成長の打ち手は既存か新規か|アンゾフの4象限で決める

「来期は新規開拓を強化すると決まったが、何を新規と呼んでいるのかが人によって違う」「新しい市場を狙うのか、新しい商品を作るのか、会議のたびに話が入れ替わる」——成長の方針を立てる場で、繰り返し起きるすれ違いです。原因は意欲でも情報量でもありません。製品と市場という別々の2つの軸を、新規という1つの言葉でまとめてしまっているからです。アンゾフの4象限は、成長の方向を格好よく整理するための図ではありません。本当は、同じ会議に出ている人が、別々の話をしていないかを確かめるための共通の物差しです。この記事では、4象限の定義とBtoBでの読み替え、自社がどこにいるかの判定、象限ごとに変わる打ち手と指標、そしてAIに任せてよい範囲を、順にまとめます。
カメ先生アンゾフの4象限はね、どこを狙うかを決める図だと思われがちなんだけど、本当は『いま話しているのはどの話か』を揃えるための図なんだ。
カメ子狙いを決めるより先に、言葉を揃えるほうが大事なんですか。
カメ先生そこがずれていると、いくら議論しても決まらないからね。新しい客に今の商品を売るのと、今の客に新しい商品を売るのでは、足りないものが反対側にあるんだ。
カメ子新規開拓という一言が、実は二種類の話を含んでいるわけですね。
- 製品と市場は別の軸。新規という一語でまとめると、必要な準備が見えなくなる
- 自社の象限は意見ではなく、直近1年の受注を件数と金額の両方で4つに割れば判定できる
- 象限が変われば、証明すべきことも経路も指標も入れ替わる。既存の指標を新しい象限に当てない
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新規開拓という一語が、二種類の話を隠している
「来期は新規開拓を強化する」という方針が出たとき、その場にいる人の頭に浮かんでいる絵は、たいてい2種類に分かれています。今の商品を、今まで売っていなかった相手に売る絵と、今の相手に、新しい商品を売る絵です。どちらも新規開拓と呼べますが、必要な準備はほとんど重なりません。
前者で足りないのは、名簿と接点と、その相手に通じる説明です。商品はすでにあり、作る側の手は空いています。後者で足りないのは、作る側の人手と時間です。売り先はすでにあり、話を聞いてもらう相手には困りません。不足している資源が正反対にあるため、同じ予算でも使い道が逆になります。
この2つを分けずに議論すると、会議は噛み合いません。営業は名簿の話をし、開発は仕様の話をし、どちらも新規開拓の話をしているつもりでいます。製品と市場という別々の軸を、新規という1語でまとめたことが原因です。分けるだけで、議論の半分は片付きます。
予算の使い道も逆になります。今の商品を新しい相手に売るなら、費用は名簿と接点と、その相手に通じる資料へ向かいます。今の相手に新しい商品を売るなら、費用は作る側の人手と、試してもらうための準備へ向かいます。同じ金額でも、届く先がまったく違うため、どちらの話をしているかが決まらないうちは、予算の議論も進みません。
4つの象限は、難易度ではなく足りない資源で読む
製品を既存と新規、市場を既存と新規で切ると、組み合わせは4つになります。経営学者のイゴール・アンゾフが示した整理として知られ、日本語では成長マトリクスや製品市場マトリクスと呼ばれます。実務では、順に難易度が上がると読むより、必要な資源の種類が入れ替わると読むほうが判断に使えます。
| 象限 | 製品と市場の組み合わせ | 足りなくなるもの | 最初に確かめること |
|---|---|---|---|
| 市場浸透 | 既存の製品を既存の市場へ | 伸びしろ | 取引の中でまだ届いていない部署や用途があるか |
| 新製品開発 | 新しい製品を既存の市場へ | 作る側の人手と時間 | 今の顧客が本当にそれを求めているか |
| 新市場開拓 | 既存の製品を新しい市場へ | 接点と、その市場で通じる説明 | 同じ課題を持つ相手が別の場所にいるか |
| 多角化 | 新しい製品を新しい市場へ | その両方 | 既存の資源が何か1つでも使えるか |
表の3列目に注目すると、選び方が変わります。多角化が難しいのは、聞こえが大きいからではなく、足りないものが2つ同時に発生するからです。作る手も、売る接点も、社内にありません。逆に市場浸透が軽く見られがちなのは、目新しさがないからです。けれども足りないのは伸びしろだけで、他はすべて揃っています。伸びしろが残っているうちは、この象限がいちばん確実です。
なお、実務では5つ目の区分が出てくることがあります。既存の事業をやめて別の事業へ移る、いわゆる事業転換です。次の章で触れる中小企業白書の区分でも、これは新市場開拓や多角化とは別の項目として置かれています。4つのどこかに無理に押し込むより、別扱いにしたほうが議論が濁りません。既存の事業を残すのか畳むのかは、成長の方向を選ぶ話とは別の決断だからです。
既存と新規の線引きを、市場と製品それぞれで決める
象限を使う前に、線引きを社内で決めておく必要があります。まず市場です。BtoBでは、市場が新しいという言葉に2通りの意味があります。1つは業種が違うこと。もう1つは、同じ会社の中で決裁する部署や役職が違うことです。後者は見落とされがちですが、実務ではこちらのほうが頻繁に起こります。
情報システムの部門に売っていた製品を、人事の部門に売る。同じ社名の取引先でも、予算の出どころが変わると、比較される相手も、証明すべきことも変わります。取引先の一覧では既存に見えるのに、実質は新しい市場という状態です。この見落としが、あとになって工数の読み違いとして現れます。既存顧客だから軽く済むと見積もった案件が、いちばん時間を食うのはこの形です。
次に製品です。線引きの目安は、売る前に必要な準備が変わるかどうかに置きます。機能を1つ足しただけなら既存のままです。提供する範囲が広がり、導入の手順や請求の形が変わるなら新規です。売り方だけを変えるのは象限を動かしません。代理店を増やしても、製品も市場も同じなら、それは市場浸透の中の話になります。
自社がどこにいるかは、受注データを4つに割れば分かる
自社の象限は、議論で決めるものではありません。直近1年の受注を4つに割れば、事実として出てきます。手を動かす順番は次のとおりです。1度作れば、翌年からは同じ手順を繰り返すだけで済みます。
直近12か月の受注案件を対象にします。件数と金額の両方を出せる形で並べます。
前章で決めた線引きを使います。既存の取引先でも、決裁の部署が違えば新規に入れます。
提供範囲や導入手順が変わったものを新規にします。機能追加は既存のままです。
件数と金額の両方で構成比を出します。両者で構成が食い違うことがよくあります。
同じ切り方で前年も出します。1年分だけでは、寄っているのか動いているのか分かりません。
この作業でよく起きるのは、件数では新規が多いのに、金額では既存が大半という結果です。この状態は、新規の案件が小さいことを意味します。方針として新規を掲げていても、会社を支えているのは既存だという現実が見えます。逆に、金額の大半が1つの象限に寄っていて、その象限の伸びが止まっているなら、次の象限を用意する時期にきています。判断の材料になるのは、意欲ではなくこの構成比です。
受注のデータがきれいに揃っていない会社のほうが、実際には多いはずです。その場合は、金額の大きい順に上位30件だけを手で分けます。全件がそろうのを待っていると、この作業は永遠に始まりません。上位だけでも、どの象限に寄っているかはほぼ同じ形で出てきます。翌年から件数を増やしていけば十分です。
判定でつまずく3つのケース
4つに割る作業では、必ず判断に迷う案件が出ます。多いのは3つです。1つ目は、既存顧客の別の部署からの引き合い。社名は既存ですが、決裁が別なら新しい市場として数えます。2つ目は、既存製品の大幅な改訂です。3つ目は、代理店を経由して入ってきた案件です。
2つ目の見分け方は、今までの顧客に同じ説明で売れるかです。同じ説明で売れるなら既存、説明を作り直す必要があるなら新規に入れます。3つ目は、最終的に使う会社が既存か新規かで判断します。代理店が新しくても、届いた先が既存の業種で、既存の使い方なら、市場浸透に近い動きです。
迷った案件は、迷ったという記録を残したうえで、どちらかに入れます。完璧な分類より、同じ基準で毎年数え続けることのほうが役に立ちます。基準が同じなら、去年との差が意味を持ちます。基準が毎年変わると、増えたのか減ったのかさえ分からなくなります。
日本の官庁も、同じ切り方で企業を分けている
この4つの切り方は、机上の整理ではありません。中小企業庁が公表している平成29年版の中小企業白書は、第2部の新事業展開の章で、市場浸透、新市場開拓、新製品開発、多角化、事業転換という区分を示し、このうち新市場開拓から事業転換までをまとめて新事業展開として分析しています。製品と市場を既存と新規で切るという発想が、行政の分析の枠組みとしても使われているということです。
同じ章では、新事業展開の取組と経常利益率の関係も示されています。いずれの取組においても、実施している企業は実施していない企業と比べて経常利益率が増加傾向にあると整理されています。もとになっているのは、中小企業庁の委託により2016年11月に25,000社を対象として実施されたアンケート調査で、回収率は15.1%と記載されています。
ただし、読み方には注意が要ります。これは傾向であって、新事業に手を出せば利益が増えるという因果ではありません。余力のある会社が新事業に着手できた、という順序でも同じ数字が説明できます。この資料から受け取れるのは、新事業展開を例外的な冒険としてではなく、継続的な成長のための通常の選択肢として扱ってよい、という程度の後押しまでです。
- 引用した区分と傾向は平成29年版の記述。年度が変われば分析の枠組みも数字も変わる
- 調査の対象は中小企業。大企業にそのまま当てはめない
- 回収率は15.1%。回答した企業に偏りがある可能性を前提に読む
象限が変わると、マーケの前提が4か所入れ替わる
象限が決まると、マーケティングの打ち手は自動的に変わります。変わるのは4か所です。誰に届けるか、何を証明するか、どの経路を使うか、社内の誰が動くか。この4つを象限ごとに書き分けておくと、施策の議論が短くなります。施策の良し悪しではなく、象限に合っているかで判断できるようになるからです。
いちばん差が出るのは、2つ目の何を証明するかです。既存の市場では、自社を選ぶ理由を証明します。相手はすでに課題を認識しており、比べる相手も決まっています。新しい市場では、その前に課題があること自体を証明するところから始まります。相手はまだ、それを困りごとだと思っていないかもしれません。
この違いを飛ばして、既存の市場で効いた資料をそのまま新しい市場に持ち込むと、反応が出ません。資料の出来が悪いのではなく、証明すべきことが1つ手前にずれているだけです。効かない資料を作り直す前に、どの象限向けの資料なのかを確かめると、無駄な作り直しが減ります。
市場浸透:獲得より、歩留まりと単価に効く
市場浸透の象限では、新しい名簿を増やすことより、今ある取引の中で、まだ届いていない場所を探すことが効きます。同じ会社の別の拠点、別の部署、まだ使われていない用途。ここは名簿を得る費用がかからず、実績もそのまま使えます。説明を作り直す必要もありません。
マーケティングの仕事は、集客より途中で落ちている場所の特定に寄ります。問い合わせから商談へ、商談から稟議へ、稟議から発注へ。どこで止まっているかが分かれば、そこに資料を1つ足すだけで数字が動くことがあります。新しい施策を足す前に、すでにある流れの詰まりを見ます。
この象限で気をつけるのは、伸びしろが尽きたときに気づきにくいことです。同じやり方で数字が落ち始めたら、努力の量ではなく象限を疑います。取引先の中に未接触の部署がもう残っていないなら、それは市場浸透の終わりを意味します。そこで施策を増やしても、費用だけが増えます。
届いていない場所を探す作業は、取引先ごとの一覧を作るところから始まります。契約している範囲、実際に使っている部署、まだ使われていない機能。この3つの列を埋めるだけで、次に声をかける先が並びます。新しい名簿を買う前に、この一覧が埋まっているかを確かめます。埋まっていないなら、費用をかけずに動かせる余地がまだ残っています。
新製品開発:顧客リストは使えるが、期待の置き場所が難しい
新製品開発の象限では、届ける相手には困りません。すでに取引のある相手に案内できます。難しいのは、今までの製品で作った印象が、新しい製品の理解を邪魔することです。あの会社はこういう会社だ、という認識が固まっているほど、新しい提案は届きにくくなります。
対処としては、既存の製品との関係を先に言い切ります。置き換えるのか、足すのか、まったく別物なのか。これを曖昧にしたまま案内すると、既存製品の値引き交渉に化けることがあります。新製品の案内が、既存製品の単価を下げる引き金になるのは、この象限に特有の失敗です。案内の文面を作る段階で、社内の営業と揃えておきます。
もう1つ、社内の期待の置き場所にも注意が要ります。既存の顧客に案内するため、初期の反応は良く出ます。その反応を、新しい市場でも通用する証拠だと読むと、次の判断を誤ります。既存顧客の好意的な反応には、製品の評価だけでなく関係の評価が混ざっています。
新市場開拓:作り直す量を、着手前に見積もる
新市場開拓の象限は、開発の投資が要らないぶん着手しやすく見えます。実際、手をつける会社が多い象限です。ただし投資が不要なのは作る側の話だけで、届ける側は作り直しになります。ここを軽く見積もると、途中で止まります。
何をどれだけ作り直すかは、着手前に数えられます。説明の資料は何本あるか、実績として出せる事例はその市場に何件あるか、接点を作る手段をいくつ持っているか。ゼロから作るものの本数を数えたうえで、予算と期間を出します。作り直しの具体的な進め方はそれ自体で別の整理が要る話なので、ここでは量の見積もりに絞ります。
あわせて、やめる条件を先に決めます。何か月で、どの数字がどこまで届かなければ止めるのか。やめる条件のない挑戦は、止め時を失って既存の資源を削り続けます。決めておけば、止めることが失敗ではなく、あらかじめ決めた手順の実行になります。社内の説明も、そのほうがはるかに楽になります。
数えるときの目安も挙げておきます。既存の市場で使っている説明資料のうち、業種の名前や、その業種でしか通じない言い回しが入っているものは、作り直しの対象です。事例のほうは、その市場で1件も出せないところから始まります。最初の1件をどう作るかまで決めてから着手すると、途中で止まる確率が下がります。
多角化が崩れるときの型
多角化の象限は、足りないものが2つ同時に発生します。それ自体はすでに述べたとおりですが、実務で崩れるのは資源の不足そのものより、不足を確かめる材料がないまま進むことです。売れるかどうかを確かめられる相手が、社内にも既存の顧客の中にもいません。
- 既存の顧客に感想を聞いて、新しい市場でも通用すると判断する
- 社内に詳しい人が1人もいないまま、外部から聞いた話だけで進める
- 既存事業の指標をそのまま当てはめ、初月の数字が出ないことを失敗とみなす
- 撤退の条件を決めずに始め、既存事業の予算を少しずつ削り続ける
- 製品も市場も新しいのに、体制だけは既存の兼務で回そうとする
崩れ方には決まった順番があります。まず初期の数字が出ません。次に、既存事業の側から人と予算を戻せという声が上がります。そこで規模を縮めると、もともと足りなかった資源がさらに減り、数字はもっと出なくなります。縮小したこと自体が原因になって、失敗が確定するという流れです。
避けるには、始める前に、どこまでは縮小しないかを決めておきます。最低限の資源を守る約束と、やめる条件はセットです。どちらか片方だけだと、中途半端な状態が長く続き、既存事業にも新規事業にも損が出ます。
4つを同時に走らせない
4つの象限をすべて視野に入れるのは正しいことですが、同時に走らせるのは別の話です。人が兼務すると、必ず既存の数字を守る側に時間が流れます。締切があり、責任が明確で、成果が読めるのは既存の側だからです。これは意志の問題ではなく、仕組みの問題です。
現実的な配分は、主戦場を1つ決め、次の象限を1つだけ小さく試す形です。試す側には、専任でなくてもよいので、時間の枠を先に確保します。空いた時間でやると決めた取組は、空き時間が発生しないため実行されません。週に何時間をどこで使うかまで決めて、初めて動き出します。
どの象限を次に置くかは、受注の構成比から決めます。金額の大半を占める象限の伸びが鈍っているなら、その隣の象限を試します。隣というのは、足りないものが1つで済む側という意味です。多角化は、隣を試したあとに出てくる選択肢になります。
象限ごとに変える指標と、当ててはいけない指標
象限を分けたのに指標を分けないと、判断を誤ります。新しい象限に既存の指標を当てると、すべてが失敗に見えます。案件の数も受注の率も、既存の市場の水準には届きません。届かないのが、この段階では正常な立ち上がりです。
| 象限 | 初期に見る指標 | 当ててはいけない指標 |
|---|---|---|
| 市場浸透 | 取引先内の未接触の部署の数、商談の歩留まり、単価 | 初回接点の数だけを追う |
| 新製品開発 | 既存顧客の試用件数、既存製品との併用の割合 | 新製品単体の利益を初年度で判断する |
| 新市場開拓 | その市場での事例の本数、説明資料が届いた割合 | 既存の市場と同じ受注率 |
| 多角化 | 確かめた仮説の数、想定顧客との対話の件数 | 売上と受注率を初期から追う |
表の3列目は、どれも既存の象限では正しい指標です。指標が悪いのではなく、当てる場所が違うだけです。とくに多角化では、初期に見るべきなのは売上ではなく、何を確かめたかの数になります。確かめた数が増えていないなら、それは売れていないことより深刻です。
指標を分けるときは、報告の場も分けます。同じ会議で並べると、数字の大きいほうが正しく見えてしまい、小さい象限の取組が毎回説明を求められることになります。説明に時間を取られると、試す側の手はさらに止まります。
AIに当て込ませるときに渡す材料と、渡してはいけない期待
象限の判定と整理は、AIが手伝いやすい作業です。受注データを4つに割る下書き、案件ごとの分類、象限ごとの打ち手の候補出し。いずれも判断の基準を人が先に文章にしておけば、当てはめる部分は任せられます。基準がない状態で任せると、当てはめではなく創作になります。
渡す材料は3つです。既存と新規の線引きを書いた文章、案件の一覧、製品の一覧と提供範囲です。案件の一覧では、社名と金額を伏せても分類はできます。線引きの文章を渡さずに分類だけを頼むと、AIは自分で基準を作って分けます。しかもその基準は明示されないので、結果だけを見ても間違いに気づけません。分類を頼むときは、案件ごとにどの基準で判断したかを1行で書かせます。
人が確認する範囲も、先に決めておきます。分類が渡した基準に沿っているか、既存と新規の線引きが案件ごとにぶれていないか、件数と金額の集計が元のデータと合っているか。この3点は毎回人が見ます。逆に、打ち手の候補出しのように、外れても実害の出にくい部分まで同じ手間をかける必要はありません。
日本のAI活用そのものが、市場浸透の側に寄っている
象限の話は、AIの使い道そのものにも当てはまります。総務省の令和7年版情報通信白書は、日本、米国、ドイツ、中国の4か国を対象にした調査をもとに、企業のAI利用の現状を整理しています。そのなかで、生成AIの活用による自社への影響として、日本では「業務効率化や人員不足の解消につながる」が最も多く挙げられたと記されています。
一方で、他の3か国では、ビジネスの拡大や新たな顧客獲得、新たなイノベーションを多く挙げる傾向があるとされています。同じ道具を、日本では今ある仕事を速くするために使い、他の国では商いを広げるために使う傾向がある、という違いです。象限に置き換えると、日本のAI活用は市場浸透の側に寄っていることになります。
同じ白書では、積極的に活用する方針、または活用する領域を限定して利用する方針を定めている日本企業の比率が、2024年度調査で49.7%(2023年度調査は42.7%)で、他の国より低い傾向が続いていることも示されています。中小企業では方針を明確に定めていないという回答が約半数を占めるとも記されています。方針が決まっていない状態では、AIの使い先は目の前の効率化に寄っていきます。どの象限を狙うのかを先に決めておけば、AIを向ける先も変わります。
よくある質問
4つの象限のうち、どこから手をつけるべきですか
一般解はありません。判断の材料になるのは、受注の構成比です。金額の大半を占める象限に伸びしろが残っているなら、そこを深めるほうが確実です。伸びが止まっているなら、足りないものが1つで済む隣の象限を小さく試します。会議で意欲を語り合う前に、構成比を出すほうが早く決まります。
既存顧客の別の部署は、既存と新規のどちらに数えますか
決裁の主体が別なら、新規として数えるのが実務的です。社名だけで判断すると、必要な準備を見誤ります。ただし、どちらに数えるかより、社内で基準を1つに決めて毎年同じ基準で数えることのほうが大事です。基準さえ揃っていれば、去年との比較が使えます。
新しい象限は、どれくらいの期間で判断すればよいですか
期間そのものより、何が起きたら続け、何が起きたらやめるのかを先に決めることが重要です。期間だけを決めると、期限が来たときに延長するか打ち切るかの議論が始まり、判断が先送りになります。確かめたいことを数えられる形で書き、その数が伸びているかで見ます。
象限を分けた結果を、そのまま経営の会議に出してよいですか
出す前に、集計が元のデータと合っているかを確かめます。件数と金額で構成が食い違う場合は、その理由も添えます。理由を添えずに数字だけ出すと、都合のよい側の数字だけが引用されます。前年と並べた形にしておくと、議論が構成比の変化に集中します。
4つの象限は、社内のどの場面で使うと効きますか
年度の方針を決める場と、施策の予算を配る場の2つです。方針の場では、どの象限に主戦場を置き、どの象限を小さく試すのかを決めます。予算の場では、それぞれの施策がどの象限のためのものかを1行で書かせます。書けない施策は目的が定まっていないことが多く、そこで議論が前に進みます。
AIに象限を判定させて、そのまま社内資料にしてよいですか
分類の下書きまでは使えますが、そのまま出すのは避けたほうが安全です。渡した基準に沿っているか、線引きがぶれていないか、集計が合っているかを人が確認してから出します。案件ごとの判断根拠を1行ずつ書かせておくと、この確認にかかる手間がかなり減ります。
まとめ
成長の打ち手を決める前に、製品と市場という別々の軸を、新規という1語でまとめていないかを確かめる。それだけで、会議のすれ違いはかなり減ります。自社がどこにいるかは意見ではなく、直近1年の受注を件数と金額の両方で4つに割れば出てきます。象限が変われば、証明すべきことも、使う経路も、見る指標も入れ替わります。既存の指標を新しい象限に当てれば、正常な立ち上がりまで失敗に見えてしまいます。AIは分類の下書きと候補出しを速くしますが、どこに賭けるかは、資料に書かれていない社内の事情を知っている人しか決められません。基準を先に文章にし、根拠を1行ずつ書かせ、人が確認する範囲を決めておく。この3つを守れば、4象限は毎年使い回せる物差しになります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
