ジョブ理論とは何か、ペルソナと何が違う?|用事で顧客を捉える

「顧客像は細かく作ったのに、当てはまる会社を狙っても商談が進みません」「同じ業種で同じ規模なのに、片方は即決で、もう片方は半年たっても動きません」——BtoBのマーケティングで顧客像を作り込んだ先には、この2つの声が待っています。手がかりは、クリステンセンが繰り返し紹介したミルクシェイクの調査にあります。味や食感を改良しても売れなかった商品が、購入の時刻を調べたところ朝の時間帯に集中し、単品で買って持ち帰る客が大半だと分かりました。売れていた理由は味ではなく、長い退屈な運転を持ちこたえるという用事でした。ジョブ理論は、顧客像の精度を上げる話ではありません。本当は誰が買うかではなく、どんな用事を片付けたくて買うのかへ、問いの立て方を入れ替える枠組みです。この記事では、属性で捉えると外れる理由と、用事の見つけ方、そして生成AIに用事の候補を出させるときの限界までを整理します。
カメ先生ジョブ理論って、顧客の像をもっと細かく描く方法だと思われがちなんだけれど、本当は像を描くのをやめる枠組みなんだ。
カメ子描かないで、何を見るんですか。
カメ先生その人が片付けたい用事を見る。同じ会社の同じ役職でも、抱えている用事が違えば買うものは変わる。逆に業種がまるで違っても、用事が同じなら同じものが選ばれるんだよ。
カメ子年齢や業種は、用事の結果としてあとから付いてくるものなんですね。
- ジョブ理論は顧客像の精度を上げる話ではなく、属性から用事へ問いを入れ替える枠組み
- 用事は乗り換えの経緯を時系列で聞き、代わりに使われていた手段を見ると輪郭が出る
- 生成AIは用事の候補出しに向くが、体裁の良い用事を作るので採否は人が決める
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場面:顧客像は当たっているのに、商談が進まない
よく聞く形を1つの例にまとめます。社内の問い合わせ対応を助けるサービスを売っている会社が、顧客像を丁寧に作りました。製造業、従業員500名前後、情報システム部の課長、40代、関心事は工数の削減。過去に受注した会社の平均を並べた像で、実際によく当たっています。この像に合わせて、広告の文面も資料の表紙も工数の削減でそろえました。
数字は途中まで良く出ます。資料請求は増え、像に当てはまる会社からの請求が大半を占めます。ところが商談に進む割合が上がりません。像に当てはまる会社ばかり集まっているのに、そこから先へ動かない。営業に聞くと、話は毎回「今すぐではない」で終わると言います。そこで像の精度を上げようとして、業種を細かく割り、役職を足し、関心事を増やしました。請求の数は増え、商談の数は変わりませんでした。
この止まり方には、像の作り方では届かない原因があります。像は受注した会社の平均から作っています。平均は、買った人たちに共通して見えた特徴を集めたものです。買った理由ではなく、買った人の特徴を集めたものなので、同じ特徴を持ちながら買わない会社が世の中の大半を占めていても、像からはそれが見えません。この記事は、その見えない部分の扱い方に絞ります。
ジョブ理論とは、何を見る枠組みか
ジョブ理論は、経営学者のクレイトン・クリステンセンが提唱した考え方です。中心にあるのは、顧客は商品そのものを欲しがっているのではなく、特定の状況で成し遂げたい進歩があるという見方です。その進歩を片付けてくれるものを、顧客はそのつど雇う。うまく片付かなければ解雇して、別のものを雇う。この雇うという言い方が、枠組みの性格をよく表しています。
冒頭のミルクシェイクの調査が有名なのは、見方を切り替えた瞬間に見えるものが変わったからです。味を良くする改良は、商品の側から出た発想でした。購入の時刻と買い方を調べる作業は、その商品が何に雇われているかを見る発想です。朝の通勤客にとって、片手で持てて、濃くて減りにくく、昼まで空腹をしのげるという性質は、味の良さより先に来る条件でした。同じ商品が時間帯によってまったく別の用事に雇われていることも、この調べ方で分かりました。
用事という言葉には、状況が必ず含まれます。「髪を整えたい」だけでは用事になりません。「伸びてだらしなくなった髪を、限られた時間で整えたい」まで書くと用事になります。解説でよく引かれる例では、この用事を抱えた人にとって、丁寧な接客で時間のかかる店ではなく、立ち寄りやすくて短時間で終わる店が雇われます。状況を落とすと、用事は「品質の高いものが欲しい」という当たり前の話に戻ってしまいます。
- ジョブ理論は、クリステンセンらが2016年に発表した論考と、その後に出た書籍で広く知られるようになった枠組みです。本記事では実務で使う範囲に絞って整理しています
- 本文で挙げた事例は、公開された解説で繰り返し紹介されているものです。自社の顧客に同じ用事が当てはまるかは、必ず自社の顧客に聞いて確かめてください
用事には機能・感情・社会の3つの側面がある
用事は1つの層でできていません。実務の整理では、機能的な側面、感情的な側面、社会的な側面の3つに分けて見ます。機能的な側面は実際に片付けたい作業、感情的な側面はその作業の前後でどう感じたいか、社会的な側面は周りからどう見られたいかです。3つを分けるのは、伝える材料がそれぞれ別の場所から出てくるからです。
冒頭の問い合わせ対応の例に当てはめます。機能の側面は「来月の問い合わせを、人を増やさずに処理し終える」。感情の側面は「夕方には自分の担当の仕事に戻れる状態にしたい」。社会の側面は「情報システム部が、忙しくなるたび場当たりで人を増やす部署だと思われたくない」。同じ人が同じ日に、この3つを同時に抱えています。資料が刺さらないときは、たいてい機能の側面だけが書かれています。
BtoBでは社会的な側面が強く出ることが多いと整理されます。買うかどうかを1人で決められず、稟議や説明の場を通す必要があるからです。稟議の場で聞かれるのは効果の大きさだけではなく、「なぜこの選び方が妥当なのか」です。社会の側面に答えていない資料は、機能の説明が正しくても社内で止まります。ここは属性の情報からは決して出てこない部分です。
BtoBの用事は、個人の用事と組織の用事が重なる
BtoBの難しさは、用事の持ち主が1人ではないところにあります。組織の用事は費用、危険の小ささ、期限といった形で出ます。担当者個人の用事は、今期の目標、説明できる状態にしておきたい、失敗した担当者になりたくない、という形で出ます。この2つが重なった場所に、買うか買わないかの判断が置かれています。
重なり方は3通りです。一致している場合は話が速く進みます。ずれている場合は、組織の用事だけを説明した資料が担当者の手元で止まります。厄介なのは向きが逆になる場合です。全社としては散らばった仕組みを1つにまとめたいのに、担当者個人は慣れた手順を保ったまま今期を終えたい。この向きの逆転が起きている商談は、機能を足しても動きません。
だから聞く相手を1人にしません。決める人、選ぶ人、実際に使う人で用事が違います。用事を書き留めるときは、この3者を別の行に分けて書きます。誰の用事かを書いていない用事の記述は、実務では使えません。同じ文章を営業と開発が読んで、別の人の話だと解釈してしまうからです。
ペルソナと何が違うのか
違いは、何を変数として見るかの1点です。顧客像は、業種・規模・役職・関心事といった属性を変数に置きます。ジョブ理論は、状況と用事を変数に置きます。そして属性は、用事の結果としてあとから付いてくるものだと考えます。朝に濃い飲み物を買う人の年齢や職業を集めても、朝の運転という状況は出てきません。
なぜ属性では外れるのか。同じ属性の枠の中に、用事の違う相手が混ざっているからです。従業員500名の情報システム部の課長という枠の中には、「来月を人を増やさずに持ちこたえたい」人と、「3年かけて基盤を組み替えたい」人が同時にいます。前者に3年の話をしても響かず、後者に来月の話をすると軽く見えます。属性が同じでも用事が違えば、同じ訴求は当たりません。像の精度を上げても、この混ざりは解けません。
誤解を1つ外しておきます。ジョブ理論は顧客像を否定する道具ではありません。像は、広告をどこへ配るかを決めるときや、社内で読者の姿を共有するときには今も役に立ちます。像は届け先を決めるのに向き、用事は何を言うかを決めるのに向くという分担です。顧客像そのものの作り方は別の話なので、この記事では踏み込みません。
用事の見つけ方1:乗り換えの経緯を時系列で聞く
用事は、聞き方によって出方が大きく変わります。「何にお困りですか」と聞くと、返ってくるのは用事ではなく要望です。要望は今使っている手段の延長で語られるので、そこから用事は出てきません。用事を出すには、買った瞬間ではなく、買うまでの経緯を時系列で辿ります。この聞き方は、乗り換えの聞き取りと呼ばれます。
辿る順番は決まっています。最初に不満を感じた瞬間、誰かに相談した日、探し始めた日、候補を絞った日、決めた日、社内を通した日。それぞれについて、いつだったかと、そのとき何が起きていたかを聞きます。要点は探し始めた日ではなく、最初に不満を感じた日を特定することです。探し始めた日には、もう手段の話が始まっています。不満を感じた日には、状況だけがあります。
聞く文言も決めておくと、話が要望に流れません。最初に不満を感じた日については「その日、何が普段と違いましたか」。相談した日については「誰に、どの言い方で相談しましたか」。探し始めた日については「最初に何を調べましたか」。決めた日については「最後まで残ったもう1つの案は何でしたか」。最後の問いが、代わりの手段をいちばん確実に引き出します。残ったもう1つの案に同業以外の名前が出てきたら、そこが本当の競合です。
件数の目安として、実務の整理では同じ層で10件から15件ほど聞くと主要な型が見えてくるとされることが多いようです。ただし件数より効くのは、聞く相手の選び方です。買った人だけでなく、他社に決めた人、検討をやめた人、途中で連絡が止まった人を必ず混ぜます。買った人だけに聞くと、結論はまた買った人の平均に戻ります。
用事の見つけ方2:代わりに使われていた手段を見る
聞ける相手が少ない場合の道もあります。その用事を、いま何で片付けているかを見る方法です。表計算での手作業、派遣での増員、外注、詳しい先輩に口頭で聞く、そして諦めて残業で埋める。どれも立派な手段であり、自社の商材と同じ用事を片付けています。
代わりに使われている手段には、用事の条件が刻まれています。問い合わせ対応を「詳しい人に口頭で聞く」で片付けている職場を考えます。この手段が満たしている条件は、調べ方を覚えなくてよいこと、間違っていたら相手がその場で直してくれることです。だから検索できる仕組みを入れても使われません。代替手段が満たしていた条件を外した置き換えは、機能が優れていても定着しません。
手がかりの探し場所は社内にあります。失注の理由を書いた欄、問い合わせフォームの自由記述、稟議や申請の記録、営業の議事録。この中で比較検討先の欄に同業以外の名前が書かれている行だけを抜くと、用事の輪郭が早く出ます。派遣会社の名前や「据え置き」と書かれた行が、いちばん多くを教えてくれます。
乗り換えを止める4つの力
用事があるのに乗り換えが起きないことは、よくあります。ここで使うのが4つの力の整理です。今の手段への不満が押す力、新しい手段の魅力が引く力、乗り換えることへの不安が止める力、そして現状のままでいたい惰性が止める力。前の2つが後の2つを上回らない限り、乗り換えは起きません。
マーケティングの資料は、引く力ばかりを書きます。できること、速さ、安さ、事例。ところが商談が「今すぐではない」で終わるとき、足りていないのは引く力ではありません。引く力を足しても、不安と惰性は減りません。むしろ、できることが増えるほど不安は大きくなります。導入の手間が増えて見えるからです。
4つの力は、商談の記録から拾えます。押す力は今のやり方で困っていることを口に出した回数、引く力は資料のどの部分に質問が集まったか、不安は「もし〜だったら」で始まる質問の数、惰性は「今期は」「来期に」といった先送りの言葉の数です。先送りの言葉が3回以上出た商談は、機能の説明を足しても動きません。議事録をこの4つの列に振り分けるだけで、次に何を渡すかが決まります。
止める力に効く材料は、引く力とは別に用意します。不安には、小さく試せる範囲、やめるときの戻し方、失敗した場合に発生する費用の上限を書きます。惰性には、今の手順を残したまま並行で始められる形を示します。この4つは、資料の章立てにそのまま使えます。引く力の章が3つ続く資料は、たいてい止める力の章が1つもありません。
競合の定義が変わる
用事で捉え直すと、競合の顔ぶれが変わります。同じ用事を片付けている手段は、業種が違ってもすべて競合です。問い合わせ対応の例なら、同種のサービスだけでなく、派遣会社、事務代行、社内の詳しい人、そして残業が競合になります。比較表に同業だけを並べていると、この顔ぶれは視界に入りません。
そして、いちばん強い競合はたいてい「何もしない」です。何もしないことには、稟議が要らず、覚え直しも要らず、失敗もありません。惰性の力が最大になる選択肢です。同業に負けた案件は原因を分析されますが、何もしないに負けた案件は、そもそも負けたと記録されません。だから対策が打たれないまま残り続けます。
実務での使い方は単純です。失注の分類を「他社に決まった」「予算がつかなかった」「決めなかった」の3つに分け直します。3つ目が多いなら、比較表を厚くしても効きません。3つ目に効くのは、止める力を下げる材料だけです。分類を分け直すだけで、次に作る資料が変わります。
用事の書き方の実務仕様
用事は頭の中に置かず、文章にして残します。型は決めておくほうが速く、あとから突き合わせられます。おすすめは「(状況)のときに、(成し遂げたい進歩)したい。ただし(避けたいこと)が起きるのは困る」の形です。3つの括弧が全部埋まって、はじめて用事として使えます。
| 項目 | 書き方 | 悪い例 |
|---|---|---|
| 状況 | いつ、何が起きたときかを、日付か出来事で書く | 業務が忙しいとき |
| 進歩 | 作業の名前ではなく、そのあとどうなっていたいかを書く | 業務を効率化したい |
| 避けたいこと | 起きたら見送ると決める条件を1つだけ書く | 失敗したくない |
| 用事の持ち主 | 決める人、選ぶ人、使う人のどれか1つに絞って書く | 顧客 |
| 代わりの手段 | いま何で片付けているかを、固有の手段名まで書く | 競合サービス |
| 確かめた記録 | その用事を持つ人に聞いた日と件数を書く | 市場の需要として把握 |
悪い例が悪いのは、どれも読む人によって別のものを指してしまうところです。「業務が忙しいとき」は全員に当てはまるので、誰の話でもなくなります。「効率化したい」は進歩ではなく手段の分類です。誰にでも当てはまる用事は、誰にも刺さらない訴求になります。
用事は多いほど良いわけでもありません。3つから5つに絞ります。絞らないと、資料も機能もすべての用事に少しずつ答える形になり、どの用事の持ち主にも足りない内容になります。絞る基準の作り方は、次の項目で扱います。
用事から訴求と機能の優先順位を出す
用事が文章になっていれば、何を先に言い、何を先に作るかは機械的に決まります。判断の材料が属性から用事に変わると、順番の付け方も変わります。次の5つの手順で並べ替えます。
正確な数は要りません。過去1年の失注理由や問い合わせの記述の中で、その用事に当てはまる件数を数えるだけで順番は付きます。数えられない用事は、まだ聞き取りが足りていない用事です。
1つの用事に手段が3つ以上並ぶことがあります。並んだ手段は全部が競合です。ここで同業以外が並んだ用事は、伝え方を大きく変える必要がある用事です。
満たしている条件は、乗り換えの理由になりません。すでに片付いているからです。この分け方をしないと、相手がもう困っていない点を訴求の先頭に置いてしまいます。
確実に、が条件です。条件付きでできることを先頭に置くと、商談の後半で条件の説明に時間を取られ、不安の力が大きくなります。
機能の要望一覧を、用事に紐づいたものだけに絞り直します。用事に紐づかない要望は、消すのではなく別の一覧に移して、次の聞き取りの材料にします。
この順番で決めると、機能の要望一覧が短くなります。要望のうち半分近くは、特定の用事に紐づいていません。誰かが言った便利そうなことが、そのまま一覧に載っているだけです。用事に紐づかない要望を分けるだけで、作る順番の議論は半分に減ります。
訴求の並べ方には1つだけ鉄則があります。先頭に置くのは、代わりの手段が満たしていない条件だけです。代わりの手段も満たしている条件を先頭に置くと、読んだ人は「今のままでも足りている」と受け取ります。同業との比較で勝っている点が、乗り換えの理由にならないのはこの理由です。
同じ商材を、属性で組んだ場合と用事で組んだ場合
冒頭の例に戻ります。商材も予算も期間も同じ、届ける相手の数も同じという前提で、変数だけを入れ替えます。属性で組んだ側は、製造業の情報システム部の課長という像に向けて、工数の削減を先頭に置きました。請求は増え、像に当てはまる会社が大半を占め、商談化は動かず、話は「今すぐではない」で終わります。
用事で組んだ側は、まず乗り換えの経緯を聞くところから始めます。契約に至った会社と、検討をやめた会社の両方に聞くと、契約側の共通点は属性ではありませんでした。人の入れ替えで問い合わせが急に増えた月があり、増員の稟議が通らなかったという状況が共通していました。用事は「人を増やさずに来月を持ちこたえたい」。代わりの手段は派遣での増員と残業でした。
そこから変わるのは、当てる相手ではなく言うことです。先頭を来月の話に変え、資料に今の手順を残したまま始められる範囲と、やめるときの戻し方を入れます。比較の相手を同業から派遣の費用に変えます。差の正体は、当てた層ではなく、言ったことのほうにあります。同じ像に同じ数だけ届けても、用事に触れているかどうかで商談化は変わります。
生成AIに顧客の声から用事の候補を出させる
用事の聞き取りは時間がかかります。書き起こしを読み、状況を拾い、似た話をまとめる作業は、1件あたり半日近くかかることも珍しくありません。ここは生成AIが効く場所です。効くのは候補出しと分類までで、渡すものと渡し方に条件があります。
渡すものは、失注の理由を書いた欄、聞き取りの書き起こし、フォームの自由記述、営業の議事録です。渡し方の条件は3つあります。要約させずに原文のまま渡すこと。1件ずつ「状況・進歩・避けたいこと・代わりの手段」の4つの欄に写させること。そして欄が埋まらない件は、空欄のまま残させることです。空欄を埋めさせないという指示が、いちばん効きます。
量の目安も決めておきます。1回に渡すのは20件から30件までにし、それを超えるときは分けて回します。まとめて渡すほど、AIは似た声を1つの用事に寄せるので、少数派の用事が消えていきます。少数派の用事こそ、まだ誰も訴求していない用事です。分けて回したあとに、出てきた用事の一覧同士を突き合わせ、片方にしか出ていない用事を残す。この突き合わせだけは人の手でやります。
指示のときに必ず付けるのが、根拠の併記です。4つの欄それぞれについて、原文のどの発言のどの部分から書いたかを、引用の形で並べさせます。引用が付いていない行は、AIが埋めた行です。この1つの決まりだけで、あとの確認が短く済みます。引用があれば、原文に戻る場所が1行で分かります。
AIが作る「体裁の良い用事」の見分け方
生成AIが出す用事の一覧は、たいてい読みやすく整っています。整っているので、確かめる前に社内の資料に載ってしまいます。ここが本当の落とし穴です。よく混ざる形を並べます。
- 状況の欄が「業務が忙しいとき」になっている(日付も出来事もないので、誰の話にも当てはまる)
- 代わりの手段の欄に「競合サービス」と書かれている(原文に同業の名前が出ていないのに埋まっている)
- 進歩の欄が「効率化したい」で終わっている(元の発言にあった具体の作業名が消えている)
- 用事が10個以上並んでいる(声の数より用事が多いときは、言い換えを別の用事として数えている)
- 引用が付いていない行が混ざっている(原文にない推測がそのまま用事になっている)
見分け方は1つだけです。原文に戻ることです。ただし全部を戻って確かめる時間はありません。だから人が確認する範囲を先に決めます。用事1つにつき原文2件だけ、引用の位置まで確かめる。この決め方なら、用事が5つでも確認は10件で終わります。範囲を決めておかないと、忙しい月に確認そのものが飛びます。
そして、採るか採らないかの判断はAIに出させません。理由は精度ではなく、この判断が訴求の先頭と機能の順番、つまり予算の配分を決めるからです。用事を採用するかどうかの判断は、人が持ち続けます。AIに任せるのは候補と根拠の提示までで、決めるのは人です。根拠が原文で追える形になっていれば、この分担は無理なく続きます。
よくある質問
ジョブ理論を使うなら、顧客像は作らなくてよいのですか
作って構いません。役割が違うだけです。像は広告の配信先を決めるときや、社内で読者の姿を共有するときに役に立ちます。用事は、その相手に何を言うかを決めるときに使います。像だけで訴求まで決めようとすると、冒頭の例のように請求だけが増える形になります。
聞き取りできる顧客がいない場合はどうしますか
代わりに使われている手段を調べる道があります。失注理由の記述、フォームの自由記述、稟議の記録から、その用事をいま何で片付けているかを拾います。比較検討先の欄に同業以外が書かれている行が、いちばん手がかりになります。社内の営業に、断られた理由を言葉のまま聞くのも有効です。
用事はいくつまで持つのが現実的ですか
3つから5つが実務の上限です。それ以上になると、資料も機能もすべての用事に少しずつ答える形になり、どの相手にも足りない内容になります。数が増えたときは、言い換えを別の用事として数えていないかを確かめてください。状況が同じなら、それは同じ用事です。
生成AIだけで用事を出すことはできますか
候補を出すところまではできますが、そのまま使うことは避けてください。AIは空欄を埋める方向に働くので、原文にない状況や代わりの手段を補ってしまいます。原文の引用を必ず併記させ、用事1つにつき数件だけ人が原文に戻って確かめる。この範囲を先に決めておけば、時間をかけずに使えます。
まとめ
ジョブ理論は、顧客像を細かくする道具ではありません。誰が買うかではなく、どんな状況でどんな進歩を求めて買うのかへ、問いの立て方を入れ替える枠組みです。属性は用事の結果としてあとから付いてくるので、属性が同じでも用事が違えば、同じ訴求は当たりません。像に当てはまる相手が集まっているのに商談が動かないときは、ここを疑います。
用事の見つけ方は2つです。乗り換えの経緯を時系列で辿り、最初に不満を感じた日を特定すること。そして、いまその用事を何で片付けているかを見ること。代わりの手段が満たしている条件は乗り換えの理由になりません。訴求の先頭に置けるのは、代わりの手段が満たしていない条件だけです。乗り換えが起きないときは、引く力ではなく不安と惰性を見ます。
生成AIは、声から用事の候補を出す作業に向いています。ただし空欄を埋めさせず、原文の引用を必ず併記させる。採否の判断はAIに出させず、人が原文に戻って確かめる範囲を先に決める。まずは失注理由の記述を開き、比較検討先に同業以外が書かれている行だけを抜き出すところから始めてみてください。用事の輪郭は、そこにいちばん濃く残っています。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
