フリーランス法で外注の書面が変わる|発注前に決める項目

フリーランス法で外注の書面が変わる|発注前に決める項目

「記事や図版を個人のライターやデザイナーに頼んでいるが、契約書は昔の型を使い回している」「見積のやり取りだけで発注して、条件はチャットに散らばったままになっている」——制作を外に出しているマーケ部門で、この二つはたいてい同時に起きています。フリーランス・事業者間取引適正化等法は令和6年11月1日に施行され、発注する側に、これまで慣習で済ませていた部分を書いて渡すことを求めています。これは契約書を1枚差し替えれば終わる話ではありません。本当は、発注のどの時点で何を確定させるかという、進め方そのものの決まりです。この記事では、発注前に決めておく項目を、法律が求める順に並べて見ていきます。


カメ先生カメ先生

フリーランス法というと、支払を遅らせるなという決まりだと思われがちなんだけど、実際にいちばん引っかかるのは発注の入口なんだ。


カメ子カメ子

入口というのは、条件を書いて渡すところですか。


カメ先生カメ先生

そう。委託したら直ちに、取引の条件を書面か電磁的方法で明示する。ここが口頭のままだと、あとの義務が全部あいまいになる。


カメ子カメ子

支払の話にたどり着く前に、決めておくことがあるわけですか。


この記事のポイント
  • 業務委託をしたら直ちに、8つの項目を書面か電磁的方法で明示する(第3条)
  • 報酬は、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める(第4条)
  • 1か月以上・6か月以上という期間の区切りで、かかる決まりが段階的に増える

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目次

この決まりは誰と誰の取引に効くのか

正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、令和5年法律第25号として公布され、令和6年11月1日に施行されました。取引の適正化に関する規定は主に公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備に関する規定は主に厚生労働省が執行を担うという分担になっています。まず確かめるのは、自社の取引がこの法律の対象かどうかです。

受け手の側は「特定受託事業者」と呼ばれます。業務委託の相手方である事業者のうち、個人であって従業員を使用しないもの、または法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの、のいずれかです。ここでいう従業員を使用するとは、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことを指します。会社に勤めながら副業として受けている個人も、事業者として受けているなら対象に入ります

区分あてはまる相手かかる主な決まり
特定受託事業者個人で従業員を使用しない/代表者だけの法人この法律で守られる側
業務委託事業者フリーランスに業務委託をする事業者すべて取引条件の明示(第3条)
特定業務委託事業者従業員を使用する個人/役員が2人以上または従業員を使用する法人第3条に加えて第4条・第5条・第12条・第14条など

対象は事業者から事業者への委託です。消費者との取引は入りません。逆に、フリーランスからフリーランスへの委託も対象になります。なお、形式的には業務委託契約でも、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合は労働関係の法令が適用され、この法律は適用されません。契約書の題名ではなく、実際の働き方で判断される点は押さえておいてください。

対象になる業務委託の範囲

この法律の対象になる業務委託は、事業者がその事業のために他の事業者に、給付に係る仕様や内容等を指定して、物品の製造、情報成果物の作成、または役務の提供を委託することを指します。業種や業界の限定はありません。マーケ部門が出す発注は、ほとんどが情報成果物の作成委託か役務の提供委託に入ります。

情報成果物には、顧客管理の仕組みなどのプログラム、映像や音声から構成されるもの、そして設計図や各種デザイン、文字・図形・記号から構成されるものが含まれます。記事の原稿、図版、撮影した動画、サイトの画面設計、資料のデザイン——いずれもここに入ります。役務の提供委託は、運送やコンサルタント、営業といったものが例に挙げられており、自社が自ら用いる役務を委託する場合も対象になる点が特徴です。

下請取引の側の決まりとは対象範囲が違います。たとえば建設工事は下請取引側の対象外ですが、この法律は業種の限定がないため対象になります。下請取引の決まりの側で対象外だったから安心、という読み替えはできません。両方の決まりが並んで動いていると考え、相手が特定受託事業者にあたるかを取引ごとに確かめるほうが確実です。

発注したら直ちに渡す8つの項目

第3条は、フリーランスに業務委託をした場合、直ちに、取引の条件を書面または電磁的方法により明示しなければならないと定めています。明示すべき事項は次のとおりです。うち2つは、該当する取引のときだけ必要になります。

  1. 業務委託事業者および特定受託事業者の名称(互いを識別できるもの)
  2. 業務委託をした日(委託することを合意した日)
  3. 特定受託事業者の給付の内容(品目・数量・規格・仕様などを明確に)
  4. 給付を受領し、または役務の提供を受ける期日
  5. 給付を受領し、または役務の提供を受ける場所
  6. 検査をする場合は、検査を完了する期日
  7. 報酬の額および支払期日
  8. 金銭以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること

3番目の給付の内容には注意点があります。フリーランスに知的財産権が発生する場合で、業務委託の目的である使用の範囲を超えて知的財産権を譲渡・許諾させるときは、譲渡・許諾の範囲も明確に記載する必要があります。さらに、譲渡・許諾があるなら、その対価を報酬に加える必要があるとされています。「権利は当社に帰属」と一行書いておしまい、という書き方が通らなくなったのはこの部分です。

7番目の報酬の額についても、具体的な額を書くのが難しい場合は算定方法による記載でもよいとされる一方、支払期日は具体的な日を特定する必要があります。また、業務に必要な諸経費を発注側が負担する場合は、諸経費を含めた総額が把握できるように明示するとされています。取材の交通費や素材の購入費を後から精算する運用なら、その扱いも書いておくことになります。

書面か電磁的方法か、どちらを選ぶか

明示の方法は書面か電磁的方法のどちらでもよく、どちらにするかは発注する側が選べます。電磁的方法には、電子メール、交流サービスのメッセージ機能、チャットツール、受信データの記録機能を持つ機器へのファクス、記録媒体の受け渡しなどが含まれます。取引のたびに紙の注文書を出す必要はありません。

ただし条件があります。電磁的方法で明示した場合であっても、フリーランスから書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付しなければなりません。フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合は例外とされ、たとえばフリーランス自身の求めに応じて電磁的方法で明示した場合や、既に書面を交付している場合が挙げられています。

  • チャットに条件が散らばると、あとで何を明示したのか自分たちも追えなくなる
  • 発注1件につき1通にまとめ、後から送った変更は同じ場所に追記する運用にする
  • メッセージの保存期間が短い経路を使うなら、控えを別に残しておく
  • 口頭の追加依頼をそのまま進めず、必ず同じ経路に一行足してから着手してもらう

実務でいちばん効くのは、経路をひとつに決めることです。見積は電子メール、修正の依頼はチャット、公開日の変更は打ち合わせの口頭、という状態だと、明示したかどうかを社内の誰も判定できません。経路を決めるだけで、この法律への対応の半分は終わります。

報酬は受領した日から60日以内

第4条は、発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その日までに報酬を支払わなければならないと定めています。検査をするかどうかは関係ありません。起算日は、情報成果物の作成委託であれば、記録媒体を受け取って自己の占有下に置いた日、または回線を通じて発注側の計算機内に記録されたときです。原稿がメールで届いた時点が起算日になる、と考えておくと外れません。

支払期日を定めなかったときは、実際に給付を受領した日が支払期日になります。60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して60日を経過する日が支払期日になります。決めていなければ即日払い、長すぎれば自動的に60日目に切り詰められる、という仕組みです。

書き方にも決まりがあります。月単位の締切制度は認められており、毎月何日締切・翌月何日支払という定め方ができます。ただし月初に受領した分も60日以内に収まる必要があるため、毎月末日締切にするなら翌月末日までに支払期日を設定することになります。一方、「何月何日まで」や「何日以内」という書き方は、支払期日を定めたことになりません。具体的な日を特定できないためです。

支払日が金融機関の休業日にあたる場合は、順延する期間が2日以内で、翌営業日に順延することをあらかじめ書面か電磁的方法で合意しているときは、結果として60日を超えても問題としないとされています。あらかじめ合意しておく、という部分が要件です。

再委託のときにだけ使える例外

元委託者から受けた業務の全部または一部をフリーランスに再委託する場合には、支払期日の例外があります。通常明示すべき事項に加えて次の3つを明示した場合に限り、フリーランスへの報酬の支払期日を、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができます。制作会社や代理店を通さず、自社が元請から受けた仕事を個人に回す場面で使う余地があります。

  1. 再委託である旨
  2. 元委託者の名称(識別できるもの)
  3. 元委託業務の対価の支払期日

この例外は、再委託なら必ず適用されるものでも、適用しなければならないものでもありません。使う必要がある場合にだけ、3項目を足して明示します。起算日は実際に支払われた日ではなく、元委託者との間で定められた支払の予定期日です。そのため、元委託者から予定より早く支払われても早める義務はない一方、元委託者からの入金が遅れてもフリーランスへの支払を遅らせることはできません

加えて、この例外を使ったうえで元委託者から前払金の支払を受けたときは、フリーランスが資材の調達など業務の着手に必要な費用を前払金として受け取れるよう、適切な配慮をする必要があるとされています。撮影やイベントのように、着手時点で相手だけが費用を出す形の仕事では、ここを飛ばすと相手の資金繰りを直撃します。

1か月以上の委託で効いてくる7つの禁止行為

第5条は、フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者に対して、7つの禁止行為を定めています。1か月という期間は政令で定められたものです。押さえておきたいのは、フリーランスの了解を得ていても、合意していても、違法性の意識がなくても違反になるという点です。7つは次のとおりです。

禁止行為何を禁じているか
受領拒否相手に責任がないのに、委託した物品や情報成果物の受取を拒むこと
報酬の減額相手に責任がないのに、委託時に定めた報酬を後から減らして支払うこと
返品相手に責任がないのに、受領した物品や情報成果物を後から引き取らせること
買いたたき通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
購入・利用強制正当な理由がないのに、指定する物や役務を強制して購入・利用させること
不当な経済上の利益の提供要請自己のために金銭や役務などを提供させ、相手の利益を不当に害すること
不当な給付内容の変更・やり直し相手に責任がないのに、費用を負担せず内容を変えさせたりやり直させたりすること

買いたたきに当たるかどうかは、4つの要素を勘案して総合的に判断されるとされています。報酬の額の決定にあたって十分な協議が行われたかという決定方法、差別的であるかどうかといった決定内容、通常支払われる対価との乖離の状況、そして必要な原材料等の価格動向です。相場より安いこと自体ではなく、決め方に協議がなかったことが問われる点が実務では重要になります。

マーケの現場で崩れやすい3つの場所

条文を読むと当たり前に見えますが、制作の発注では別の顔をして現れます。実際に崩れるのは、悪意のある減額ではなく、日常の段取りの中です。とくに次の3つは、どの会社でも起きています。

  • 口頭やチャットでの追加依頼:構成の差し替えや素材の追加を、報酬を変えないまま頼む。費用を負担しない内容の変更にあたるおそれがある
  • 公開日の後ろ倒し:社内の都合で公開が延び、あらかじめ定めた期日に受け取らない。受領拒否にあたるおそれがある
  • 修正回数を決めないまま進める:受領後に上長の指摘で何度も直させ、追加の費用を払わない。やり直しにあたるおそれがある
  • 企画がなくなったのに何も払わない:着手後に中止し、相手が準備に使った費用を負担しない

公表されている違反となる例には、取引先の意向で受領後の台本を大幅に修正させ、修正作業に伴う追加の費用を支払わなかった事例や、イベントが中止になったことを理由に委託を取り消し、相手が準備のために支出した費用を負担しなかった事例が挙げられています。いずれも発注側に悪意はなく、社内の事情がそのまま外に流れただけという点が共通しています。

対策は簡単で、社内の事情が動いたときに、相手への連絡を後回しにしないことです。公開日が動きそうな段階で相手に伝え、受領の期日を合意し直す。追加が出そうな段階で範囲と費用を決める。社内で決まってから伝えるのではなく、動きそうな段階で伝えるだけで、この3つはほぼ避けられます。

やり直しは着手前に回数と範囲を決める

修正は制作の一部であり、すべてを禁じられているわけではありません。問題になるのは、相手に責任がないのに費用を負担せずやり直させる場合です。裏を返せば、着手前に回数と範囲を決めて報酬に織り込んでおけば、その範囲の修正は通常の業務の中に収まります。決めていないから、後から線が引けなくなります。

STEP1
修正の単位を先に決める

何をもって1回と数えるかを決めます。構成の段階での差し戻しと、原稿の文言の直しは別に数えるのが実務的です。

STEP2
含む範囲と、含まない範囲を書く

誤字や事実の誤りの訂正は含む、企画の方向転換に伴う書き直しは含まない、といった線を明示の書面に入れます。

STEP3
超えたときの扱いを決める

回数を超えた分の追加費用の算定方法を先に決めます。ここが空欄だと、超えた瞬間に交渉になり、力関係が出ます。

STEP4
検査の基準を書いておく

受領後に基準を厳しくして無償でやり直させた事例が違反となる例に挙げられています。検査をするなら、何を見るかと完了の期日を先に書きます。

この4つを決めておくと、社内の関係部署にも説明しやすくなります。「もう1回だけ直して」が言えなくなるのではなく、追加の費用が出ると分かった上で頼めるようになるだけです。むしろ、無限に直せる前提がなくなることで、社内の確認が前倒しになる効果があります。

募集の情報を正しく出す

第12条は、広告等によりフリーランスを募集する際に、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないと定めています。ここでいう広告等には、新聞や雑誌の広告、文書、ファクス、電子メールやメッセージのやり取り、そして自社のサイトや、仕事を仲介する場に載せる募集も含まれます

誤解を生じさせる表示についての留意点として、報酬額を実際より高く見せない、業務内容と著しく乖離する職種名を使わない、フリーランスの募集と労働者の募集が混同される表示をしない、という点が挙げられています。加えて、氏名または名称、住所、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所、報酬という6つの事項を欠いた表示をしないことも留意点に含まれています。

正確かつ最新に保つ義務の側では、募集を終了したり内容を変更したりしたら速やかに反映すること、いつの時点の募集情報かを明らかにすることが、主な措置の例として挙げられています。募集の頁を出しっぱなしにして何年も直していない、という状態がそのまま論点になります。他の事業者に募集を委託している場合は、変更や終了を反映するよう速やかに依頼する必要があります。

6か月以上の委託で増えること

この法律は、業務委託の期間によってかかる決まりが段階的に増える作りになっています。取引の適正化の側は1か月、就業環境の整備の側は6か月が区切りです。まず、期間にかかわらずかかるのが、募集情報の的確表示(第12条)と、ハラスメント対策に係る体制整備(第14条)です。

第14条は、ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう、相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければならないと定めています。講ずべき措置として、方針の明確化と周知・啓発、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、そして併せて講ずべき措置の4つが挙げられています。従業員向けの相談窓口をフリーランスも使えるようにする形でも構わないとされており、窓口を新設しなくても対応できます。

6か月以上の期間で行う業務委託になると、2つ増えます。ひとつは育児介護等と業務の両立に対する配慮(第13条)で、申出があった場合に、内容の把握、取り得る選択肢の検討、配慮の内容の伝達・実施、または不実施の伝達と理由の説明までを行う義務です。6か月未満の場合は努力義務とされています。もうひとつが中途解除等の事前予告・理由開示(第16条)で、解除日の少なくとも30日前までに予告することが求められます。

契約の更新によって6か月以上継続することになる場合も対象です。更新と認められるには、契約の当事者が同一で給付や役務の内容が一定程度の同一性を有すること、そして前後の業務委託の間の空白期間が1か月未満であることの両方が必要とされています。期間を逃れるために空白期間を1か月と1日だけ空ける、といった行為はしないよう注意書きが添えられています。

生成AIが入ったことで書面に足す項目

下書きや素材の生成にAIを使うことが前提になった今、明示する書面に足しておく項目があります。法律が名指しで求めているわけではありませんが、給付の内容と報酬の額を明確にするという第3条の趣旨に沿って考えると、決めておかないと後で揉める箇所がはっきりします。

足すのは4つです。第一に、下書きの作成に生成AIを使ってよいかどうか。第二に、使った場合に、どの部分で使ったかを分かる形で残してもらうかどうか。第三に、自社が渡した資料や未公開の情報を、外部のサービスに入力してよいかどうか。第四に、生成された部分について、事実関係を誰が確かめるかの分担です。

とくに第四が重要です。AIが作った文章は、それらしく見えても事実として確かめられていない記述が混じります。ここを決めずに納品を受けると、公開後に誤りが見つかったときの責任が宙に浮きます。数字と固有名詞は原典に戻って確かめる、確かめた出どころを一覧で添えてもらう、という2つを条件に入れておくと、分担がはっきりします。AIを使ってよいかどうかより、確かめる工程を誰が持つかのほうが先に決まっている必要があります。

なお、AIを使うと速くなるはずだからという理由だけで報酬を下げる話は、買いたたきの判断要素に照らして危うくなります。決定方法として十分な協議が行われたかが問われるためです。委託先のAI利用そのものの取り決めは別に整理が要りますが、明示の書面の側では、使ってよい範囲と、確かめる責任の所在の2点だけは書いておくのが現実的です。

権利の帰属と、採用しなかった案の扱い

第3条の説明にあるとおり、知的財産権が発生する場合で、業務委託の目的である使用の範囲を超えて譲渡・許諾させるときは、その範囲を明確に記載する必要があります。そして譲渡・許諾があるなら、その対価を報酬に加える必要があるとされています。制作の発注で見落とされやすいのは、目的の範囲を超える使い方のほうです。

記事を自社の媒体に載せるために依頼したなら、それが目的の範囲です。同じ原稿を広告に転用する、資料に組み込んで配る、翌年に他の媒体へ再掲する——こうした使い方をするなら、範囲として先に書いておくことになります。撮影であれば、掲載する場所と期間、切り出して使う可否がここに入ります。

採用しなかった案の扱いも同じ論理です。公表されている違反となる例には、複数の楽曲案の制作を委託し、採用した楽曲の権利を譲渡させる契約としていたところ、採用しなかった楽曲の知的財産権まで無償で譲渡させたという事例が挙げられています。マーケの現場に置き換えれば、複数出してもらったデザイン案のうち不採用のものを、対価を払わずに別の用途で使う形が同じ構図になります。

違反したときに何が起きるか

フリーランスは、違反の疑いがある事実を行政機関に申し出ることができます。申し出たことを理由に取引の数量を減らす、取引を停止するといった不利益な取扱いをすることは、報復措置として禁じられています。行政の側では、報告徴収・立入検査(第11条・第20条)、指導・助言(第22条)、勧告(第8条・第18条)、命令および公表(第9条・第19条)という段階が用意され、命令に従わない場合などの罰金・過料の規定も置かれています。

運用の実績も公表されています。公正取引委員会が令和7年5月に公表した令和6年度の状況によれば、この法律に係る相談が5,018件、違反被疑事実の申出が92件あり、指導は54件でした。施行初年度から、指導の段階まで進んだ事案が現に出ているということです。都道府県労働局の側では、就業環境の整備に関する規定の違反への指導が行われています。

押さえておきたいのは、命令に至らなくても公表という形で影響が出る点です。制作を外に頼む企業にとって、取引条件を書いて渡さない会社だと知られること自体が、良い書き手や作り手を遠ざけます。罰の重さより、募集への応募が減ることのほうが実務では痛みます。

発注前の確認項目一覧

最後に、発注のたびに確かめる項目を並べます。契約書の型を整えるより、この一覧を発注の手順に組み込むほうが確実です。

  • 相手が特定受託事業者にあたるか(従業員を使用していないか)を確かめた
  • 委託した日に、8つの項目を書面か電磁的方法で明示した
  • 給付の内容に、品目・数量・仕様と、権利の譲渡・許諾の範囲を書いた
  • 諸経費を負担するなら、総額が分かる形で報酬の額を書いた
  • 支払期日を具体的な日で書いた(何日以内という書き方をしていない)
  • 受領した日から60日以内に収まっているかを確かめた
  • 修正の回数・範囲・超えたときの扱いを着手前に決めた
  • 検査をするなら、見る項目と完了の期日を書いた
  • 公開日が動く可能性があるなら、動きそうな段階で伝える手順にした
  • 6か月以上になりそうなら、中途解除の30日前予告を運用に入れた
  • 募集の頁を出しているなら、6つの事項と更新の日付を確かめた
  • 生成AIを使ってよい範囲と、事実を確かめる責任の所在を書いた

この一覧を、発注の稟議か、発注書の作成画面のそばに置きます。担当者の記憶に頼ると、忙しい月から順に抜けます。

型を使うときに、丸写しにしない理由

公的な機関が示している書式や、業界団体の型は出発点として有用です。ただし、そのまま使うと合わない箇所が必ず出ます。理由は単純で、型は給付の内容の欄を埋められないからです。品目・数量・仕様、権利の譲渡の範囲、修正の回数——この法律で最も重い部分は、取引ごとに自分で書くしかありません。

もうひとつ、型を使うときに起きやすいのが、自社に不要な条項まで持ち込んでしまうことです。検査をしないのに検査完了の期日の欄が残っている、再委託ではないのに元委託者の欄がある、という状態は、相手に無用な確認を生みます。使う型は、自社の発注の実態に合わせて一度削るところから始めるのが実務的です。

そして、型を整えたら発注の手順の側に組み込みます。書式だけ作って共有フォルダに置いても、担当者は前回の発注書を複製して使います。前回の複製が正しい状態になっているかどうかで、実際の運用は決まります。四半期に一度、直近の発注を数件抜き出して、明示した内容と実際の進み方がずれていないかを見る。これだけで、書式は生きたまま保てます。

まとめ

フリーランス法への対応は、契約書を差し替える作業ではありません。委託した日に条件を書いて渡し、受領から60日以内の具体的な日で払い、期間が延びるほど増える決まりを知っておく——この3つが軸です。マーケの現場で実際に崩れるのは、口頭の追加依頼、公開日の後ろ倒し、決めていない修正回数という、日常の段取りの部分でした。生成AIが入ったことで足すべき項目も、突き詰めれば、使ってよい範囲と、事実を確かめる責任の所在の2点に収まります。まずは、直近に出した発注を1件開いて、8つの項目が書いてあるかを確かめるところから始めてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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