」が製品重量なのか、投入原料重量なのかで、原単位が変わります。
気象データ: 気象庁が過去の気象データを公開しています。拠点の最寄りの観測所の月平均気温を使います。 空調負荷の比較には、冷房度日・暖房度日という指標もあります。
拠点の記録: フォームで集めます。「今月、エネルギー使用に影響しそうな出来事があれば書いてください」という1問で足ります。
AIへ渡す前に整形する
- 単位の統一 … kWh、m3、kg、Lを、それぞれの換算係数で原油換算(kl)にそろえます。係数は省エネ法の告示に従います
- 拠点・種別の名寄せ … 請求書上の事業所名と社内の拠点コードを対応づけます
- 分母の妥当性の確認 … 生産量がゼロや異常値の月を検出します。分母が誤っていると原単位が無意味になります
- 気温の補正 … 前年同月との気温差から、空調に起因する分の目安を計算します
- 稼働日数の補正 … 稼働日数が前年と違う場合の影響を分けます
- 欠測の検出 … 請求書が届いていない系統を検出します。前月と同じ値で埋めないでください
6番目を必ず実装してください。 欠測を放置すると年度の合計が狂い、定期報告書の数値が誤ります。欠測は「欠測」として明示します。
AIに処理させる
計算はすべてプログラムで行います。
| 計算項目 | 内容 |
|---|---|
| 原油換算 | エネルギー種別ごとの係数で換算 |
| エネルギー消費原単位 | 原油換算エネルギー使用量 ÷ 分母(生産量など) |
| 前年同月比 | 使用量・原単位のそれぞれ |
| 年度累計 | 年度開始からの積み上げ |
| 年平均1%低減に対する現在地 | 過去5年の原単位の推移から、年平均の低減率を算出 |
| 年度末の見通し | 直近の傾向と季節性から、年度末の原単位の幅を示す |
| 気温・稼働日数の補正値 | 前年との差の内訳 |
これらはすべて決まった式です。LLMを使う理由がありません。
LLMにさせること:
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 要因の切り分けの材料の整理 | 気温・稼働日数・生産品目・設備の記録から、増減に関係しそうな事実を並べる |
| 拠点への確認事項の作成 | 「7月に原単位が12%悪化しています。コンプレッサーの故障の影響でしょうか」といった具体的な問い |
| 拠点の記録の読み取り | 自由記述から、エネルギー使用に関係する出来事を拾う |
| 報告資料向けの説明文 | 計算結果を、資料に載せられる文章にする |
| 省エネ施策の効果の照合 | 実施した対策と、その後の原単位の推移を並べる |
要因を断定させないでください。 「コンプレッサーの故障が原因です」ではなく、「7月に原単位が12%悪化しており、同月にコンプレッサーの故障の記録があります」という並べ方です。因果関係の判断は、拠点に確認したうえで人が行います。
年度末の見通しについても、幅で示させてください。 「年度末の原単位は前年比1.2%低減の見込み」と断定すると、その数字が独り歩きします。「直近の傾向が続けば0.8〜1.5%低減の範囲」といった示し方にします。
指示内容を固定する
あなたは、エネルギー管理の担当者を支援する担当者です。
計算済みの数値と拠点の記録から、増減の要因を切り分ける材料を整理してください。
【厳守事項】
- 数値を計算し直さないでください。
原単位、前年同月比、年度累計、補正値はすべて計算済みです。
その値をそのまま引用してください。
- 増減の原因を断定しないでください。
「〜が原因です」「〜によるものです」と書かないでください。
「同月に〜の記録があります」という事実の並列にとどめてください。
- 拠点の記録にない出来事を推測しないでください。
「おそらく空調の設定が変わったと思われます」と書かないでください。
要因が見当たらない場合は、cause_candidates を空にし、
「記録から該当する出来事が見つかりません」と書いてください。
- 年度末の見通しは、幅で示してください。
単一の数値で断定しないでください。
前提(直近◯か月の傾向が続いた場合)を必ず明記してください。
- 省エネ施策の効果について、「効果が出ています」と評価しないでください。
実施日と、その前後の原単位を並べるだけにしてください。
- 拠点への確認事項は、拠点の担当者がその場で答えられる形で書いてください。
「原因を調査してください」ではなく
「7月にコンプレッサーの故障の記録があります。予備機での運転は何日間でしたか」
のように、具体的に聞いてください。
- 欠測の系統については、値を推定しないでください。
「欠測」として扱い、要因の分析を行わないでください。
- 拠点や担当者の対応の良し悪しについて記述しないでください。
【計算済みの数値】
{calculated_metrics}
【気温・稼働日数の補正の内訳】
{adjustment_breakdown}
【この拠点の今月の記録(自由記述)】
{site_notes}
【この拠点の過去12か月の原単位の推移】
{trend_12m}
【実施済みの省エネ施策】
{energy_saving_measures}
「増減の原因を断定しないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 これを書かないと、「生産品目の変更による負荷増が原因です」と書かれます。その説明が定期報告書に載ると、実態と違っていたときに訂正することになります。
「欠測の系統について値を推定しない」も必ず入れてください。 定期報告書に載せる数値は実測値です。推定値を混ぜてはいけません。
出力形式を固定する
計算部分(プログラム)の出力:
{
"period": "",
"site": "",
"energy_type": "",
"consumption": { "value": 0, "unit": "", "is_estimated": false, "is_missing": false },
"crude_oil_equivalent_kl": 0,
"denominator": { "value": 0, "unit": "", "source": "" },
"intensity": 0,
"yoy": {
"consumption_pct": 0,
"intensity_pct": 0,
"denominator_pct": 0
},
"adjustment": {
"temperature_effect_pct": 0,
"operating_days_effect_pct": 0,
"residual_pct": 0
},
"fiscal_year_cumulative": {
"crude_oil_equivalent_kl": 0,
"intensity": 0
},
"five_year_average_reduction_pct": 0,
"outlook": {
"assumption": "",
"intensity_range_low": 0,
"intensity_range_high": 0
}
}
LLM部分の出力:
{
"site": "",
"energy_type": "",
"period": "",
"observation": "",
"cause_candidates": [
{
"fact": "",
"source": "site_notes | measure_record | weather | operating_days",
"quoted_text": "",
"timing_match": true
}
],
"questions_to_site": [],
"measure_timeline": [
{ "measure": "", "implemented_at": "", "intensity_before": 0, "intensity_after": 0 }
],
"report_text_draft": "",
"needs_review": []
}
adjustment.residual_pct(気温と稼働日数で説明できない残りの変動)が、この構成でもっとも重要な数値です。 「今月は前年より暑かったから電力が増えた」で終わらず、気温で説明できない分がどれだけあるかを示します。 そこに設備の劣化や運用の変化が表れます。
cause_candidates は「候補」です。 timing_match(時期が一致しているか)を持たせることで、単に同じ月に起きた出来事なのか、増減と時期が合っているのかを区別できます。
is_missing(欠測)を必ず持たせてください。 集計から除外する判断を、後から確認できます。
システムへ連携する
| つなぐ先 | 内容 |
|---|---|
| Google スプレッドシート | 使用量の取り込みと、計算結果の出力 |
| 生産管理システム(読み取り) | 生産量・稼働日数を取得する |
| 物流システム(読み取り) | 出荷ケース数を取得する |
| 気象庁の公開データ | 拠点の最寄りの気温を取得する |
| Google フォーム | 拠点からの月次の記録を集める |
| Google チャット/メール | 拠点への確認事項を送る |
定期報告書の作成そのものは自動化しません。 所定の様式への記入と提出は、内容を確認したうえで人が行います。 この構成が担うのは、報告書に必要な数値を月次で積み上げておくことです。
電力会社のWeb明細の自動取得は、契約と会社によります。 自動化できない場合は、月1回の手動ダウンロードで構いません。そこを無理に自動化しないでください。
人が確認する
すべての系統の結果を担当者が確認します。
見る優先順位は次のとおりです。
| 優先 | 対象 | 対応 |
|---|---|---|
| 1 | is_missing: true(欠測) | 請求書を取り寄せる。年度の合計に影響する |
| 2 | adjustment.residual_pct が大きい(±10%超) | 気温で説明できない変動。拠点に確認する |
| 3 | five_year_average_reduction_pct が1%を下回っている | 省エネ法の努力目標に対する現在地。対策の検討が要る |
| 4 | cause_candidates が空で原単位が悪化している | 記録に手がかりがない。拠点に聞く |
| 5 | 分母(生産量)が異常値 | 原単位が無意味になる。生産管理に確認する |
| 6 | その他 | 一覧で流し見る |
3番目を毎月見ることが、この構成の主な目的です。 年平均1%の低減は、年1回の報告時に振り返っても間に合いません。毎月、現在地を見ておく必要があります。
拠点への確認の回答は、必ず記録に残してください。 翌年の同じ月に同じ現象が起きたときの材料になります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 請求書が届かず欠測 | 「欠測」として扱う。前月の値で埋めない |
| 分母(生産量)がゼロ | 原単位を計算しない。ゼロ除算を避けるだけでなく、意味がない |
| 分母が異常値 | 検出して人へ回す。生産管理に確認する |
| 拠点の記録が空欄 | cause_candidates を空にする。「特に問題なし」と解釈しない |
| 気象データが取得できない | 気温の補正を行わず、その旨を明示する |
| 新しい拠点が増えた | 前年比較ができない。「比較対象なし」として扱う |
| 拠点を閉鎖した | 年度途中の閉鎖は、年度合計の扱いを決めておく |
| エネルギー種別を切り替えた(重油→都市ガス) | 原単位は原油換算で比較できる。種別ごとの前年比は意味を失う |
| 原単位の分母の定義を変えた | 過去分も同じ定義で計算し直す。定義変更を記録する |
| 設備の更新で一時的に使用量が増えた | 記録から拾う。年度の評価では説明が必要になる |
| 年平均1%低減を達成できていない | 対策の検討が必要。この構成は検出までで、対策は人が考える |
記録を残す
- 月次の使用量(取得元と取得日つき)
- 原単位の計算結果と、計算に使った分母
- 気温・稼働日数の補正の内訳
- 拠点の記録(自由記述の原文)
- 拠点への確認と、その回答
- 省エネ施策の実施記録と、その前後の原単位
- 欠測の記録と、後から補正した経緯
省エネ法では、エネルギーの使用状況を記録し、保存することが求められます。 保存期間と記録の内容は、自社の判断基準への対応状況を含めて確認してください。
「拠点への確認と回答」の蓄積が資産になります。 「この工場は毎年8月に原単位が悪化するが、それは冷却水温度が上がるため」といった知識が、記録として残ります。担当者が交代しても引き継げます。
04実装レベルの3段階
半自動化で効果の大半が出ます。 90分が40分程度になります。データの収集と計算が消えるためです。本格構成にすると28分程度ですが、本格構成の価値は時間より「年度末に慌てなくなること」にあります。
05工数削減シミュレーション
導入後 28件 × 28分 ÷ 60 = 13.1 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 省エネ法の特定事業者に指定されている、または指定が近い企業。拠点が3か所以上あり、エネルギー種別ごとに使用量を把握していること。生産量や延床面積など、原単位の分母となる数値が取れること。
- 拠点が1か所で、使用量が電力のみの場合。すでにエネルギー管理システム(BEMS/FEMS)を導入していて、月次の集計と分析が完結している場合。省エネ法の報告義務がなく、社内でも管理していない場合。
07最小構成で試す方法
- 過去3年分の使用量と分母を、1拠点分だけExcelに集める
- 原単位を月ごとに計算する
- 年平均の低減率を出す
- 気象庁の公開データから、その拠点の月平均気温を取る
- 原単位と気温を並べてグラフにする
この5ステップで、AIを使わずに現在地が分かります。
見るのは次の2点です。
| 見る点 | 判断 |
|---|---|
| 年平均の低減率が1%を超えているか | 超えていなければ、対策の検討が要る |
| 原単位の変動が気温でどれだけ説明できるか | 説明できない変動が大きければ、要因の分析に価値がある |
多くの企業で、3の数字を出したことがありません。 定期報告書には書いているはずですが、「今、どうなっているか」を月次で見ていないためです。
次にAIの部分を試します。
- 原単位が悪化した月を3つ選ぶ
- そのときの拠点の記録(あれば)と数値を生成AIに渡し、要因の材料を整理させる
- 担当者が当時把握していた理由と比べる
見るのは次の3点です。
| 見る点 | 判断 |
|---|---|
| 原因を断定していないか | 断定していたら、プロンプトを強める。ここが最重要 |
| 拠点への確認事項が具体的か | 「調査してください」では使えない |
| 記録にないことを推測していないか | 推測していたら同上 |
あわせて、拠点の記録を集める運用を始めてください。 「今月、エネルギー使用に影響しそうな出来事」を1問聞くフォームです。この記録が3か月分たまるまで、要因の分析は効きません。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| AIが増減の原因を断定する | プロンプトで禁止する。「原因」「〜による」といった語を機械的に検査する。最重要 |
| 欠測を前月の値で埋める | 「欠測」として扱う。定期報告書の数値が誤る |
| 原単位の分母の定義が拠点で揺れる | 定義を文書にして固定する。変更したら過去分も計算し直す |
| 原油換算係数を自分で決める | 省エネ法の告示から転記する |
| 気温の補正をせずに前年比を見る | 補正値を計算する。「暑かったから」で説明が止まる |
| 拠点の記録が集まらない | フォームを1問にする。月次の報告に組み込む |
| 空欄を「問題なし」と解釈する | cause_candidates を空にする。区別する |
| 年度末の見通しを単一の数値で示す | 幅で示す。前提を明記する |
| 年平均1%低減の現在地を年1回しか見ない | 月次で見る。手を打てる時期に気づくため |
| 電力会社のWeb明細の自動取得にこだわる | 月1回なら手動で十分。ここに時間をかけない |
| トリガーを作った担当者が異動して止まる | 部門の共用アカウントで作成する |
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 拠点ごとのエネルギー使用量、生産量、稼働日数、設備の状況。生産量と稼働状況は、自社の事業規模と操業状態を示す情報です。
- 外部AIへの入力可否 … 生産量と稼働日数は、自社の事業の状況を推測できる情報です。自社の情報管理規程を確認してください。 原単位の分母を実数ではなく指数(前年=100)にして渡す構成も取れます
- 拠点の記録の扱い … 設備の故障や品質トラブルの記録が含まれることがあります。エネルギー管理の目的に必要な範囲に絞ってください
- 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
- 報告の正確性 … 省エネ法の定期報告書は法令に基づく報告です。推定値や補正値を実測値として報告しないでください。 欠測は欠測として扱い、後から実測値で補います
- AIの出力を報告書の根拠にしない … 定期報告書に記載する数値の根拠は、請求書・検針票・計測記録です。AIが整理した説明文は、社内の理解を助けるためのものです
- 拠点の評価に使わない … 原単位の悪化を、拠点や担当者の評価に直接結び付けないでください。記録が正確に上がらなくなります
- アクセス権限 … 拠点別の生産量と稼働状況の閲覧を、必要な範囲に限定します
- 自動実行してよい範囲 … 集計・計算・要因の材料の整理までです。要因の確定、対策の決定、定期報告書の作成と提出は、必ず人が行います
誤りが起きた場合のリスクは、定期報告書の数値の誤りです。法令に基づく報告であり、訂正には手続きが必要になります。 欠測と推定値の扱いを明確にし、計算の根拠を残してください。
10まず何から始めるか
1週目:年平均の低減率を出す
過去3〜5年の原単位を計算し、年平均の低減率を出してください。 1拠点分でも構いません。半日で終わります。
この数字が、1%を超えているかどうかが出発点です。 超えていなければ、この構成は「管理の可視化」ではなく「対策のための現状把握」として必要になります。
2週目:原単位の分母の定義を固める
拠点ごとに、分母を何にするかを決めて文書にします。「生産量」が何を指すか(製品重量/投入原料/出荷量)を明確にしてください。 ここが曖昧だと、すべての数字が意味を失います。
3週目:拠点の記録を集め始める
「今月、エネルギー使用に影響しそうな出来事があれば書いてください」という1問のフォームを作り、6拠点に配ります。3か月分たまるまで、要因の分析は効きません。早く始めてください。
4週目:気温との関係を見る
気象庁の公開データから拠点の月平均気温を取り、過去3年の原単位と並べます。気温で説明できる変動と、できない変動を分けてください。
2か月目:計算部分を自動化する
使用量と分母の取り込みから、原単位・前年比・補正値・見通しの計算までを自動化します。この段階ではAIを使いません。 1か月動かし、担当者が「この一覧で判断できるか」を確認します。
3か月目以降: 拠点の記録との突合と、確認事項の作成を追加します。90分が何分になるかを実測し、あわせて「年平均1%低減に対する現在地」を毎月見る運用を定着させてください。 それがこの構成の目的です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 省エネ法において、エネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上の事業者が特定事業者に指定されること。指定後は、エネルギーの使用状況等についての定期報告書と中長期計画書を、毎年7月末日までに提出する必要があること。定期報告書にはエネルギー使用量、エネルギー消費原単位とその推移、設備の状況、判断基準の遵守状況を記載すること | 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト:特定事業者向け情報 | 2026-09-17 |
| 定期報告書・中長期計画書の報告方法に関する説明会資料(工場等向け) | 一般財団法人省エネルギーセンター:定期報告書及び中長期計画書の報告方法に関する説明会 | 2026-09-17 |
| Apps Script のインストール可能なトリガーに「時間主導型」があり、最短1分ごと・最長月1回で設定できること。トリガーは作成した人のアカウントで動くこと | Google for Developers: Installable triggers | 2026-09-17 |
Gemini API の generateContent でテキスト生成を呼び出せること | Google AI for Developers: Text generation | 2026-09-17 |
省エネ法における特定事業者の指定基準、報告の様式、原油換算係数、判断基準の詳細は、法令および告示に基づきます。この部分は、資源エネルギー庁の公表資料および所管の経済産業局に確認してください。 エネルギー消費原単位の分母の取り方も、業種と事業の実態に応じて定めるものです。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。エネルギー費用の削減効果は、対策の内容によるため数値化していません。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
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