テックタッチで顧客対応を3層に分ける|手をかける先を絞る

「既存顧客の担当を増やしたいのですが、人数の稟議が通りません」「解約が出るたびに、あの会社にはもっと手をかけるべきだったと言われます」——契約社数が三桁に乗ったあたりから、この2つは決まって同時に届きます。ただ、片方を解いても、もう片方は残ります。手が足りないのは、人数の問題ではありません。本当は、限られた手をどの顧客に配るかの決め方が社内に無いことが原因です。この記事では、既存顧客を手のかけ方で3層に分ける考え方と、法人商材で層を切るときに契約金額だけを見てはいけない理由、層ごとの打ち手の書き分け方、そして生成AIに任せてよい範囲までを整理します。
カメ先生テックタッチというと、人手を減らすための仕組みだと思われがちなんだ。でも実際にやっているのは、減らす作業ではなく、手をかける先を選び直す作業のほうだね。
カメ子減らすのではなく、寄せるということですか。
カメ先生寄せ先を先に用意する話だね。仕組みで回せる層を作ると、そのぶんの時間が空く。空いた時間を、いま危ない顧客に回せる。人数は変わらないのに、手当ての厚さだけが変わるんだよ。
カメ子3層に分けること自体が目的ではなく、配り直すための下ごしらえなのですね。
- 3層に分けるのは人手を減らすためではない。手をかける先を選び直し、空いた時間を危ない顧客へ回すための下ごしらえ
- 契約金額だけで層を切ると、法人商材では伸びている小口と止まりかけの大口が逆転する。金額は向きではなく重みとして扱う
- 層を決めるのは人。AIに任せるのは材料集めと、仕組みだけで回す層に配る案内文の下書きまで
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「担当が足りない」の正体は、人手の不足ではなく配り方
既存顧客の担当が足りないという相談は、たいてい人数の話として持ち込まれます。契約社数が増えた、けれど担当は増えていない、だから手が回らない。数字だけを見ればその通りなのですが、増員が通ったあとで同じ状態に戻る会社が少なくありません。理由ははっきりしていて、増えた人手も、これまでと同じ配り方で配られるからです。声の大きい顧客と、直近で困りごとを言ってきた顧客に、順番に手が向いていきます。
この配り方には2つの穴があります。1つは、黙っている顧客が視野から消えることです。法人向けの商材では、使わなくなった顧客ほど連絡が減ります。困っていないから静かなのか、諦めたから静かなのかは、連絡の有無だけからは区別できません。もう1つは、手をかけた効果が測られないことです。丁寧に対応した相手が継続したのか、放っておいても継続したのかを切り分けないまま、丁寧さの記録だけが積み上がっていきます。
配り方を決めないまま人を増やすと、増えたぶんだけ配り方の粗さも増えます。先に決めるべきなのは人数ではなく、どの顧客にどれだけの手をかけるかの基準です。基準を文章にしておけば、担当者が交代しても配り方は変わりません。手のかけ方で3層に分けるという考え方は、この基準を作るための道具として使われます。
3層に分けるとは、手のかけ方を3段階に決めておくこと
用語から整理します。既存顧客への関わり方を、手をかける度合いで上から3段階に分けるのが、この考え方の骨組みです。いちばん上がハイタッチで、担当者が特定の顧客に個別に付き、打ち合わせも個別に持ちます。真ん中がロータッチで、似た状況の顧客を何社かまとめて見ます。導入の説明会を合同で開いたり、同じ時期に契約した会社へ同じ案内を同じ順番で送ったりする形です。いちばん下がテックタッチで、人が個別に動かず、仕組みだけで回します。
一般的な解説では、この3層を期待できるLTVの大きさで切ると説明されます。LTVが大きい順にハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを当て、いちばん数が多く1社あたりの収益が小さい層をテックタッチが受け持つ、という並びです。テックタッチの具体としては、画面上の操作案内、自分で調べられる形のヘルプ、チュートリアル、段階を追って届く案内メール、ウェビナー、チャットでの自動応答、FAQ、動画といったものが挙げられています。
ここで押さえておきたいのは、3層が顧客の格付けではないことです。下の層に置かれた顧客は、放置してよい顧客ではありません。仕組みで受けるという意味であって、受け取る中身が薄くてよいという意味ではない。むしろ、人が付かずに最後まで走り切れる形を作るほうが、個別対応より設計の手間はかかります。ここを取り違えると、テックタッチが「手を抜く層」の言い換えになり、その層から静かに解約が出ます。
なぜ3つなのか。2つでは真ん中が消え、5つでは運用が止まる
層の数が3つでなければならない決まりはありません。実際、この3つに顧客どうしが助け合う場を加え、コミュニティタッチを含めた4分類として整理する解説もあります。それでも実務では3つに落ち着くことが多く、その理由は数の多さそのものではなく、層ごとに用意しなければならないものの量にあります。
2層にすると、真ん中が消えます。個別に付くか、仕組みだけで回すかの二択になると、その中間にいる大量の顧客がどちらかへ無理やり寄せられる。上に寄せれば担当が足りなくなり、下に寄せれば取りこぼす。法人向けの商材では、この中間がいちばん厚い層になることが多いので、2層では現実に合いません。
逆に5つ以上に分けると、層ごとの打ち手を書き分けるところで力尽きます。層を作るというのは、その層専用の打ち手と、担当と、見る指標を用意することです。5つ用意すれば、5通りの運用を並行して回すことになります。層の数は、書き分けられる打ち手の数までしか増やせません。3つを回せるようになってから4つ目を足す、という順番のほうが安全です。
契約金額だけで層を切ると、法人商材では順番が入れ替わる
ここがこの記事でいちばん伝えたい点です。定型の説明どおりに契約金額やLTVの大きさだけで層を切ると、法人商材では実態と食い違います。利用が伸びている小口と、止まりかけの大口が、手当ての優先順で逆転するからです。金額の順に並べると、止まりかけの大口はいつまでも上の層に居続け、伸びている小口はいつまでも下の層に置かれます。
止まりかけの大口に個別の担当が付いていること自体は、間違いではありません。問題は、付いている担当が何を見ているかです。金額で層を決めた組織では、担当の運用は「大事な顧客だから定期的に会う」に落ちます。会ってはいるのに、使われていないという事実が議題に上がらない。更新の直前になって、初めて危ないと分かる。層の付け方が、担当が何を報告するかまで決めてしまいます。
一方で、伸びている小口は仕組みからの案内しか受け取れません。使う範囲を広げたいと思っても相談先が見当たらず、そのまま他社の道具と並行して試し始めます。契約金額は過去の結果であって、これからどう動くかを示す数字ではありません。層を切る材料として金額だけを使うのは、過去だけを見て手を配ることと同じです。
金額の代わりに何を見るか。層を切る5つの材料
では何で切るか。実務で扱いやすいのは、次の5つを組み合わせる形です。継続の見込みを複合的な点数にするヘルススコアという考え方もあり、一般的な解説でも、ログインの頻度、機能の利用率、問い合わせの件数、契約金額などを合わせて算出すると説明されています。契約金額を捨てるのではなく、材料の1つに降ろすのが要点です。
| 層を切るときに見る材料 | その材料から分かること | 取り方の目安 |
|---|---|---|
| 利用の伸び | これから増えるのか、細っているのか。金額では見えない向きが出る | 直近3か月と、その前の3か月の利用量を比べる。登録人数ではなく、実際に使われた回数で見る |
| 使われ方の広がり | 1つの部署で止まっているか、他部署へ渡っているか | 使っている部署の数と、管理する人以外の利用者の割合を数える |
| 社内の推進体制 | 担当者が1人で抱えているか、旗を振る責任者がいるか | 打ち合わせに出てくる顔ぶれとその所属を、毎回1行で記録に残す |
| 更新までの距離 | 手当ての締切がいつ来るか。動ける時間が残っているか | 更新日から逆算し、6か月前と3か月前に印を付けておく |
| 契約金額 | 外したときの痛みの大きさ。優先の順位ではなく、失敗の重さ | 上の4つを見たあとに、重みとして掛け合わせる |
上の4つが向きを示す材料で、5つ目の金額は重みです。向きで層を決め、金額で優先順を微調整するという順番にすると、伸びている小口が下の層に埋もれる事故が減ります。逆にしてはいけません。金額で層を決めてから向きを見ると、向きは報告書の中の一行になり、層のほうは動かないままになります。
材料は増やしすぎないことです。5つでも多いと感じるなら、利用の伸びと更新までの距離の2つから始めても構いません。材料の数より、毎月同じ材料で同じように見直されることのほうが効きます。材料が10個あって年に1回しか見ない表より、2個で毎月見る表のほうが、層の付け替えは正確になります。
層の境目を引く手順。基準より先に、上の層の枠を決める
材料が決まったら、境目を引きます。順番を間違えると、上の層が担当できる数を超えて膨らむので、次の5工程で進めます。工程の重さは均等ではなく、3つ目と4つ目に判断が集中します。
既存顧客のうちどこまでを対象にするかと、層を見直す周期を最初に決める。周期を決めずに作った分け方は、一度作られたきり更新されない
顧客ごとに、利用の伸び・広がり・推進体制・更新までの距離・契約金額を横に並べる。この時点では層を付けず、材料だけを埋める
上の層に入れられる社数を、担当者の人数と1人あたりの上限から先に決める。点数の基準から決めると、上の層が担当できる数を超える
枠の境目にあたる数社は、表の点数だけで切らず、記録の中身を人が読む。ここを機械的に切ると、翌月に戻す往復が起きる
層を作るとは打ち手を用意すること。打ち手・担当・見る指標の3つが書けない層は、まだ作らない
この5工程で重いのは3つ目です。多くの会社は「点数が何点以上ならハイタッチ」という基準から入りますが、その順番だと上の層に入る社数が担当できる数を必ず超えます。先に決めるのは基準ではなく、上の層に入れられる社数の上限です。上限を決めてから、その枠に入る顧客を選ぶ。枠に入らなかった顧客のうち危ないものは、期間を区切った臨時の手当てで拾います。
4つ目も飛ばされがちです。境目の前後にいる顧客は、材料の1つが少し動くだけで層が変わる位置にいます。ここを機械的に切ると、担当が付くはずだった顧客が仕組みだけの層に落ち、翌月には戻され、という往復が起きます。境目の数社は人が中身を読む、と決めておくだけで、この往復はほとんど消えます。
1人が何社まで見られるか。数字の目安を先に置いておく
枠を決めるには、1人が何社まで見られるかの目安が要ります。公開されている事例では、ハイタッチを担当する1人あたり20社から30社、ロータッチでは200社程度という数字が示されています。また2022年の調査として、1人が16社から50社を担当する割合が39.8パーセントで最も多く、1社から15社が23.5パーセントという分布も紹介されています。
この数字をそのまま自社に当てはめることはできません。商材の複雑さと、顧客側の体制によって必要な手数が変わるからです。ただ、置いておく価値はあります。担当1人あたりの社数を書かないまま層を作ると、上の層は必ず膨らみます。膨らんだ結果、ハイタッチという名前が付いているのに実態はロータッチという状態になり、名前と中身が食い違ったまま報告だけが続きます。
自社の目安を出すなら、いま最も手をかけている顧客1社に月に何時間使っているかを記録するところから始めます。打ち合わせ、資料の準備、社内での相談、問い合わせへの返答を全部足す。その合計で、1人が既存顧客に使える時間を割れば上限が出ます。記録を取る前に人数を議論しても、議論は感覚のぶつけ合いで終わります。1か月ぶんの記録があるだけで、稟議の中身が変わります。
3層の打ち手を、同じ項目で並べて書き分ける
層を作るというのは、層ごとの打ち手を書き分けることでした。書き分けるときは、層ごとにばらばらの項目で書かず、同じ項目で横に並べます。並べると、抜けている層と、上下で内容が重なっている打ち手が見えます。特に重なりは、上の層の担当が下の層と同じことを手作業でやっている、という形で出てきます。
| 書き分ける項目 | ハイタッチ | ロータッチ | テックタッチ |
|---|---|---|---|
| 関わり方 | 担当者が個別に付き、相手の事情に合わせて動く | 似た状況の数社をまとめ、決めた型に沿って動く | 人は個別に動かず、仕組みのほうが動く |
| 主な打ち手 | 個別の打ち合わせ、導入計画の作成、決裁層への報告 | 合同の説明会、時期をそろえた案内、少人数の相談会 | 画面上の操作案内、段階を追った案内メール、FAQ、動画、チャットでの自動応答 |
| 見る指標 | 更新の可否と、利用範囲を広げる話の進み具合 | 同じ型を当てた集団の、立ち上がりの早さのばらつき | 案内が開かれた割合と、開いたあとに操作が進んだ割合 |
| 手を入れる頻度 | 顧客ごとに月1回以上 | 四半期に1回、集団の単位で | 仕組みの中身を四半期に1回見直す |
| この層で起きやすい失敗 | 会ってはいるが、使われていない事実が議題に上がらない | 型を作ったまま更新せず、内容が実態から離れる | 届いているかを確かめず、送った回数だけを数える |
表の3行目を見てください。テックタッチの層でよく置かれる指標は「案内を何通送ったか」ですが、これは打ち手の量であって結果ではありません。見るべきなのは、案内が開かれた割合と、開いたあとに実際の操作が進んだ割合の2つです。送った数だけを数えていると、届いていない状態が数字の上では順調に見えます。
4行目の頻度も、決めておかないと崩れます。特に真ん中のロータッチは、担当が個別に動かないぶん、忙しくなると真っ先に後回しになります。四半期に1回、この集団に何をするかを決める日を先に押さえておく。押さえていないロータッチは、半年もすれば実態としてテックタッチに吸収され、層の表だけが残ります。
テックタッチの仕組みは、道具を揃えることではなく通り道を作ること
テックタッチの手法としてよく挙がるのは、チュートリアル、案内メール、ウェビナー、チャットでの自動応答、FAQ、動画、そして画面の中に出る操作の案内です。並べると道具の一覧に見えますが、道具を揃えることが目的ではありません。顧客が自分だけで最初の成果まで到達できる通り道を1本作ることが目的です。
通り道を作るというのは、順番を決めることです。契約から最初の成果までに顧客が通る場面を並べ、それぞれの場面で詰まったときに、次の一手がその場に置かれている状態にする。詰まった場所から離れたところに解説記事があっても読まれません。順番のない案内は、量が増えるほど探す手間が増え、結局は問い合わせに戻ります。
始め方については、一般的な解説でも小さく始めて効果を測ることが勧められています。全ての場面を一度に仕組みにしようとすると、作っている間に商材のほうが変わります。最初は、問い合わせが最も多い1場面だけを仕組みにする。その1場面で問い合わせが減ったかを確かめてから、次の場面に進む。順序を守るだけで、作ったまま使われない資料が減ります。
テックタッチを入れるときに、やりがちな失敗
導入で外す型は、だいたい決まっています。共通しているのは、顧客の側から見た必要ではなく、社内の都合から作り始めていることです。作る前に一度読んでおくと、後から作り直す手間が減ります。
- 仕組みを入れること自体を目的にする。どの手間を減らすためかを書かないまま道具を選ぶと、道具が増えて管理の手間も増える
- 人が対応していた内容を、そのまま文章に起こして置く。相手の状況を見て言い換えていた部分が抜け落ち、読んでも先へ進めない案内になる
- 案内を送る前に、人が同じ内容を口頭で説明して通じるかを確かめない。人が話して通じない説明は、仕組みにしても通じない
- 届いたかどうかを確かめず、送った回数を成果として報告する。送信数は増え続けるのに、利用のほうは動かない
- 下の層に落とした顧客の記録を止める。落とした瞬間から状態が見えなくなり、解約の兆しに気づけなくなる
- 全ての層に同じ案内を一斉に送る。上の層の顧客が、担当から聞いた話と食い違う内容を受け取ることになる
5つ目は特に見落とされます。テックタッチ層に移した顧客を、そのまま観測の対象からも外してしまう会社は珍しくありません。層を下げるというのは、人が個別に動かなくなるという意味であって、状態を見なくてよいという意味ではない。下の層こそ、仕組みが記録している数字だけが唯一の手がかりになります。
6つ目は、組織が縦割りのときに起きます。一斉に案内を送る部署と、個別に付く担当が別の部署にいると、同じ顧客に別々の話が届きます。層ごとに送る内容を分けるだけでなく、上の層に送る前に担当へ内容を回すという手順を1つ挟むだけで防げます。手順を挟む相手は、部署ではなく担当者の名前で決めておきます。
層は固定しない。上げる規則と下げる規則を同時に書く
一度分けた層をそのままにしておくと、半年で実態から離れます。顧客の側の事情が動くからです。担当者が異動する、使う部署が増える、予算の出どころが変わる。どれも層を動かすべき変化ですが、規則が無ければ誰も動かしません。動かさないまま、去年の分け方で今年の手を配ることになります。
規則は2種類に分けて書きます。1つは定期の見直しで、四半期に1回、材料の表を作り直して境目を引き直す。もう1つは臨時の引き上げで、これは条件の形で書きます。「利用が2か月続けて前の期間を下回り、かつ更新まで6か月以内なら、期間を区切って人が付く」といった書き方です。引き上げの条件だけでなく、引き下げの条件も同時に書くこと。引き上げだけを決めると、上の層は増える一方になります。
臨時の引き上げには、必ず期限を付けます。期限のない引き上げは、そのまま恒久的な担当付きに変わります。3か月なら3か月と決め、期限が来たら元の層に戻すか、正式に上げるかを判断する。期限と、期限が来たときに誰が判断するかを、引き上げる時点で書いておきます。この2つを書かない引き上げは、半年後には誰も理由を説明できなくなります。
AIの使いどころは、どの層に落とすかの材料集め
ここまでの工程で、人手がかかるのに判断を伴わない作業が2か所あります。1つは材料集めです。顧客ごとに、利用の記録、問い合わせの履歴、打ち合わせの議事、契約の情報がばらばらの場所に散っていて、それを1つの表に集める。量は多いのに、集める作業そのものには判断が要りません。ここは機械に向いています。
- 材料の欄を埋めさせる:顧客ごとの記録を渡し、決めた材料の項目ごとに要約させる。数字はもとの記録の値をそのまま書かせ、足りない期間を推測で補わせない
- 動いた顧客だけを拾わせる:前回の層分けの表と今回の表を渡し、材料が大きく動いた顧客だけを抜き出させる。全件を人が見比べる必要がなくなる
- 根拠の場所を書かせる:要約した項目ごとに、もとの記録のどこを見たかを併記させる。併記できない項目には、確かめられていない印を付ける
3つ目が要点です。根拠の場所を書かせないと、要約は確かめようがなくなります。確かめられない材料で層を決めると、決めた理由を後から誰にも説明できません。要約と一緒に、その要約の出どころを書かせる。書けなかった項目は空欄のまま残し、人が埋めるか、材料から外します。
2つ目の使い方には、副産物があります。動いた顧客だけを抜き出させると、動いた理由の見当が付きやすくなります。同じ月に同じ方向へ動いた顧客が何社かまとまって出てきたら、それは個別の事情ではなく、こちら側の何かが原因です。仕様の変更、案内の止まり、担当の交代。層の付け替えの作業が、そのまま自社の変化の検知にもなります。
案内文の下書きまでは任せてよい。層を決めるのは人
もう1か所、任せてよいのは、仕組みだけで回す層に配る案内文の下書きです。同じ内容を、場面ごと・詰まり方ごとに言い換えて書く作業は量が多く、しかも一度書けば形が固まります。下書きを出させて、人が事実関係と言い回しを直す形にすると、作る速さが変わります。文章の質より、場面の数を揃えられることのほうが効きます。
ただし条件を2つ付けます。1つは、仕様や画面の名前を推測で書かせないこと。もっともらしい説明を作れてしまうため、実際の画面と食い違う案内が出ます。もとになる手順書を渡し、そこに書かれていない内容は書かせない。もう1つは、送る前に人が1通ずつ読むことです。案内文は顧客に直接届く文章なので、確認を省いた瞬間に信用の問題に変わります。
そして、層そのものを決めさせてはいけません。理由は能力ではなく、判断の性質にあります。層分けは「この顧客に社内の限られた時間を配るかどうか」の決定であり、外したときに責任を負うのは人です。材料を集めるのは機械、境目を引くのは人、という線をはっきり引く。境目を引いた理由は1行で記録に残し、次の見直しのときに、その判断が当たっていたかを確かめます。
効かない場面は、顧客数が数十社しかないとき
この考え方が効かない場面もはっきりしています。いちばん分かりやすいのは、既存顧客が数十社しかないときです。全社にハイタッチで対応できる規模なら、層に分ける作業そのものが余計な手間になります。分けたところで下の層に落ちる顧客が数社しかなく、その数社のために仕組みを作る費用が見合いません。
目安として、3層に分ける価値が出るのは、担当できる社数の上限を明らかに超えたときです。担当が5人いて1人30社なら150社。150社を超えたあたりから、下の層を作る意味が出てきます。それ以前の段階でやるべきなのは、層を作ることではなく、いま手をかけている内容を記録して、型にできる部分を見つけることです。型が無いうちに層だけ作ると、下の層に配るものが何も無い状態になります。
もう1つ効かないのは、商材が顧客ごとに大きく違う場合です。個別に作り込む要素が大きいと、仕組みで回せる部分がほとんど残りません。この場合は層で分けるのではなく、工程で分けます。どの顧客にも共通する工程だけを仕組みにし、顧客ごとに違う工程は人が持つ。層ではなく工程で切るほうが、実態に合います。
法人商材で使うときに、教科書と変わるところ
一般的な解説は、使う人と契約する人が近い商材を念頭に書かれていることが多く、法人向けでそのまま使うと噛み合わない点が3つあります。1つ目は、契約している人と使う人が別だということです。契約したのは情報システム部門なのに、使うのは事業部門という構図では、仕組みで配る案内が使う人まで届きません。案内の宛先を、契約の窓口ではなく利用の記録がある人に向ける設計が要ります。
2つ目は、決める人が複数いることです。更新の可否は、使っている部署の評価だけでは決まりません。予算を握る部門と、他の道具との兼ね合いを見る部門が関わります。ハイタッチ層で会うべき相手は、いつも会っている担当者ではなく、更新の議論に出る人です。会う相手を層と一緒に決めておかないと、丁寧に対応した相手が決定に関わっていなかった、という結果になります。
3つ目は、件数が少ないことです。法人向けでは、テックタッチ層といっても数百社の規模にとどまることが多く、案内の効果を割合で測ると数字が日ごとに大きく振れます。件数が少ない層では、割合ではなく実数と、動いた顧客の名前で見る。割合で報告すると、1社の動きが数パーセントの変動として現れ、判断を誤らせます。
- 契約の窓口と、実際に使っている人の連絡先を別々に持つ。仕組みで配る案内は後者に送る
- 更新の議論に出る人の名前を、層とは別に顧客ごとに記録する。担当者しか知らない状態を残さない
- 層ごとの成果は、既存顧客からの収益がどれだけ維持され広がったかを表すNRRのような割合と、実数の両方で見る。件数が少ない層では実数を先に見る
- 顧客側の担当者が交代したら、金額が動いていなくても層の見直し対象に入れる。法人商材で最も多い解約の入口はここにある
よくある質問
層はどのくらいの頻度で見直すべきですか
定期の見直しは四半期に1回が扱いやすい周期です。月ごとだと材料が揃う前に見直しが来て、判断が前月と同じになります。半年に1回だと、更新の3か月前という手当ての締切に間に合わない顧客が出ます。ただし、臨時の引き上げは条件を満たした時点で随時行います。定期と臨時を分けて書いておくのが要点で、片方しか無い運用は必ずどちらかの穴が開きます。
顧客に層のことを伝えてよいのですか
層の名前や順位をそのまま伝える必要はありません。伝えるべきなのは、その顧客が受け取れる支援の中身です。「定例の打ち合わせを月に1回持つ」「導入時の説明会は合同で行う」といった形で、提供する内容として説明します。順位として伝えると、下の層に置かれた顧客の側に不満だけが残り、支援の中身が伝わりません。
テックタッチ層から解約が出たら、層の分け方が間違っていたのですか
必ずしもそうとは限りません。確かめるべきなのは、解約した顧客の材料が事前に動いていたかどうかです。動いていたのに気づけなかったのなら、見る仕組みの問題です。材料が全く動かないまま解約したのなら、材料の選び方の問題です。前者は監視の頻度を上げ、後者は材料の項目を1つ足す。原因が違えば、直す場所も違います。
上の層に置いた顧客が増えすぎたときは、どうしますか
基準を厳しくするのではなく、担当できる社数の上限から逆算して枠を決め直します。基準を厳しくすると、境目にいる顧客が毎回の見直しで上下し、担当の付け外しが繰り返されます。枠を決めてから、枠に入らなかった顧客のうち更新が近いものを、期間を区切った臨時の手当てで拾う。この形にすると、上限を超えません。
生成AIに層を提案させてはいけないのですか
候補を並べさせるところまでは有効です。材料の表を渡し、どの顧客が上の層の候補になりそうかを理由付きで挙げさせる。そこから先、実際に枠へ入れるかどうかは人が決めます。挙がった理由を読み、事実と食い違う部分を直す作業が必ず入るためです。決定まで任せると、その判断を後から検証できなくなり、外したときに直す場所も分からなくなります。
まとめ
既存顧客の担当が足りないという状態は、人数だけでは解けません。増えた人手も、配り方が変わらなければ同じ順番で配られるからです。手のかけ方で3層に分けるというのは、人手を減らすための工夫ではなく、限られた時間を配り直すための基準を作る作業でした。個別に付く層、まとめて見る層、仕組みだけで回す層。この3つを、打ち手と担当と指標まで書き分けたところで、初めて層になります。
切り方でいちばん注意すべきなのは、契約金額だけを見ないことです。法人商材では、伸びている小口と止まりかけの大口が優先順で逆転します。利用の伸び、使われ方の広がり、社内の推進体制、更新までの距離で向きを決め、金額は外したときの痛みの重みとして最後に掛ける。境目は基準からではなく、担当できる社数の枠から引き、境目の前後にいる数社は人が中身を読む。層は固定せず、上げる規則と下げる規則を同時に書いておきます。
生成AIには、材料を集めて表を埋める作業と、動いた顧客を抜き出す作業と、仕組みだけで回す層に配る案内文の下書きを任せられます。ただし、要約には出どころを併記させ、案内文は送る前に人が読む。そして、どの顧客を上の層に入れるかの判断は人が持ち、その理由を1行で残します。顧客が数十社しかないうちは、層に分けるより、いまの手当てを記録して型を見つけるほうが先です。分けるかどうかの判断から、この作業は始まっています。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
