Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 住宅の火災保険の破損・水濡れ・盗難の請求で届く書類と事故の経緯を Azure OpenAI で読み合わせ、書類どうしの食い違いを確認点に並べて、特別調査に回すかの判断材料を査定担当に出す

住宅の火災保険の破損・水濡れ・盗難の請求で届く書類と事故の経緯を Azure OpenAI で読み合わせ、書類どうしの食い違いを確認点に並べて、特別調査に回すかの判断材料を査定担当に出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

住宅の火災保険の破損・水濡れ・盗難の請求で届いた書類と受付の記録を読み合わせ、日付・場所・損害の物・金額の食い違いを、根拠の原文付きの確認点として並べます。特別調査に回すか、支払うかは査定担当が決め、AIは不正かどうかを書きません。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
保険/金融
対象部門
品質管理
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
200h/月
AI導入後
80h/月
想定削減
60%
年間削減
1,440h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 支払システムで、書類がそろった請求を開く
  2. 受付の記録(事故の連絡を受けたときの聞き取り)を読む
  3. 事故状況の報告、修理見積書、写真の説明、警察の受理番号などを順に開き、日付・場所・損害の物・金額を見比べる
  4. 契約の始期日や変更の履歴と、事故の日付を見比べる
  5. 自社の過去の請求の記録を引き、同じ契約・同じ物の請求がないかを見る
  6. 気になる点があれば、メモに書き、特別調査に回すかを自分で判断する。迷えば先輩に相談する
  7. 回さないものは通常の査定に進め、回すものは調査の依頼票を書く
導入後(After)
  1. 自動支払システムで、請求の書類がそろい、査定に入ったことを検知する
  2. 自動受付の記録と、取込済みの書類の文字のデータを集める
  3. 自動契約者の属性(年齢・国籍・住所の地域・職業など)を入力から外し、氏名と連絡先を記号に置き換える
  4. 自動Azure OpenAI が、書類ごとに日付・場所・損害の物・金額・経緯を取り出す
  5. 自動Azure OpenAI が、書類どうしの食い違いを、種類と根拠の原文付きで確認点に並べる
  6. 自動プログラムが、根拠の原文が元の書類にそのまま含まれているかを確かめる
  7. 自動プログラムが、契約の始期日と事故日の間隔、過去の請求の有無を計算して確認点に足す
  8. 自動規則で、確認点の種類と数から「通常の査定」「担当者が確かめる」「調査の検討」の3つに振り分ける
  9. 人査定担当が確認点を読み、書類の原本で確かめる
  10. 人「調査の検討」のものは、査定担当と不正請求対策の担当が回すかを決める
  11. 人回さないと決めたものは、確認点の扱い(誤記と判断、請求者に確認済み等)を記録して通常の査定に進める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 支払システムで、書類がそろった請求を開く
  2. 受付の記録(事故の連絡を受けたときの聞き取り)を読む
  3. 事故状況の報告、修理見積書、写真の説明、警察の受理番号などを順に開き、日付・場所・損害の物・金額を見比べる
  4. 契約の始期日や変更の履歴と、事故の日付を見比べる
  5. 自社の過去の請求の記録を引き、同じ契約・同じ物の請求がないかを見る
  6. 気になる点があれば、メモに書き、特別調査に回すかを自分で判断する。迷えば先輩に相談する
  7. 回さないものは通常の査定に進め、回すものは調査の依頼票を書く

(a)読み合わせに時間がかかる。 書類は5〜8種類あり、それぞれ書いた人が違います。事故の日付だけでも、連絡の記録、報告、見積書、警察の受理と、4か所に書かれていることがあります。 それを1つずつ見比べるのが、20分のほとんどです。

(b)食い違いを見落とす。 日付のずれは目に付きますが、損害の物の食い違いは見落としやすいです。報告では「リビングのテレビ」、見積書では型番だけ、写真の説明では「寝室」。同じ物かどうかを読み解くには、書類を行き来する必要があります。

(c)調査に回す判断が人によって違う。 経験の長い担当者は小さな違和感で回し、経験の浅い担当者は大きな食い違いがあっても回さないことがあります。同じ請求が、担当者によって違う扱いを受けている状態です。

(d)回しすぎると誠実な請求者を待たせる。 迷ったら回す、とすれば見逃しは減りますが、特別調査に回った請求は支払いまでの日数が延びます。 大半の誠実な請求者に負担をかけないためにも、回す理由を書類の事実で説明できる状態が要ります。

  1. 【自動】 支払システムで、請求の書類がそろい、査定に入ったことを検知する
  2. 【自動】 受付の記録と、取込済みの書類の文字のデータを集める
  3. 【自動】 契約者の属性(年齢・国籍・住所の地域・職業など)を入力から外し、氏名と連絡先を記号に置き換える
  4. 【自動】 Azure OpenAI が、書類ごとに日付・場所・損害の物・金額・経緯を取り出す
  5. 【自動】 Azure OpenAI が、書類どうしの食い違いを、種類と根拠の原文付きで確認点に並べる
  6. 【自動】 プログラムが、根拠の原文が元の書類にそのまま含まれているかを確かめる
  7. 【自動】 プログラムが、契約の始期日と事故日の間隔、過去の請求の有無を計算して確認点に足す
  8. 【自動】 規則で、確認点の種類と数から「通常の査定」「担当者が確かめる」「調査の検討」の3つに振り分ける
  9. 【人】 査定担当が確認点を読み、書類の原本で確かめる
  10. 【人】 「調査の検討」のものは、査定担当と不正請求対策の担当が回すかを決める
  11. 【人】 回さないと決めたものは、確認点の扱い(誤記と判断、請求者に確認済み等)を記録して通常の査定に進める

8番目の振り分けは、AIではなく規則で行います。 AIが出すのは確認点の一覧までで、どの組み合わせなら調査を検討するかは、不正請求対策の担当が決めて文書にした基準です。

10番目で、AIの一覧だけを根拠に調査に回しません。 確認点は「書類どうしが合っていない」という事実で、その理由が誤記なのか、記憶違いなのか、それ以外なのかは、人が確かめて初めて分かります。

02今回想定するシステム構成

構成図
支払システム(受付の記録・査定の状態)
請求書類の取込(取込済みの文字のデータ・画像)
契約の管理システム(始期日・変更の履歴)
   │  書類がそろい査定に入る
   ▼【トリガー】査定の状態の変化
Azure Functions
   ├──▶ 属性の除外、氏名・連絡先の記号化
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力でJSON
   │   ① 書類ごとの日付・場所・損害の物・金額・経緯
   │   ② 書類どうしの食い違い(種類・根拠の原文)
   ▼
Azure Functions ── 原文の照合、始期日との間隔、過去の請求の有無
   │               規則で振り分け(通常/担当者確認/調査の検討)
   ▼
【査定担当が確認点を書類の原本で確かめる】
   ▼
調査の検討は不正請求対策の担当と協議 → 回す・回さないを記録
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(入力の整形、原文の照合、期間の計算、規則の振り分け)Power Automate
書類の読み取り既存の請求書類の取込(読み取り済みの文字のデータ)Google Document AI
保管支払システムの添付・自社の文書管理SharePoint

支払システムと請求書類の取込は、新しく足すものではありません。 この構成は書類の文字のデータと受付の記録を読むだけで、査定の結果や支払の可否を書き込みません。 確認点の一覧と振り分けの結果は、支払システムの事故の記録に参照として添えます。

生成AIには Azure OpenAI(Microsoft Foundry)を使い、構造化出力で受け取ります。 Chat Completions API と Responses API の両方で使え、Chat Completions では response_format に、Responses では text.format にスキーマを定義します。すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定します。 オブジェクトのプロパティは最大100個、入れ子は最大5レベルです。文字列の長さや数値の範囲(minLength・minimum など)は使えないので、受け取った後にプログラムで確かめます。

基準の土台は、金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」です。 保険金等支払管理態勢の着眼点では、不正請求の疑義がある事案について、決裁を上位の権限を持つ職員や不正請求への対応を専門とする職員に限ることや、支払の過程で関連部門への報告を求めるなど、より慎重な判断を担保する態勢が挙げられています。この構成が作る確認点の一覧は、その慎重な判断に回す事案を、書類の事実で選び出すためのものです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

支払システムで、請求の書類がそろって査定に入ったことを起点にします。 査定の状態が「書類完備」「査定中」に変わった事故を、Azure Functions から15分ごとに拾います。支払システムに状態の変化を外へ知らせる仕組みがあれば、それを使います。

事故の連絡を受けた時点では動かしません。 書類がそろわないうちに食い違いを探すと、まだ届いていない書類が「食い違い」に見えます。ただし、書類が後から追加で届いたときは、もう一度動かし、前回の確認点との差を出します。

処理の結果は、査定担当が事故を開く前にそろっているようにします。 査定に入ってから15分以内に一覧が添えられていれば、担当者は書類を読み始める前に確認点を見られます。処理が遅れているときは、一覧が無いことを画面に出し、手作業で読み合わせます。

種目は破損汚損・水濡れ・盗難に限ります。 風災・水災などの自然災害の請求は、同じ地域で同じ日に多数届くので、書類どうしの食い違いの意味が違います。対象を絞ることで、確認点の種類を決めやすくします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
受付の記録事故の連絡を受けたときの聞き取りの記録(日時・場所・状況・損害の物)支払システム
請求書類保険金請求書、事故状況の報告、修理見積書、写真の説明、警察の受理番号、領収書・保証書の写し請求書類の取込(文字のデータ)
契約の情報始期日、補償の内容、保険金額、変更の履歴(日付と内容)契約の管理システム
過去の請求同じ契約・同じ所在地での自社の請求の記録(日付・種目・損害の物)支払システム
確認点の基準確認点の種類の一覧と、振り分けの規則不正請求対策の担当が管理する文書

入力から外すもの: 契約者の年齢、国籍、職業、住所の地域、過去の苦情の有無。これらは確認点の材料にしません。 書類の住所は「所在地」として、損害の場所が契約の所在地と一致するかを見るためだけに使います。

過去の請求は、AIに渡さずプログラムで照合します。 同じ契約で同じ物の請求があるかは、日付と品目で機械的に引けます。AIには、照合の結果(「同じ契約で14か月前に同じ型番のテレビの請求あり」)だけを渡します。

Step3

データの取得方法を決める

  1. 受付の記録と査定の状態 … 支払システムから、事故の番号で受付の記録と書類の一覧を取ります
  2. 書類の文字のデータ … 請求書類の取込が保存している文字のデータを、書類の種類ごとに取ります。読み取りの信頼度が低い書類は、その旨を印にして持ちます
  3. 契約の情報 … 契約の管理システムから、始期日・保険金額・変更の履歴を取ります
  4. 過去の請求 … 契約番号と所在地で、自社の支払システムの過去の請求を引きます

2番目で、取込が読めなかった書類を「書かれていない」と扱わないことが大事です。 手書きの報告が読めずに空になっていると、AIは「報告に損害の物の記載が無い」と確認点にします。読めなかったことと書かれていないことは、査定担当にとって意味がまったく違います。

写真そのものは渡しません。 渡すのは、請求者や修理業者が書いた写真の説明と、取込のときに付いた撮影日などの文字のデータだけです。写真を画像として読ませると、写っている物の推し量りが確認点に混ざり、書類に書かれた事実どうしを比べるという線がぼやけます。 写真と説明が合っているかは、査定担当が原本で見ます。

集めた情報は、事故の番号ごとに1つの入力にまとめます。 書類の種類ごとに見出しを付け、どの文がどの書類のものかが分かる形にします。見出しが無いと、AIは根拠の書類を取り違えます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 属性の除外 … 年齢・国籍・職業・住所の地域など、確認点の材料にしない項目を入力から取り除きます
  2. 記号化 … 契約者・被保険者・修理業者の氏名と連絡先を「契約者」「修理業者A」に置き換えます。対応表は Azure Functions の側に持ちます
  3. 書類の種類の付け直し … 取込のときに付いた種類が違っていれば直し、種類ごとに区切りを入れます
  4. 日付の正規化 … 和暦・西暦・「先週の金曜」のような書き方を残したまま、プログラムで読める日付は併記します
  5. 期間の計算 … 始期日・補償の変更日と事故日との日数を、プログラムで計算しておきます
  6. 読み取りの信頼度の印 … 信頼度が低い書類には「読み取り不確か」の印を付けて渡します

5番目をAIにさせないのは、計算の誤りを避けるためです。 日数の計算はプログラムのほうが確実で、AIには計算の結果を渡し、それを経緯と照らすところだけをさせます。

1番目は、外したことを記録に残します。 どの項目を外して渡したかが残っていないと、後から「属性で振り分けていないか」と問われたときに答えられません。外す項目の一覧に版を付け、処理ごとにその版の番号を保存します。 一覧を変えるときは、不正請求対策の担当とコンプライアンスの担当の両方が承認します。

Step5

AIに処理させる

させること中身
事実の取り出し書類ごとに、事故の日時、場所(建物内の部屋・箇所)、原因、損害の物、修理の内容と金額を取り出す
食い違いの検出同じ事実について書類どうしで記載が違うものを挙げる
損害と修理の対応見積書の各項目が、報告・写真の説明に出てくる損害と対応するかを見る
経緯の整合報告に書かれた原因と、損害の場所・広がりが、書類の記載どうしで矛盾しないかを見る
確認点の分類日付/場所/損害の物/金額/原因・経緯/書類の不足 のどれか
根拠の原文各確認点の根拠にした原文を、書類ごとに一字一句そのまま写す
請求者への確認事項の下書き確認点ごとに、請求者や修理業者に何を確かめればよいかの問いの下書き
させないこと理由
不正かどうかの判断・疑いの度合い判断は査定担当と不正請求対策の担当が行う
支払・不払の判断約款の当てはめと損害の認定は査定の本体
請求者の人物の評価属性や書きぶりから人を推し量らない
書類に無い事実の補完書かれていないことを経験則で埋めない
修理費が高いかどうかの評価単価の妥当性は鑑定人・アジャスターの領域

表の3行目「損害と修理の対応」がいちばん効きます。 監督指針も、過大な修理費の見積りに基づく請求を問題として挙げています。ただし、AIが見るのは「その項目が報告された損害と対応するか」だけで、金額が高いか安いかは見ません。

たとえば、報告に「洗面所の給水管から漏れ、洗面所の床が濡れた」とあり、写真の説明も洗面所の床だけなのに、見積書に「洗面所 床張替」「廊下 床張替」「洋室 クロス張替」が並んでいる場合です。AIは「廊下」「洋室」の2項目が報告と写真の説明に出てこないことを挙げ、根拠として3つの書類の該当行を写します。 水が廊下まで回った可能性はあり、それを確かめるのは査定担当と、必要なら鑑定人です。AIの役目は、確かめるべき2項目を見落とさずに示すところまでです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは損害保険会社の査定担当を補助し、保険金請求の書類どうしが
合っているかを確かめます。不正かどうかは判断しません。

【渡すもの】
- 受付の記録と、請求書類(種類ごとに区切り)の文字のデータ
- 契約の始期日・変更日と事故日の日数(計算済み)
- 過去の請求の照合結果(計算済み)
「読み取り不確か」の印がある書類は、文字が正しく読めていない可能性があります。

【させること】
1. 書類ごとに、事故の日時、場所、原因、損害の物、修理の内容と金額を
   取り出してください。書かれていなければ "記載なし" としてください。
2. 同じ事実について書類どうしで記載が違うものを findings に挙げてください。
3. 修理見積書の各項目が、報告や写真の説明に出てくる損害と対応するかを見て、
   対応しない項目を findings に挙げてください。
4. 各 finding には、根拠にした原文を書類ごとに quote に一字一句写してください。
5. 各 finding について、請求者または修理業者に確かめる問いを1つ書いてください。

【厳守事項】
- 不正、虚偽、詐欺、疑わしい、といった評価の言葉を使わないでください。
- 支払うべきか、調査に回すべきかを書かないでください。
- 請求者の人柄や書きぶりについて書かないでください。
- 書かれていない事実を、経験則や一般的な事故の様子から補わないでください。
- 修理費の金額が高い・安いを評価しないでください。
- 「読み取り不確か」の書類だけに基づく食い違いは、basis を ocr_uncertain に
  してください。
- 日付の表記の違い(和暦と西暦など)だけで、同じ日を指すものは
  食い違いにしないでください。

【種類】date / location / damaged_item / amount / cause / missing_document
【事故の番号】{claim_ref}
【受付の記録】{intake_record}
【請求書類】{documents}
【計算済みの情報】{computed_facts}

「評価の言葉を使わない」を最初に書くのは、確認点が査定担当の先入観になるからです。 一覧に「疑わしい」と書かれていれば、それを読んだ担当者は疑う目で書類を読みます。一覧に書くのは「AとBの記載が違う」という事実だけにします。

最後の項目の「同じ日を指すもの」も入れておきます。 入れないと、令和と西暦の書き分けや「10/3」と「10月3日」の違いを食い違いとして挙げ、確認点の大半が意味のないものになります。

Step7

出力形式を固定する

{
  "claim_ref": "",
  "facts_by_document": [
    { "document": "事故状況の報告", "event_datetime": "", "location": "",
      "cause": "", "damaged_items": [""], "repair_items": [""], "amounts": [""] }
  ],
  "findings": [
    { "id": "F1", "type": "date | location | damaged_item | amount | cause | missing_document",
      "description": "",
      "quotes": [ { "document": "", "text": "" } ],
      "basis": "text | ocr_uncertain",
      "question_to_confirm": "" }
  ]
}

1つ目の理由は、findings と振り分けを別の層に置けることです。 findings はAIが埋め、振り分けは Azure Functions が規則で決めます。

振り分け条件の例(不正請求対策の担当が決める)
通常の査定findings が0件、または missing_document だけ
担当者が確かめるdate・location・cause のいずれかが1件以上
調査の検討damaged_item か amount があり、かつ始期日から短期間・同じ物の過去の請求など計算済みの情報と重なる
共通basis が ocr_uncertain の確認点は、振り分けの数に入れず原本で確かめる

2つ目は、quotes をプログラムで照合できることです。 各 text が、指定した書類の文字のデータにそのまま含まれているかを確かめ、含まれていない確認点は「原文と一致せず」と表示して振り分けの数から外します。

3つ目は、question_to_confirm がそのまま請求者への確認に使えることです。 確認点の多くは、請求者に聞けば誤記と分かって解消します。問いを先に用意しておくと、確認の連絡が速くなります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
支払システムAPI・データ連携(各社の仕組みによる)受付の記録と書類の一覧を読む。確認点の一覧を参照として添える
請求書類の取込ファイル・データの読み取り書類の文字のデータと読み取りの信頼度を読む
契約の管理システムデータ連携始期日・変更の履歴を読む
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)API呼び出し(構造化出力)事実の取り出しと食い違いの検出

支払システムへの書き込みは、確認点の一覧を添えることだけです。 査定の状態を変えたり、支払を止めたりする操作は、この構成からは行いません。調査に回すと決めるのも、状態を変えるのも、人です。

Step9

人が確認する

  1. 確認点を書類の原本で確かめる(査定担当) … quotes の箇所を原本の画像で見て、食い違いが本当にあるかを確かめます
  2. 請求者・修理業者に確かめる(査定担当) … question_to_confirm を使って問い合わせ、誤記・記憶違いと分かったものは、その旨を記録して解消します
  3. 調査に回すかを決める(査定担当と不正請求対策の担当) … 「調査の検討」に振り分けられたもので、2番目で解消しなかったものについて協議します
  4. 回さない理由を記録する … 確認点ごとに、何を確かめて解消したかを残します

2番目を3番目より先に置くのが、この運用の要です。 確認点の多くは請求者に一度聞けば片づきます。いきなり調査に回すと、誠実な請求者の支払いを理由なく遅らせることになります。

確認点の一覧は、支払システムの事故の画面から1回で開けるようにします。 一覧の各確認点から、根拠の書類の該当ページへ飛べると、原本で確かめる時間が大きく減ります。一覧だけを見て原本を開かない運用にならないよう、確かめた印を付けないと次の操作に進めない作りにしておくと確実です。

目標は、600件をならして1件8分です。 findings が0件の請求は数十秒で一覧を確かめて終わり、確認点のあるものは原本で確かめて数分から十数分かかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
書類が読み取れず文字のデータが空「読み取り不確か」として渡し、ocr_uncertain の確認点は原本で確かめる
書類が後から追加で届くもう一度処理し、前回との差(増えた・解消した確認点)を出す
根拠の原文が書類と一致しない「原文と一致せず」と表示し、振り分けの数から外す
応答がスキーマに合わない・拒否される1回だけやり直し、だめなら通常の手作業の読み合わせに戻す
請求者が外国語で報告を書いた原文のまま渡し、description だけ日本語で出す。言語を確認点の材料にしない
盗難で警察の受理番号が無いmissing_document とし、請求者に届出の状況を確かめる
自然災害の請求が混ざる対象外として処理しない。種目の区分を直す
代理店・修理業者が書類をまとめて出している書類の出し手を記録し、同じ出し手の確認点の傾向は不正請求対策の担当が別に見る

最後の行は、AIの判断に入れません。 同じ修理業者の見積りに食い違いが続くかどうかは、件数を集計して不正請求対策の担当が見るものです。1件の確認点の一覧に「この業者は前にも」と書かせると、個々の請求の判断がゆがみます。

Step11

記録を残す

  • AIに渡した入力の全文(属性を外し、記号化した後のもの)と記号の対応表
  • AIの出力のJSONと、quotes の照合結果
  • 振り分けの結果と、そのとき使った振り分けの規則の版
  • 査定担当が確かめた結果(確認点ごとに、解消・未解消と理由)
  • 調査に回すかの協議の結果と決めた人
  • 調査の結果(回したものの結論)と、それが確認点のどの種類に当たっていたか

最後の行が、規則を直す材料になります。 どの種類の確認点が調査で事実と分かり、どの種類が誤記ばかりだったかが分かれば、振り分けの規則を書類の事実に基づいて直せます。 監督指針も、不正請求事案の調査結果などを通じて把握した課題を踏まえ、支払の手続きを見直すことを求めています。

04実装レベルの3段階

最小構成:記号化した書類を手でAIの画面に貼り、食い違いを挙げさせる / 1件ごとの読み合わせ
半自動化:上記+支払システムと書類の取込から文字のデータを集め、Azure OpenAI に渡して確認点の一覧を作る / 書類の収集と確認点の一覧化
本格構成:上記+原文の照合、期間と過去の請求の計算、規則による振り分け、確認の問いの下書きまで出す / 読み合わせと振り分けの全体

最小構成では件数がさばけません。 記号化と貼り付けを手で行うので、月600件には使えません。確認点が査定担当の役に立つかを確かめる段階です。 半自動化で、①の読み合わせの大半が一覧になります。 期間の計算と過去の請求の照合は手で残ります。本格構成で②と③も一覧と振り分けになり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の確認点を2〜3か月ためると、どの種類の確認点が誤記ばかりで、どの種類が調査につながったかが分かります。それを見ないうちに振り分けの規則を決めると、調査に回る件数が多すぎるか少なすぎるかのどちらかになります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
10 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  600件 × 20分 ÷ 60 = 200 時間/月
導入後 600件 × 8分 ÷ 60 = 80 時間/月
月間削減時間
120h
削減率
60%
年間削減時間
1,440h
年間金額換算(時間単価3,500円)
504万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 住宅の火災保険で、破損汚損・水濡れ・盗難などの請求を月に数百件受け付け、査定担当が書類を1件ずつ読み合わせて不自然な点を探している損害保険会社・共済。請求の書類が支払システムに取り込まれ、文字のデータとして読める場合。特別調査に回す基準が担当者の経験に頼っていて、回す・回さないの判断が人によって違う場合。Azure の契約があり、データを自社のテナントの中で扱う構成を取れる場合。
向いていない
  1. 請求が月に数十件で、ベテランの担当者が全件を丁寧に見て足りる場合。請求の書類が紙のまま保管され、文字のデータになっていない場合。不正かどうかの判断や、支払・不払の判断を機械に任せたい場合(この構成は判断を代替しません)。契約者の年齢・国籍・住所の地域などの属性で疑いの度合いを付けたい場合(この構成ではそれをしません)。

07最小構成で試す方法

  1. 過去に支払が済んだ請求から30件を選ぶ(うち数件は、当時特別調査に回したものを入れる)
  2. 氏名・連絡先を記号に置き換え、年齢・国籍・職業・住所の地域を消す
  3. 受付の記録と書類の文字のデータを、契約上の扱いを確かめた生成AIの画面に1件ずつ貼る
  4. 「書類どうしで日付・場所・損害の物・金額・原因の記載が違うものを、原文付きで挙げてください。不正かどうかは書かないでください」と指示する
  5. 当時の査定担当のメモと、調査に回したかどうかと突き合わせる
出てきた内容判断
当時のメモにある食い違いが出た振り分けの規則づくりに進む
表記の違いだけの食い違いが多い指示の書き方で直る。構成は有効
「疑わしい」と評価を書いた指示とスキーマで直す。評価の欄を作らない

2行目はほぼ必ず出ます。 和暦と西暦、「台所」と「キッチン」の違いを食い違いとして挙げます。同じものを指す言い換えの例を指示に足すと減ります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが「疑わしい」と評価を書く指示で禁じ、スキーマに評価の欄を作らない
表記の違いを食い違いに挙げる同じものを指す言い換えの例を指示に足す
読めなかった書類を「記載なし」にする読み取りの信頼度の印を渡し、ocr_uncertain で分ける
属性が確認点の材料に紛れる入力の段階で属性を外す
確認点だけで調査に回す請求者への確認を先に置く
調査に回る件数が増えすぎる半自動化で数か月ためてから規則を決める
日数の計算をAIに任せて誤る期間はプログラムで計算して渡す
書類の追加で前回の確認点が残る書類が増えたら処理し直し、差を出す
規則を変えたのに過去の振り分けが説明できない振り分けの規則に版を付けて記録する

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIの一覧が人の判断を先回りすることから起きます。評価の言葉が無く、属性が無い一覧なら、査定担当は書類の事実だけを見て判断できます。

5行目と6行目は、誠実な請求者への影響に直結します。 調査に回すのは、確かめたうえで解消しなかったものだけにします。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 請求者の氏名・住所・連絡先、事故の状況、損害の物と金額、修理業者の情報、契約の内容、過去の請求の記録です。盗難の請求では、警察への届出の情報も含まれます。

  1. 不正の判断をAIにさせない … AIの一覧は書類どうしの食い違いという事実だけです。不正かどうか、支払うかどうかは、査定担当と不正請求対策の担当が書類の原本と確認の結果に基づいて決めます
  2. 属性を材料にしない … 年齢・国籍・職業・住所の地域で疑いの度合いを付けると、誠実な請求者を属性だけで遅らせることになります。 入力の段階で外します
  3. 損害調査で権利を損なわない … 監督指針は、損害調査に際して関係当事者及び第三者の名誉、信用、プライバシー等の権利が不当に損なわれることのない態勢を求めています。確認点の一覧は社内の査定の資料にとどめ、請求者への問い合わせでは事実の確認だけを行います
  4. データの扱いを確かめる … Azure OpenAI では、プロンプトと出力は他のお客様や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないとされています。Global・DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうるので、地域を指定したデプロイを選びます。不正使用の監視でプロンプトと出力が保存され、人が確認する場合があり、変更の申請ができます
  5. ステートフルな機能を使わない … Responses API のメッセージ履歴や保存済み完了は、サービスにデータを保存します。1件ごとに完結する呼び出しにし、保存する機能を使うなら保存の期間と削除を決めます
  6. 調査の結果を規則の見直しに使う … 監督指針は、不正請求事案の調査結果などで把握した課題を踏まえて支払の手続きを見直すことを求めています。確認点の種類と調査の結果を突き合わせ、規則を定期的に直します

誤りが起きた場合のリスクは、確認点を見落として支払うことと、誤記にすぎない請求を調査に回して支払いを遅らせることの2つです。 前者は原文の照合と書類の追加時の処理し直しで、後者は請求者への確認を先に置くことで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:確認点の種類と外す属性を決める

不正請求対策・査定・コンプライアンスの担当で、確認点の種類(日付・場所・損害の物・金額・原因・書類の不足)と、入力から外す属性を決めます。ここで「評価の言葉を使わない」ことも合意します。

2週目:30件で試す

支払済みの請求から30件を選び、記号化した書類で確認点の一覧を出させます。当時の査定担当のメモと、調査に回したかどうかと突き合わせます。

3週目:データの集め方を決める

支払システム・書類の取込・契約の管理システムから、事故の番号で情報を集める方法を、各システムの担当と決めます。読み取りの信頼度を取れるかもここで確かめます。

4週目:一覧までをつなぐ

Azure Functions で情報を集め、Azure OpenAI に渡し、確認点の一覧を支払システムに添えるところまで作ります。この時点では振り分けを出しません。

2か月目: 原文の照合、期間と過去の請求の計算、確認の問いの下書きを足し、確認点の種類ごとの解消の割合を数えます。3か月目以降: 集まった結果から振り分けの規則を決めて足し、1件20分が何分になったかを実測します。調査に回る理由が書類の事実で説明できるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
保険金等支払管理態勢(II-4-4-3)の着眼点として、不正請求の疑義がある事案について決裁を上位の権限を持つ職員や不正請求への対応を専門とする職員に限ることや関連部門への報告を求めるなど、より慎重な判断を担保する態勢が挙げられていること。不正請求の疑義に関する情報を関連部門間で共有する態勢。損害調査に際して関係当事者及び第三者の名誉、信用、プライバシー等の権利が不当に損なわれることのない態勢。不正請求事案の調査結果等を通じて把握した課題を踏まえ支払事務の手続きを見直すこと。不正な修理費の見積りに基づく請求が問題として挙げられていること金融庁: 保険会社向けの総合的な監督指針(II-4 業務の適切性)2026-10-15
日本損害保険協会が、地域の警察と損害保険各社で構成する損害保険防犯対策協議会を全国に設け、情報交換・捜査協力を行っていること。保険金不正請求ホットラインを設置していること日本損害保険協会: 保険金不正請求への対応2026-10-15
Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使え、それぞれ response_format・text.format でスキーマを定義すること。すべてのフィールドを必須にし additionalProperties: false を設定すること。プロパティは最大100個、入れ子は最大5レベルであること。文字列の minLength、数値の minimum などが非対応であることMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-15
プロンプトと出力が他のお客様や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないこと。Global・DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうること。Responses API・保存済み完了がデータを保存すること。不正使用の監視でプロンプトと出力が保存・確認される場合があり、変更の申請ができることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-15

不正かどうか、支払うかどうか、特別調査に回すかどうかは、査定担当と不正請求対策の担当が決めてください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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