部門のサイロ化はなぜ起きるのか|AI導入前につなぐ順番

部門のサイロ化はなぜ起きるのか|AI導入前につなぐ順番

「情報システム部門から、まずサイロ化の解消からです、と言われた。何をどこまでやれば解消なのかを誰も説明できないまま、全社のデータ基盤を作る話に変わっている」「部門をまたぐ定例を月に1回から2回に増やした。半年たっても、持ち寄る数字が合わない箇所は1つも減っていない」。——2つの声に共通しているのは、サイロ化を部門どうしの距離の問題として扱っている点です。距離を詰める打ち手を先に置いても、閉じている理由そのものには当たりません。独立行政法人情報処理推進機構が2025年2月上旬から3月下旬にかけて日本企業1,535社・米国企業509社・ドイツ企業537社に実施し、同年6月に公表した調査「DX動向2025」では、9割以上の日本企業が組織をまたぐ業務のデジタル化に取り組んでいる一方、成果が出ていると答えた割合は36.4%でした。米独の企業は、この項目を含む全ての取組内容で9割以上が取り組み、6割前後が成果を挙げています。取り組んでいないから閉じているのではなく、取り組んでも閉じたままになっている。この記事では、部門が閉じる理由を4つに分け、AIを入れる前に何から順につなぐのか、どこはつながなくてよいのかまでを書きます。


カメ先生カメ先生

サイロ化は部門どうしの仲が悪いから起きると思われがちですが、実際に閉じさせているのは仕組みの側です。評価される数字が部門ごとに別で、同じ言葉が部門ごとに違うものを指し、仕組みが部門単位で買われている。この3つが揃うと、全員が善意で正しく動いても情報は閉じます。


カメ子カメ子

人を入れ替えても直らない、ということですか。


カメ先生カメ先生

直りません。入れ替えた人も、その部門の数字で評価された時点で前任者と同じ動きに戻ります。だから手をつける順番が要ります。道具をつなぐのは最後で、先に言葉を1つにします。


カメ子カメ子

言葉を1つにするというのは、用語集を作ることとは違うのでしょうか。


この記事のポイント
  • サイロ化は仲の問題ではない。部門ごとに評価される数字、同じ言葉の別の意味、部門単位で買われた仕組み、人に付いた手順という4つの原因が重なって起きる
  • AIを入れると分断が表面化する。定義が部門ごとに違うまま読ませると、自信ありげな答えが部門ごとに食い違って返ってくる
  • つなぐ順番は、言葉の定義、相手の名寄せ、進み方の段階、道具の連携。逆から始めると、つないだ先で意味が食い違う

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目次

サイロ化とは、部門ごとに情報と手順が閉じて全体の姿が誰にも見えない状態

サイロは、穀物や飼料をためておく円筒形の倉のことです。隣り合って建っていても、中身は互いに行き来しません。組織について使うときも同じで、隣にあることと、つながっていることは別だという含みがあります。部門は同じ建物にあり、同じ会議に出ていても、持っている情報と回している手順は互いに見えない。これがサイロ化です。

閉じているのは情報だけではありません。閉じるものは3層あります。1つ目はデータで、他部門の記録を見に行けない状態。2つ目は手順で、他部門がどういう順番で何を確認しているかを知らない状態。3つ目は判断の基準で、どこまでなら例外を認めるかが部門ごとに違い、しかもその違いが言葉になっていない状態です。データだけをつないでも解消しないのは、下の2層が残るからです。

この記事で扱うのは、その状態を作っている理由と、手をつける順番です。似た言葉に個別最適化がありますが、これは結果の呼び名で、閉じさせている原因を指してはいません。原因の側を4つに分けて見ると、打つ手が別々であることが分かります。ひとまとめに「連携を強化する」と書いた資料が翌年も同じ文言で出てくるのは、原因が分かれていないからです。

「仲が悪いから起きる」という見方を、最初に外す

サイロ化の話は、しばしば人の関係の話に落ちます。あの部門は非協力的だ、昔からああだ、という説明です。この見方が正しいなら、担当者を入れ替えるか、部門長どうしの関係が改善すれば直るはずです。実際には直りません。異動してきた人も、半年後には前任者と同じ振る舞いをします。入れ替えても同じ結果が出るなら、原因は人ではなく置かれている条件の側にあります

実測値も同じ方向を指しています。先の「DX動向2025」は、効率化と成長の両方で成果を上げている日本企業271社と、効率化では成果があるが成長では成果が出ていない日本企業371社を比べています。業務プロセスの全社最適化に取り組んでいる割合は、前者が59.0%、後者が34.7%でした。同じ調査で成果を上げている米国企業314社では82.8%、ドイツ企業284社では77.1%です。取組の有無で差がついているのであって、社風や気質の話にはなっていません。

同じ報告では、成長と効率化の両方の成果を目的変数にした回帰分析(919社)も行われており、経営層と情報システム部門と業務部門の協調は回帰係数0.437・p値0.039、全社で使えるデータ活用は0.396・0.032と、いずれも統計的に意味のある関係が示されています。効率化の成果だけを目的変数にした分析では、この協調の係数が0.723・p値0.001で最上位でした。誰と誰が話すかではなく、協調する形が置かれているかどうかが効いています。仲の良さは条件が整った後についてくるもので、先に整える対象ではありません。

原因のひとつめ:追いかける数字が部門ごとに別で、それぞれが正しく動いている

いちばん強く働いている原因は、評価される数字の設計です。マーケティング部門は獲得した件数で評価され、営業部門は商談化した割合で評価されます。この2つは、片方を良くすると片方が悪くなる関係にあります。件数を増やすほど、質の低い問い合わせが混ざり、商談化率は下がる。どちらの部門も自分の数字を守る動きをした結果、引き渡しの前後で、情報を出し惜しみする動機が生まれます。悪意ではなく、評価に従っているだけです。

製造や物流を持つ会社では、もっとはっきり出ます。生産部門は設備の稼働率で評価され、営業部門は納期の短さで受注します。稼働率を上げるにはまとめて作るのが有利で、納期を縮めるには小分けに作るのが有利です。両者が自部門の数字を最大にすると、在庫か欠品のどちらかが必ず増える。この構造がある限り、需要の見通しを部門間で共有する動きは起きません。共有すると、相手の都合で自分の数字が悪くなるからです。

ここで注意したいのは、数字の設計を先に直そうとしないことです。評価制度の変更は人事と経営の決裁が要り、年度をまたぎます。先に手をつけるべきは、部門をまたいだときに何が起きているかを見えるようにすることです。同じ調査では、成果指標そのものを設定している日本企業の割合が、成果を上げている層でも46.9%、成果が出ていない層で29.1%にとどまります(米国94.0%、ドイツ85.9%)。指標を作り替える前に、指標が置かれていない領域のほうが広いのが実情です。

原因のふたつめ:同じ言葉が、部門ごとに違う瞬間を指している

ずれるのは専門用語ではありません。専門用語は、意味が分からなければその場で聞かれるので、かえって事故になりません。事故になるのは誰もが知っている日常語です。見込み客、案件、稼働、着手、完了。どれも聞き返されないまま、部門ごとに違うものを指したまま流通します。

違いの正体は、その語がどの瞬間に確定するかです。案件という語は、営業部門では見積書を出した時点で立ち、経理部門では注文書を受け取った時点で立ち、開発部門では作業に人を割り当てた時点で立ちます。3つとも、その部門の仕事の始まりとしては正しい。正しいまま3つあることが問題で、月末に3つの数字が並んだときに初めて、誰かが気づきます。稼働という語も、人の稼働と設備の稼働と、契約上の稼働で、分母が全部違います。

この原因への打ち手は、用語集を作ることではありません。用語集は、ずれていることが分かった後に作るものです。先にやるのは、ずれの発見です。部門をまたぐ集計に出てくる語を10語ほど選び、各部門の担当者に「この語は、どの操作をした瞬間に確定しますか」と1問だけ聞いて回ります。意味を答えてもらうのではなく、確定する瞬間を答えてもらう。抽象的な言い換えが返ってこないので、ずれがそのまま見えます。

原因のみっつめ:仕組みが部門単位で買われてきた

部門ごとに別の道具が入っているのは、統制が甘かったからではありません。それぞれに導入の理由がありました。営業部門は商談の記録を残すために、人事部門は労務の法令改正に間に合わせるために、製造部門は現場の端末で使えるものを探して、それぞれ別の時期に別の理由で選んでいます。選定の場に他部門がいなかったのは、そのとき他部門に関係がなかったからです。後からつなごうとする側が、当時の判断を責めても何も進みません。

つなぐ話が進まない実務上の理由は、更新時期がそろわないことにあります。3つの仕組みが、それぞれ別の年月に契約更新を迎えます。つなぐ工事の費用を出す年に更新を迎える部門と、迎えない部門があり、いつ提案しても、どこかの部門にとっては今ではない。この時期のずれは、放っておくと永久にそろいません。全社の予算の枠を1つ立て、更新時期の早い順に接続の口を作っていく形にしないと、着手できません。

ここで、古い仕組みの有無だけを疑うのは的を外します。先の調査では、老朽化した仕組みが無いか一部にとどまる企業の割合は、成果を上げている日本企業で65.7%、成果が出ていない企業で63.8%と、ほとんど差がありません。古い仕組みを抱えているかどうかでは、分断の有無を説明できないということです。差が出ていたのは、全社最適化に取り組んでいるか(59.0%と34.7%)、全社でデータを使えているか(46.1%と24.5%)といった、道具の新しさではなく、またぐ設計があるかどうかの項目でした。

原因のよっつめ:手順が人に付いていて、異動と退職のたびに壁が厚くなる

4つ目は、部門の中の手順が文書ではなく人に付いていることです。手順書があっても効かないのは、書かれているのが正常な流れだけだからです。実際の仕事の大半は例外の処理で、どの取引先なら書式を崩してよいか、どこまでなら口頭の合意で先に進めてよいかは、担当者の記憶にしかありません。他部門から見ると、この記憶の部分だけが不透明に見えます。壁の厚さは、例外がどれだけ言葉になっていないかで決まります

日本の企業ではこの原因が重く出ます。同じ調査で、他部署からの異動者を含む既存人材の活用に取り組む割合は、成果を上げている日本企業で57.4%、米国企業で30.6%、ドイツ企業で32.0%でした。社内人材の育成も日本68.1%に対し米国46.8%、ドイツ42.3%です。内部の人で回す度合いが高いぶん、手順が人に載りやすい。強みの裏側として、その人が動くと手順ごと止まります。

実務での対処は、手順書を厚くすることではありません。厚い手順書は読まれず、更新もされません。効くのは、例外を処理したその場で1行だけ残す形です。日付、相手、通常と違えた点、判断した人。この4項目だけを、部門をまたぐ案件に限って残します。半年たまると、その部門が何を例外として扱っているかの一覧が、書こうとしないまま出来上がります。壁の内側を外から読めるようにする、いちばん安い方法です。

AIを入れると、隠れていた分断が表面化する

ここまでの4つは、AIが入る前から会社にありました。ただし表には出にくい。人どうしのやりとりでは、受け取った側が「その案件というのは見積ベースですか」と聞き返すからです。AIは聞き返しません。列の名前が同じなら中身も同じだとみなし、部門Aの表と部門Bの表を並べて、1つの答えにまとめます。数字の桁はそれらしく、根拠として挙がる表の名前はどちらも実在します。誤りが停止ではなく、もっともらしい答えとして出てくるところが、人の作業との決定的な違いです。

表面化する時期も、実測値からおよそ見当がつきます。先の調査では、生成AIを個人が業務に使っている割合は日本企業で64.7%(成果が出ていない層でも61.2%)と、米国47.0%、ドイツ55.0%より高い一方、部署の業務プロセスに組み込んでいる割合は日本21.1%(同12.2%)で、米国38.8%、ドイツ42.4%を大きく下回ります。個人が自分の資料を作るために使っている段階では、読ませる範囲がその人の担当分に閉じているので、定義のずれは表に出ません。出るのは、部署の手順に組み込んで、他部門の記録まで読ませ始めた日です。

だから、AIを業務に組み込む計画があるなら、この記事の順番は導入の前に置く工程になります。線の引き方は3つです。1つ目はAIに判断させないこと。どちらの定義が正しいかを選ばせず、食い違っている事実だけを出させます。2つ目は根拠を書かせること。どの表のどの列を、どの定義で読んだかを答えに必ず付けさせ、書けない答えは採用しません。残る1つは、人が確認する範囲を、読ませ始める前に決めておくことです。部門をまたぐ語が1つでも入っている答えは、出す前に人が読む。この線を引いておけば、食い違ったままの数字が社外に届く経路が閉じます。

どこが切れているかは、意見ではなく3つの数で見つける

分断の話は、聞き取りで進めると必ず人の話になります。数で出すと、そこが飛ばせます。3つとも、既にある記録から数えられるので、そのための調査を新しく企画する必要はありません。上から順に、手間が軽い順です。

STEP1
同じ問いを、別々の部門に同じ文面で投げる

「先月の新規の案件は何件でしたか」のような、部門をまたぐ語を含む問いを3つ用意し、4部門に同じ文面で送ります。返ってきた数字を並べるだけで、どの語がずれているかが特定できます。答えの数字の差ではなく、各部門が数えた対象の説明文の差を見ます。1週間で終わります。

STEP2
1件の案件が、部門をまたぐ回数を数える

直近3か月で完了した案件を20件選び、承認や差し戻しで部門の境目を越えた回数を数えます。往復が3回を超える境目が、いちばん厚い壁です。回数はやり取りの記録から数えられるので、現場に聞く必要がありません。ここで20件を超えて集めても、順位は変わりません。

STEP3
同じ相手に、社内の何か所から接触しているかを数える

直近1か月に外部へ出た連絡を、宛先で束ねます。同じ会社の同じ担当者に、別々の部門から複数回届いていれば、相手の情報が部門ごとに別に持たれている証拠です。相手から指摘される前に、こちらから数えます。

STEP4
数える前に、使い道を1文で先に書く

3つの数は、部門の優劣を出すためのものではありません。数え始める前に「この数は、つなぐ順番を決めるためだけに使い、人事評価には使わない」と1文で明示し、依頼文に入れます。書かずに数え始めると、次の依頼から数字が加工されて返ってきます。

3つのうち、いちばん反発が少ないのは1つ目です。答えるのに5分しかかからず、正解不正解がないからです。最初の1本は、負担が軽くて結果が明確に割れるものを選びます。ここで数字が割れた事実が、次の依頼を通す材料になります。

つなぐ順番は、言葉、相手、段階、道具の順で、逆から始めない

つなぐ作業には順番があります。上から、言葉の定義、相手の名寄せ、進み方の段階、道具の連携です。この順で進める理由は単純で、下の段は上の段が決まっていないと作れないからです。道具どうしをつないでも、渡される項目の意味が両側で違えば、食い違いが自動化されて、より速く広がるだけになります。

段階そこでそろえるもの飛ばすと起きること終わったと言える合図
1.言葉部門をまたぐ語が、どの操作をした瞬間に確定するかつないだ先で、同じ列名に別の意味の値が入る同じ問いに、4部門が同じ数字を返す
2.相手取引先と担当者を、どの単位で1件と数えるか同じ相手が複数件として残り、接触が重なる上位100社で、重複した行が0になる
3.段階案件が今どこまで進んでいるかの区切りと、その順番部門ごとに別の進捗が並び、全体の状況が出せない1件の案件を、どの部門が見ても同じ段階で答える
4.道具どの仕組みからどの仕組みへ、何を渡すか渡す前に決めるべきことが、工事の途中で議論になる渡した項目が、受け側でそのままの意味で使われている

実際の現場では、4番から始まりがちです。予算が付きやすく、着手した感じが出るからです。ただし4番から始めると、工事の途中で1番と3番の議論が始まり、そこで工程が止まります。止まった状態で納期が来るので、とりあえず項目名だけ合わせて渡すという妥協が入り、意味が違う値が流れ始めます。半年後に数字が合わなくなり、原因の特定に工事と同じだけの時間がかかります。

1番から3番までは、道具を買わずに進められます。必要なのは、部門をまたぐ語の一覧と、取引先の一覧と、段階の並びだけです。紙と表計算ソフトで足ります。先に進む3段は費用がかからず、費用がかかる最後の1段は、前の3段が終わっていれば短く済む。予算の説明としても、この順番のほうが通しやすくなります。

つなぐ前に決める3つ

順番が決まっても、決める人が決まっていないと1段目で止まります。先に置くのは次の3つだけです。項目を増やすほど、決めること自体が新しい仕事になって進まなくなります。

  • 言葉を決める人:部門の代表を並べるのではなく、複数の部門の断面を見ている人を1人置く。営業事務や受注管理のように、部門をまたいで同じ案件を触っている役割の人が向く
  • 見せる粒度:部門の外へ出すのは1件ごとの明細か、まとめた数字か。相手先の氏名や交渉の経緯まで見せるのか。粒度を先に決めておかないと、出せない事情を理由にして接続そのものが止まる
  • 食い違ったときに決める人:どちらの数字を正とするかを、その場で決める人を1人決める。決めた内容と理由を1行残す場所も同時に決める

3つ目がいちばん軽視されます。裁定する人を置かないと、食い違いが見つかるたびに「双方で持ち帰って調整」となり、次の会議まで止まります。決める人は、どちらかの部門の長ではないほうがうまくいきます。自部門の数字が変わる立場の人は、決めた後に説明を求められるからです。経営企画や、業務全体を見ている役割の人に置くのが現実的です。

1つ目の人選には、もう1つ条件があります。その語を使って報告している人ではなく、その語が確定する操作をしている人を選ぶことです。報告している人は、集計後の数字しか見ていないので、どの瞬間に値が入るかを答えられません。受注の入力をしている人、問い合わせを一次で受けている人が、実際の確定の瞬間を知っています。

全部つなごうとして失敗する型

失敗の型は、どれも進んでいる感じがするところが共通しています。会議は開かれ、契約は結ばれ、資料は増えます。増えないのは、部門をまたぐ案件が滞らずに流れた件数だけです。

  • 横断の会議体だけを作る。月に1回集まって進捗を持ち寄るが、決める人がいないので、食い違いは毎回そのまま持ち帰りになる。半年後、議事録だけが厚くなる
  • 統合の道具を先に買う。渡す項目の意味が両側で違うまま接続するので、数字が合わない原因が、業務側にあるのか接続側にあるのか分からなくなる
  • 片方の部門の言葉を、全社の標準として押し付ける。押し付けられた側は、表向きは合わせつつ、自部門用の集計を別に持ち続ける。二重管理が始まり、どちらが正かが分からなくなる
  • 全部門を同時に並べる。関係者が20人を超えると、日程の調整だけで1か月かかる。最初は、往復回数がいちばん多かった2部門の境目1か所に絞る

3つ目は、良かれと思って起きます。すでに定義が整っている部門があると、それを全社に広げるのが早道に見えます。ところが他部門にとっては、自分の仕事の瞬間と合わない定義で数えることになり、報告用の数字と、仕事に使う数字が別々に必要になります。両方を持つ手間は、押し付けられた側だけが負います。全社の語は、どちらかの部門の語をそのまま採るのではなく、両方の確定の瞬間を並べたうえで、別の名前を付けたほうが定着します。

4つ目の絞り方には、先に数えた3つの数がそのまま使えます。往復回数がいちばん多かった境目を1か所選び、そこだけで1番から3番までを通します。1か所を通し切ると、そこで作った語の一覧と段階の並びが、次の境目でそのまま使い回せます。2か所目からは、かかる時間が半分以下になります。

どこまでつながなくてよいか

つなぐ話は、始めると際限がなくなります。全部つなぐという目標は、達成の判定ができないぶん、途中で力尽きます。先に、つながないものを決めておきます。判断の線は1本で、同じ相手か、同じ案件に触れているかどうかです。触れていないものは、分けておいて構いません。

対象扱い理由
取引先と担当者の情報つなぐ複数の部門が同じ相手に接触するため。分けたままだと、相手側から重複を指摘される
案件の段階と、そこまでの経緯つなぐ1件が部門をまたいで進むため。段階が別々だと、全体の状況を誰も答えられない
部門内の作業メモと、途中の草案分けたまま他部門が読んでも判断に使えず、読める状態にする手間だけがかかる
人事評価の元になる記録分けたままつなぐと、業務の記録が評価に使われるという疑いが生まれ、記録の質そのものが落ちる
交渉中の与信や、係争に関わる判断分けたまま見せてよい相手が限られる。粒度の議論を持ち込むと、他の3つの段階まで止まる

表の下2行は、意識して守る対象です。とくに人事評価との切り分けは、口頭で言うだけでは足りません。案件が部門をまたぐ回数を数え始めると、遅い部門が分かります。この数字が評価に流れた瞬間、翌月から回数の記録が消えます。測るために作った記録は、評価に使った時点で使えなくなる。数え方を説明する文書に、使わない範囲を明記しておきます。

  • この記事で扱ったのは、部門ごとに情報と手順が閉じる理由と、手をつける順番です。データの持ち主を中央の部署に置くか業務部門に置くかという体制の選択、指標の定義書に書く項目、取引先の名寄せの具体的な手順は、それぞれ別に決める項目として扱っていません
  • 引用した割合は、独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(調査実施2025年2月上旬から3月下旬、公表2025年6月)の集計です。日本企業の値は、効率化と成長の両方で成果があると回答した271社と、効率化のみ成果があると回答した371社の比較で、全回答企業の平均ではありません
  • 同報告は、取組と成果の相関を示すもので、因果を直接示すものではないと明記しています。自社に当てはめるときは、業種と規模の近い企業の値を報告書本体で確認してください

マーケティング部門で最初に効くのは、営業との境目とサポートとの境目

全社の話に見えて、いちばん早く効くのはマーケティング部門です。理由は、この部門の数字がほぼ全て、部門をまたぐ語で組み立てられているからです。獲得単価の分母は営業部門と共有する語で決まり、成果の判定は受注の記録に依存し、既存顧客への案内はカスタマーサポートが持つ契約の状態に左右されます。自部門の中だけで意味を固定できる数字が、ほとんどありません

営業との境目で最初に見るのは、引き渡しの基準ではなく往復の回数です。1件が渡って、戻って、また渡る回数を数えます。往復が多い案件を10件並べると、戻る理由が2つか3つに収束します。多くは、渡す時点で書かれていない項目が原因です。基準を作り直す前に、戻ってきた理由の上位2つを書式に足すだけで、往復は目に見えて減ります。

カスタマーサポートとの境目では、契約の状態が見えないことが効いてきます。解約の申し出が出ている相手に、更新を勧める案内が届く。問い合わせで不具合を訴えている相手に、新機能の紹介が届く。どちらも、送った側には見えません。ここでつなぐのは配信の仕組みではなく、送ってはいけない状態の一覧です。状態の名前と、その状態にある相手を判定する条件を、2つの部門で1つに決めます。仕組みの接続は、その後で足ります。

ほどく作業のどこまでをAIに任せるか

この作業は、地味な突き合わせが大量に出ます。人がやると数週間かかり、途中で飽きます。AIに任せてよい範囲は3つです。1つ目は、各部門の定例資料と入力画面の項目名を渡して、名前は違うが同じものを指している語と、名前は同じだが指すものが違う語を、別々の表に分けて出させること。2つ目は、表記のゆれの検出で、全角と半角、法人格の書き方、支店名の付け方の違いを一覧にさせること。3つ目は、部門ごとの段階の名前を横に並べた突き合わせ表の下書きです。

人が決めるのは3つです。言葉の確定手をつける順番食い違ったときの裁定。どれも、間違えたときに戻す先が社内の合意や社外の相手にある決定です。とくに言葉の確定を任せると、それらしい定義が並んだ一覧が返ってきます。もっともらしいので会議を通ってしまい、半年後に、どの部門の実務とも合っていないことが分かります。

やらせてはいけない頼み方も1つ挙げます。自社のどの部門とどの部門をつなぐべきかを、AIに判定させないこと。判定を求めると、質問文に入っていた語に引きずられた答えが返ります。営業と書けば営業が、経理と書けば経理が候補に上がります。代わりに、数えた3つの数と、部門ごとの語の食い違いの一覧を渡し、判定の材料として並べ直させます。どこから手をつけるかは、その一覧を見て人が決めます。決めた理由を1行残すところまでを、人の仕事にします。

よくある質問

解消したかどうかは、何を見れば分かりますか

最初に数えた3つの数を、半年後に同じ方法でもう一度数えます。同じ問いへの4部門の答えがそろっているか、案件が境目を往復する回数が減っているか、同じ相手への重複した接触が減っているか。会議の数や、作った文書の数では判定できません。数え方を変えずに2回測ることだけが条件です。

小さな会社でも、サイロ化は起きますか

起きます。人数が少ないと、1人が複数の役割を持つため、部門ではなく人の単位で閉じます。営業と請求を1人が兼ねていると、その人の頭の中では整合していて、外からは何も見えません。人数が少ない会社では、閉じているかどうかを部門の数ではなく、その人が休んだときに止まる工程の数で測ります。

先に全社のデータ基盤を作れば、解決しませんか

基盤は、この記事でいう4段目の道具に当たります。1段目から3段目が決まっていないまま作ると、意味の違う値が同じ場所に集まります。集めた後に意味の食い違いを直す作業は、集める前に決めるより手間がかかります。基盤の検討自体を止める必要はありませんが、着手の条件として、部門をまたぐ語の確定を先に置いてください

横断のチームを作るのは、無駄ということですか

無駄になるのは、決める権限を持たないチームです。持ち寄って共有するだけの場は、食い違いを見つけますが、直せません。作るなら、どちらの数字を正とするかをその場で決められる権限と、決めた内容を記録する場所を最初から付けます。人数は、往復回数が多かった境目の2部門と、裁定する人の3者で足ります。

AIの導入を止めて、先につなぐ作業をすべきですか

止める必要はありません。個人が自分の担当分で使う範囲であれば、定義のずれは表に出ません。線を引くのは、部門をまたぐ記録を読ませ始めるときです。読ませる範囲を、語の確定が済んだ範囲に限る。この1本だけ先に引いておけば、つなぐ作業と並行してAIの利用を広げられます。

まとめ

部門のサイロ化は、仲の悪さではなく仕組みの側の理由で起きます。評価される数字が部門ごとに別であること、同じ日常語が部門ごとに違う瞬間を指していること、仕組みが別々の時期に別々の理由で買われていること、手順が人に付いていて例外が言葉になっていないこと。この4つは打ち手が別で、まとめて連携強化と書いた時点で何も動かなくなります。AIを入れると、この分断が表面化します。生成AIを個人が業務に使う割合は日本企業で64.7%と高い一方、部署の業務プロセスに組み込んでいる割合は21.1%にとどまり、多くの会社はまだ表面化する手前にいます。組み込んだ日から、定義が2つある領域の誤りは、停止ではなく、もっともらしい答えとして返り始めます。つなぐ順番は、言葉、相手、段階、道具です。先の3段は道具を買わずに進められ、費用がかかる最後の1段は前の3段が終わっていれば短く済みます。つなぐ前に、言葉を決める人、見せる粒度、食い違ったときに決める人の3つだけを置きます。そして、つながないものも決めておきます。人事評価の元になる記録と、交渉中の判断は分けたままにする。次の一手は、全社の計画を書くことではありません。部門をまたぐ語を3つ選び、同じ文面で4部門に「その語は、どの操作をした瞬間に確定しますか」と聞いてみる。返ってきた答えが割れた語が、いま社内で決まっていない語です。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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