Media > AI活用ユースケース > 総務 > 外国人の住民・利用者向けのお知らせを、やさしい日本語に書き換えて点検する

外国人の住民・利用者向けのお知らせを、やさしい日本語に書き換えて点検する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

手続き・行事・ごみ出し・利用料などのお知らせを、外国人の住民や利用者に向けてやさしい日本語に書き換えます。書き換えた文を自組織の基準に照らして点検し、元の文にあった日付・金額・持ち物・期限が落ちていないかを指摘します。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Power Automate/Python
対象業界
介護/医療/教育/自治体
対象部門
総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 各課からお知らせの元の文が、メールか共有フォルダで届く。受付台帳に1行追加する
  2. 担当者が元の文を読み、伝えたいことを整理する
  3. 文を短く分け、難しい言葉や敬語を言い換え、漢字にふりがなを付けながら書き換える
  4. 書き換えた文を読み直し、長すぎる文や残った難しい言葉がないかを確かめる
  5. 元の文と見比べ、日付・時間・場所・金額・持ち物・期限が抜けていないかを確かめる
  6. 依頼元の課に戻し、内容に誤りがないかを見てもらう
  7. 依頼元の了解が出たら、掲示・配布・ホームページ掲載に回す
導入後(After)
  1. 人各課から届いた元の文を、受付台帳の新しい行に貼り付ける。発行年と対象の読み手を選ぶ
  2. 自動台帳の行を起点に、元の文をやさしい日本語に書き換えた案を作る
  3. 自動書き換えた案の一文ごとの文字数、ふりがなの無い漢字、二重否定の言い回しを機械で数える
  4. 自動数えられない項目(尊敬語・謙譲語、言い換えの残り、あいまいな表現)をAIが基準の番号つきで指摘する
  5. 自動元の文と書き換えた案から、日付・金額・持ち物・期限などの要素を別々に抜き出す
  6. 自動抜き出した要素を機械で突き合わせ、`match` / `dropped` / `changed` / `added` / `source_issue` を付ける
  7. 人担当者が点検結果の一覧を見ながら、書き換えた案を最後まで読み、直す
  8. 人`source_issue` のあるものは、依頼元の課に元の文の確認を頼む
  9. 人依頼元の了解を得て、掲示・配布・掲載に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 各課からお知らせの元の文が、メールか共有フォルダで届く。受付台帳に1行追加する
  2. 担当者が元の文を読み、伝えたいことを整理する
  3. 文を短く分け、難しい言葉や敬語を言い換え、漢字にふりがなを付けながら書き換える
  4. 書き換えた文を読み直し、長すぎる文や残った難しい言葉がないかを確かめる
  5. 元の文と見比べ、日付・時間・場所・金額・持ち物・期限が抜けていないかを確かめる
  6. 依頼元の課に戻し、内容に誤りがないかを見てもらう
  7. 依頼元の了解が出たら、掲示・配布・ホームページ掲載に回す

(a)書き換えに時間がかかる。 1本のお知らせに、言い換えを考え、ふりがなを付け、文を組み直す作業が20分近くかかります。行政の文章には「〜の方は」「〜に限り」「〜を除き」といった条件が多く、それを短い文に分ける作業が重いのです。

(b)できる人が限られる。 どの言葉を言い換え、どの言葉を残すかは、担当者の頭の中にあります。「在留カード」は言い換えず、「転出」は「ほかの市に引っ越す」と書く。この判断が一覧になっていないので、ほかの職員が書くと、お知らせごとに言い方が変わります。

(c)落ちた情報は見えない。 5番の見比べは、書き換えた本人が行います。自分で削った一文は、自分では気づきません。 持ち物の「印鑑」、期限の「必着」、対象の「小学生以下」。短くした結果、読みやすいが内容が足りない文ができます。

(d)元の文の誤りが、そのまま、または黙って直されて出る。 元の文の曜日が間違っているとき、書き換えた担当者が気づいて直すか、気づかずに写すかは、その日次第です。直した場合でも依頼元に伝わらず、日本語版だけが誤ったまま掲示されることがあります。

  1. 【人】 各課から届いた元の文を、受付台帳の新しい行に貼り付ける。発行年と対象の読み手を選ぶ
  2. 【自動】 台帳の行を起点に、元の文をやさしい日本語に書き換えた案を作る
  3. 【自動】 書き換えた案の一文ごとの文字数、ふりがなの無い漢字、二重否定の言い回しを機械で数える
  4. 【自動】 数えられない項目(尊敬語・謙譲語、言い換えの残り、あいまいな表現)をAIが基準の番号つきで指摘する
  5. 【自動】 元の文と書き換えた案から、日付・金額・持ち物・期限などの要素を別々に抜き出す
  6. 【自動】 抜き出した要素を機械で突き合わせ、match / dropped / changed / added / source_issue を付ける
  7. 【人】 担当者が点検結果の一覧を見ながら、書き換えた案を最後まで読み、直す
  8. 【人】 source_issue のあるものは、依頼元の課に元の文の確認を頼む
  9. 【人】 依頼元の了解を得て、掲示・配布・掲載に回す

7番目で、担当者は書き換えた案を全文読みます。 住民に配る文章なので、ここは省きません。変わるのは読み方で、「どこに何が落ちたか」を先に一覧で知ってから読むので、頭から疑いながら読む必要がなくなります。

6番目を機械にしているのが、この構成の分かれ目です。 要素の抜き出しはAIに任せますが、元の文から抜いたものと書き換えた案から抜いたものは、互いを見せずに別々に抜きます。 同じ呼び出しで両方を見せると、AIは「同じことが書いてある」と揃えにいきます。

02今回想定するシステム構成

構成図
各課から届いたお知らせの元の文
   │  担当者が受付台帳に貼り付け
   ▼
受付台帳(スプレッドシート)
   │  行の追加を起点に呼び出す
   ▼
ChatGPT(OpenAI API)── ① やさしい日本語への書き換え案
   ▼
台帳側のスクリプト ── 一文の文字数/ふりがなの無い漢字/二重否定の型を数える
   ▼
ChatGPT(OpenAI API)── ② 基準の番号つきの指摘(数えられない項目)
   ▼
ChatGPT(OpenAI API)── ③ 要素の抜き出し(元の文と書き換え案を別々に)
   ▼
台帳側のスクリプト ── 要素の突き合わせ
   │   match / dropped / changed / added / source_issue
   ▼
【人が全文を読み、点検結果に沿って直す】
   ├──▶ source_issue は依頼元の課へ
   └──▶ 掲示・配布・掲載
役割想定する製品代替候補
処理ChatGPT(ChatGPT Business/Enterprise または OpenAI API)Claude、Gemini
連携Google Apps Script(台帳からAPIを呼び、結果を書き戻す)Power Automate、Excel のマクロ
差異計算Google Apps Script(抜き出した要素の突き合わせ)Excel の関数、Python
台帳Google スプレッドシートExcel、Microsoft Lists

新しく足すのは、生成AIの利用と、台帳から呼び出す短いスクリプトだけです。 受付台帳はいまも使っているものに列を足します。掲示やホームページへの掲載の経路は変えません。

最小構成では、ChatGPT Business や Enterprise の画面に、決まった指示文と元の文を貼るだけで始められます。 本記事の想定は半自動化で、台帳から OpenAI API を呼びます。違いは、出てくる結果の形が毎回そろうかどうかです。

API側で使うのは、構造化出力(Structured Outputs)という機能です。 開発者向けドキュメントでは、与えたJSONスキーマに必ず沿った応答を生成させる機能とされ、必須のキーが抜けたり、決めた選択肢にない値が入ったりする心配がないと説明されています。JSONモードとの違いは、JSONとして正しい形であることは両方が保証するが、スキーマに沿うことまで保証するのは構造化出力だけという点です。

この構成で効くのは、enum で値の選択肢を固定できることです。 要素の種類を date や amount などに限れば、突き合わせのスクリプトは決まった種類だけを扱えば済みます。スキーマでは、すべての項目を required にし、additionalProperties を false にする必要があります。省略してよい項目は、null を許す形で表します。

ただし、ドキュメントは値そのものの誤りは起こりうるとしています。 形がそろうことと、中身が正しいことは別です。だから抜き出した要素を、人が読む前に機械で突き合わせます。

やさしい日本語の考え方は、出入国在留管理庁と文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を土台にします。 紹介ページでは、日本に住む外国人に情報を伝えるとき、多言語で翻訳・通訳するほか、やさしい日本語を活用することが有効とされ、ガイドラインは特に書き言葉に焦点を当て、お知らせなど書き言葉で情報を発信する際の活用を想定したものと説明されています。書き換えの一例を載せた別冊「やさしい日本語書き換え例」も公開されています。一文の長さやふりがなの付け方などの具体的な基準は、ガイドラインを読んだうえで自組織の基準として一覧にします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

受付台帳に元の文が貼られ、「書き換え」の欄に印が付いたことを起点にします。 貼った瞬間に動かさないのは、元の文の修正が続くことがあるからです。依頼元から「さっきの文、日付を直しました」と届くたびに書き換えが走ると、どれが最新か分からなくなります。

1日1回まとめて処理する形にもしません。 行事のお知らせは、依頼が来てから掲示までが数日しかないことがあります。担当者が印を付けたらすぐに動き、数分で点検結果まで台帳に戻る形にします。

同じ行で2回目以降に動かしたときは、前の結果を消さずに版を上げます。 元の文が直った理由が点検結果の source_issue だった場合、その経緯が残ります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
元の文各課が書いたお知らせの本文。見出し、日時、場所、問い合わせ先を含む受付台帳
付帯情報依頼元の課、発行年、対象の読み手(住民/利用者の家族/保護者)、掲示の方法受付台帳
書き換えの基準自組織で決めた基準の一覧。番号、内容、機械で数えるかAIが見るか基準の一覧(スプレッドシートの別シート)
言い換えない語の一覧制度名・書類名・窓口名など、そのまま残して説明を添える語同上

質を決めるのは、下の2つです。 基準の一覧が無いと、AIは自分なりの「やさしさ」で書き換え、担当者ごと、お知らせごとに言い方がばらつきます。第3章の(b)が、AIに置き換わっただけになります。

言い換えない語の一覧は、とくに大事です。 「在留カード」「国民健康保険」「マイナンバーカード」は、窓口で提示を求められる書類や制度の名前です。言い換えてしまうと、住民は窓口でその語を聞いても、お知らせの話だと結び付けられません。 残したうえで、「在留カード(日本に住む外国人が持つカード)」のように短い説明を添えます。

基準の一覧は、たとえば次のように作ります。 番号を付けて、指摘には必ずその番号を書かせます。

番号基準(例)見る方法
R01一文は40文字以内にする機械で数える
R02漢字にはふりがなを付ける(言い換えない語を含む)機械で数える
R03二重否定を使わない(「〜ないわけではない」「〜なくはない」など)機械で型を探す
R04尊敬語・謙譲語を使わず、「〜です」「〜ます」で書くAIが見る
R05難しい言葉は、言い換えない語の一覧にあるものを除いて言い換えるAIが見る
R06「など」「程度」「適宜」のようなあいまいな言い方を避けるAIが見る
R07日付は「10月10日(金曜日)」のように、曜日まで書くAIが見る

この表の数字や語は例です。 実際の基準は、ガイドラインを読んだうえで、自組織の読み手に合わせて決めてください。

Step3

データの取得方法を決める

台帳のスクリプトが、印の付いた行の元の文と付帯情報、基準の一覧、言い換えない語の一覧を読み、3種類の呼び出しを順に行います。

呼び出し渡すもの受け取るもの
① 書き換え元の文、基準の一覧、言い換えない語の一覧、対象の読み手書き換えた案(ふりがなは決まった書き方で)
② 基準の点検書き換えた案、AIが見る基準(R04〜R07)基準の番号つきの指摘
③ 要素の抜き出し元の文だけ、または書き換えた案だけ日付・金額・持ち物・期限などの要素の一覧

③は同じ指示で2回呼びます。 1回目は元の文だけ、2回目は書き換えた案だけを渡します。互いの文を見せないことが、この呼び出しの要点です。

ふりがなは、漢字《かんじ》 のように、決まった書き方で返させます。 画面上ではふりがなとして表示し、機械の点検では 《》 の有無で数えます。書き方が決まっていないと、機械で数えられません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 表や箇条書きをほどく … 元の文の表は「項目:値」の行に直します。表のまま渡すと、どの値がどの項目のものかが崩れます
  2. 全角と半角をそろえる … 数字と時刻の表記を半角にそろえます。突き合わせで「10日」と「10日」を別物と判定させないためです
  3. 元号と西暦の対応を付ける … 元の文に元号があれば、台帳の発行年から西暦を横に添えます
  4. 問い合わせ先の電話番号を控える … 抜き出しとは別に、元の文から電話番号の並びを機械で拾っておきます
  5. 長さを確かめる … 数ページに及ぶ要項は、見出しごとに分けて処理します
  6. 個人名を外す … 担当者の氏名が書かれていれば、課の名前に置き換えてから渡します

4番目は、突き合わせの答え合わせに使います。 電話番号は1文字違っても意味が変わり、しかも書き換えで「お問い合わせは市民課へ」とだけ残されがちです。AIの抜き出しと別に、機械で拾った番号と照らします。

5番目は、応答が途中で切れるのを防ぐためです。 出力の上限に達した応答は、状態が incomplete として返るとドキュメントに書かれています。切れた結果を、そのまま点検結果として台帳に書かないでください。

Step5

AIに処理させる

させるのは、書き換えた案を作ること、数えられない基準について番号つきで指摘すること、文から要素を抜き出すことの3つです。

呼び出し判定・作業の仕方判断できないときの扱い
① 書き換え基準に沿って文を分け、言い換え、ふりがなを付ける元の文の意味が一通りに取れない箇所は書き換えず [要確認] を付けて残す
② 基準の点検R04〜R07 に当たる箇所を、番号と根拠の文字列つきで挙げる基準の一覧にない指摘は出させない
③ 要素の抜き出し日付・曜日・時刻・金額・場所・持ち物・期限・対象者・条件・可否・連絡先を拾う書かれていない要素は出さない。推測で補わない

①の右端が大事です。 「申請は原則として本人が行ってください」の「原則として」が何を指すのか、元の文だけでは分からないことがあります。AIがそれらしく書き換えると、元の文に無い条件ができあがります。 分からない箇所は、分からないまま担当者に渡します。

③では、「条件」と「可否」を要素として拾わせます。 「ただし〜を除く」「〜の方に限り」は条件、「代理人でも申請できます」「当日の申し込みはできません」は可否です。書き換えでいちばん落ちやすく、落ちたときの影響がいちばん大きいのが、この2種類です。 二重否定を肯定に直す書き換えでは、可否が逆になる事故が起きます。

させないこと理由
元の文の誤りを直す日本語版と食い違ったまま配られる。直すのは依頼元の課
元の文に無い情報を足す「持ち物:印鑑」を親切で足すと、制度が変わっていても残る
言い換えない語を言い換える窓口で聞く語と結び付かなくなる
突き合わせの判定同じ思い込みで「一致」と答える。機械で行う
一文の文字数を数える数えさせると誤る。機械で数える
公開してよいかの結論住民に配る文章の責任は人が持つ

いちばん起きやすい失敗は、1行目です。 元の文の「10月10日(木)」が発行年の暦では金曜日だったとき、AIは気を利かせて「10月10日(金曜日)」と書き換えます。住民にとってはどちらが正しいか分からず、元の日本語版を見た人と、やさしい日本語版を見た人とで、来る日が分かれます。

Step6

指示内容を固定する

③要素の抜き出しの指示文です。 ①と②も同じ考え方で書きますが、突き合わせの質を決めるのはこの指示です。

あなたは市役所で、住民向けのお知らせから、
読み手の行動に関わる情報を漏れなく拾い出す係です。
渡された文章「だけ」を読んで、書かれている要素を一覧にしてください。

【拾う要素の種類】
- date ........ 日付(「10月10日」「毎月第2火曜日」など)
- weekday ..... 曜日(日付に添えて書かれているもの)
- time ........ 時刻・時間帯
- amount ...... 金額・料金・手数料
- place ....... 場所・会場・窓口
- item ........ 持ち物・提出する書類
- deadline .... 期限・締め切り(「必着」「消印有効」などの条件を含む)
- target ...... 対象者(年齢・住所・資格など)
- condition ... 条件・例外(「ただし」「〜に限り」「〜を除き」)
- permission .. できること・できないこと、必要・不要
- contact ..... 問い合わせ先(課の名前、電話番号)

【厳守事項】
- 書かれていない要素は出さないでください。推測で補わないでください。
- value には、文章に書かれている言葉をそのまま写してください。
  言い換え・要約・訂正をしないでください。
- 日付と曜日が合っていないように見えても、直さずにそのまま写してください。
- normalized には、表記をそろえた形だけを入れてください。
  日付は「月-日」、時刻は「時:分」、金額は円の整数です。
  計算や推定で作った値は入れず、そろえられない場合は null にしてください。
- permission は、できる/できない、必要/不要のどちらかを polarity に入れてください。
  二重否定の文は、文字どおりに読んで判断し、判断に迷えば unclear にしてください。
- 1つの文に複数の要素があれば、すべて別々に出してください。
- evidence には、その要素を拾った文をそのまま写してください。
- この文章が元の文か書き換えた文かは考えないでください。

【文章】{text}
【発行年】{year}

「言い換え・要約・訂正をしない」を明記しないと、抜き出しの段階で意味が整えられます。 書き換えた案から抜くときに、元の文に近い言葉へ戻してしまうと、落ちた情報が一致として出てきます。

最後の1行も、意図して入れています。 元の文か書き換えた文かを知らせると、AIは片方を「正」として読みます。どちらの文も同じ目で読ませるために、役割を伏せます。 台帳の側では、どちらの呼び出しかを別の列で持っています。

①の書き換えの指示には、少なくとも次の3行を入れます。 「元の文の誤りに気づいても直さず、[要確認] を付けてそのまま残してください」「元の文に無い情報を足さないでください」「言い換えない語の一覧にある語は、そのまま使い、かっこで短い説明を添えてください」。

Step7

出力形式を固定する

③の抜き出しは、構造化出力で次の形に固定します。

{
  "facts": [
    {
      "type": "date | weekday | time | amount | place | item | deadline | target | condition | permission | contact",
      "value": "",
      "normalized": "string または null",
      "polarity": "allowed | not_allowed | required | not_required | unclear | null",
      "evidence": ""
    }
  ],
  "unclear_parts": [ { "text": "", "reason": "" } ]
}

type と polarity は enum で選択肢を固定し、すべての項目を required、additionalProperties を false にします。normalized と polarity は、該当しないときに null を入れる形で、省略を許します。

突き合わせは台帳のスクリプトが行い、次の形で書き戻します。

列中身
type要素の種類
original元の文から抜いた value
rewrite書き換えた案から抜いた value
resultmatch / dropped / changed / added / source_issue
result決め方担当者がすること
match種類と normalized(可否は polarity)が一致流し読み
dropped元の文にあり、書き換えた案に無い書き換えた案に戻す
changed種類は同じで値か可否が違うどちらが正しいかを元の文で確かめる
added書き換えた案にだけある元の文に無い情報なら削る
source_issue元の文の日付と曜日が発行年の暦で合わない、など依頼元の課に確かめる

source_issue は、元の文の側の問題です。 書き換えた案を直しても解決しないので、ほかの4つと分けて、依頼元に返す一覧に載せます。

②の基準の点検は、rule_id、evidence、suggestion を並べた形で受け取り、rule_id が基準の一覧に無い指摘は捨てます。 機械で数えた R01〜R03 の結果と同じ表に並べ、担当者は文ごとに、何番の基準に引っかかったかを一度に見られます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
受付台帳スプレッドシートの読み書き元の文を読み、書き換えた案と点検結果を書き戻す
OpenAI APIAPI呼び出し(構造化出力)書き換え、基準の点検、要素の抜き出し
基準の一覧・言い換えない語の一覧スプレッドシートの読み取り呼び出しのたびに最新の一覧を渡す
掲示・配布・ホームページ既存の経路人が了解したものだけを回す

ホームページへの自動掲載はしません。 この構成が出すのは、書き換えた案と点検結果までです。書き込み先を台帳だけにしておけば、誤った文が住民の目に触れる経路はありません。

基準の一覧は、呼び出しのたびに読み直します。プロンプトの中に基準を直接書き込むと、基準を変えたときに直し忘れます。

Step9

人が確認する

担当者は、書き換えた案をすべて全文読みます。 省くのは、頭から疑いながら読む手間だけです。

  1. source_issue を先に見る … 元の文の問題です。依頼元の課に確認を頼み、返事を待つあいだに残りを進めます
  2. dropped と changed を直す … 落ちた要素を戻し、変わった値を元の文で確かめます。条件と可否は必ず元の文と並べて読みます
  3. 基準の指摘を見る … 番号ごとに直すか残すかを決めます。直さない判断をしたら、理由を台帳に一言書きます
  4. 全文を通して読む … 一覧に出ていない読みにくさを探します
  5. 依頼元の課に戻す … 書き換えた案と点検結果の一覧を一緒に送ります

2番目の条件と可否は、飛ばさないでください。 「当日の申し込みはできません」が「当日も申し込みができます」に変われば、窓口に人が並びます。

依頼元の課に点検結果を一緒に送るのは、確認を速くするためです。 依頼元は書き換えた案を1行ずつ元の文と比べる必要がなく、dropped と changed が直っているかを見れば済みます。

できれば月に数本、日本語を母語としない住民や職員に読んでもらってください。 基準を満たしていても伝わらない言い方は、この構成では見つかりません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
応答が出力の上限で切れた状態が incomplete で返る。台帳に書かず、見出しごとに分けて再実行
安全上の理由で応答が拒否された拒否は refusal として返る。その行は人が書き換える
元の文の意味が一通りに取れない[要確認] の付いた箇所を、依頼元に確かめる
要素の種類は同じだが個数が違う日付が2つ書かれ、書き換えた案で1つになった場合など。dropped として扱う
元の文が表だけで本文がない前処理で「項目:値」の行にほどいてから渡す
元の文が画像やPDFの図だけこの構成では扱わない。依頼元に文字で送ってもらう
緊急のお知らせ点検を待たずに出す場合は、あとから点検にかけて、差分を追って出す
同じお知らせの再依頼前月の版と比べ、変わった要素だけを担当者に示す
基準の一覧が変わった変更の日付を記録し、それ以降の行に新しい基準を当てる

上の2行は、まれでも手順を決めておきます。 どちらも、結果が壊れているのに台帳に何か書かれてしまうのがいちばん困ります。書き戻すのは、状態が完了のものだけにします。

Step11

記録を残す

  • 元の文と、その版(依頼元が直した回数)
  • 書き換えた案と、担当者が直した後の最終版
  • 3種類の呼び出しの応答の全文
  • 突き合わせの結果(result の一覧)と、機械で数えた R01〜R03 の結果
  • そのとき使った基準の一覧と言い換えない語の一覧の版
  • 担当者が直した箇所と、直さなかった指摘の理由
  • source_issue を依頼元に伝えた日と、その返事

5つ目で一覧の版を残すのは、基準が変わるからです。 一文の長さの上限を変えれば、過去のお知らせの指摘の意味も変わります。当時の基準が残っていないと、「なぜこの文は通ったのか」に答えられません。

6つ目は、基準の見直しに使います。 毎月同じ番号の指摘が「直さない」で残るなら、その基準は現場に合っていません。

04実装レベルの3段階

最小構成:画面に指示と元の文を貼り、書き換えと抜き出しをさせる / 1本ごとの書き換えと要素の一覧
半自動化:上記+台帳からAPIを呼び、機械で数え、要素を突き合わせて書き戻す / 書き換え・基準の点検・突き合わせの一覧化
本格構成:上記+各課からの依頼の受付、前月版との差分、依頼元への回付までをつなぐ / 受付から依頼元の確認までの流れ

最小構成では本数がさばけません。 1本ずつ2つの会話に貼り、手で見比べるので、月120本には使えません。確かめるための段階です。 本記事の想定は半自動化です。 1本30分が10分になります。書き換えの下書き、機械で数える点検、要素の突き合わせが自動になり、担当者の時間は全文を読んで直すところに集まります。 本格構成まで進めても、担当者が全文を読む時間はほとんど減りません。 減るのは受付と回付の手間で、1本あたりでは数分です。まずは半自動化で基準の一覧を育てるほうが、効果は大きくなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
10 分
現在  120件 × 30分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 120件 × 10分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 外国人の住民や利用者、保護者に向けたお知らせを毎月数十本から百本以上出している市町村の担当課、介護施設、学校、病院など。やさしい日本語への書き換えが特定の職員の経験に頼っていて、その職員がいないと止まる場合。書き換えた文で日付や持ち物が抜けていたことが、配ったあとに分かった経験がある場合。書き換えの基準(一文の長さ、ふりがなの付け方、言い換えない語など)を一覧にまとめる準備ができる場合。
向いていない
  1. お知らせの本数が月に数本で、担当者が丁寧に書き換えれば足りる場合。読み手の多くが特定の1言語の話者で、その言語への翻訳を出すほうが確実に届く場合(多言語翻訳の構成が向きます)。防災・避難の緊急情報のように、書き換えと確認の時間そのものが取れない場合。なお、書き換えた文が読み手に本当に伝わるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月やさしい日本語版を作ったお知らせから20本を選ぶ(うち数本は、配ったあとに抜けが見つかったものを入れる)
  2. 基準の一覧と言い換えない語の一覧を、仮でよいので作る
  3. ChatGPT Business や Enterprise の画面に、書き換えの指示と基準、元の文を貼り、書き換えた案を作らせる
  4. 別の会話で、第7章の抜き出しの指示を使い、元の文と書き換えた案から要素を1回ずつ抜かせる
  5. 2つの一覧を手で並べて見比べ、当時の担当者の書き換えとも比べる

4番目で会話を分けるのは、互いの文を見せないためです。 同じ会話で続けると、AIは前の文を覚えたまま抜き出します。

出てきた内容判断
当時見落とした抜けが、抜き出しの比較で出た台帳から呼び出す形に進む
書き換えた案で元の文の誤りが黙って直った指示の書き方で直る。構成は有効
抜き出しで条件や可否が拾われない要素の種類の説明を足す。それでも拾われない文は元の文が長すぎる

3行目は、元の文の書き方の問題であることが多いです。 1つの文に条件が3つ入っていれば、人が読んでも拾いにくい文です。依頼元の課と、元の文の書き方を相談する材料になります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
突き合わせをAIにさせて「一致」ばかりになる抜き出しだけをAIに、突き合わせは機械で行う
元の文と書き換えた案を同じ呼び出しで抜き出す互いを見せない。別々に呼び、役割も伏せる
元の文の誤りをAIが黙って直す直させない。[要確認] で残し、source_issue で依頼元へ
二重否定を直したら可否が逆になった可否を polarity で抜き、changed で必ず人が見る
「ただし」以下の条件が消える条件を要素の種類として拾わせる
制度名まで言い換えられる言い換えない語の一覧を毎回渡す
ふりがなの書き方がばらばらで数えられない漢字《かんじ》 の形に決めて返させる
長い要項で結果が途中で切れるincomplete を検知し、見出しごとに分けて再実行
一文の文字数をAIに数えさせる数えるのは機械。AIには数えられない基準だけを見せる
基準をプロンプトに直接書き込む一覧を毎回読み込む。変えたときに直し忘れない

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが「元の文と同じことを言っているはずだ」と考えるところから起きます。書き換えた本人と同じ思い込みを、点検の側に持ち込まないことが要点です。

4行目と5行目は、住民の行動に直結します。 書き換えで読みやすくなった文ほど、担当者は安心して読み流します。条件と可否だけは、読みやすさと引き換えにしないでください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 各課のお知らせの元の文です。多くは公開前提の文章ですが、担当者の氏名、内線番号、公開前の日程や料金改定が含まれることがあります。

  1. 公開前の情報を扱う前提で契約を選ぶ … 料金改定や制度変更のお知らせは、発表前に書き換えます。入力したデータの扱いを、契約しているプランの条件で確かめてから使ってください
  2. 個人名を渡さない … 前処理で担当者の氏名を課の名前に置き換えます。特定の住民に宛てた通知は、この構成の対象にしません
  3. 公開してよいかの判断をAIに渡さない … 住民に配る文章の責任は、依頼元の課と担当者にあります。この構成が出すのは、書き換えた案と点検結果だけです
  4. 元の文の誤りは依頼元に返す … 日本語版とやさしい日本語版で内容が違う状態をつくらないためです。黙って直した記録が残らない運用は避けます
  5. ガイドラインを引用・加工して使うときは、利用ルールに従う … 紹介ページでは、コンテンツを編集・加工して利用する場合、出典とは別に編集・加工したことを記載するよう求めています。基準の一覧に書き換え例を取り込むときは、その旨を一覧に書いておきます
  6. 伝わるかどうかは、読み手に確かめる … 基準を満たしていることと、伝わることは別です。定期的に、日本語を母語としない人に読んでもらう機会をつくってください

誤りが起きた場合のリスクは、情報が落ちたまま配られることと、元の文と違う内容が配られることの2つです。 前者は突き合わせを機械で行うことで、後者はAIに元の文を直させないことで防ぎます。どちらも、AIの判断を点検の側に持ち込まない設計から出ています。

10まず何から始めるか

1週目:基準の一覧と言い換えない語の一覧を作る

ガイドラインを読み、できる職員が普段守っている基準を番号つきで書き出します。言い換えない語は、窓口で提示を求める書類と制度の名前から始めます。 最初から完全である必要はありません。

2週目:20本で試す

先月のお知らせから20本を選び、画面で書き換えと抜き出しをさせます。抜き出しは必ず別の会話で行い、当時見落とした抜けが出るかを最優先で見ます。

3週目:受付台帳に列を足す

書き換えた案、点検結果、result の一覧、基準の一覧の版を書く列を足します。あわせて、source_issue を依頼元に返す手順を、各課と決めておきます。

4週目:台帳から呼び出す形にする

台帳のスクリプトから API を呼び、書き換え・点検・抜き出し・突き合わせまでを書き戻します。この時点では担当者の書き換えと並べて使い、どちらが早く、どちらに抜けが少ないかを見ます。

2か月目: 担当者の書き換えをやめ、AIの案を直す形に切り替えます。ほかの2名も担当に入ります。3か月目以降: 直さなかった指摘の理由を集めて基準の一覧を見直し、1本30分が何分になったかを実測します。依頼元の課が点検結果の一覧だけで確認を終えられるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-25/最終更新:2026-09-25
確認した内容情報源確認日
ガイドラインが出入国在留管理庁と文化庁の作成であること。日本に住む外国人に情報を伝える際、多言語での翻訳・通訳のほか、やさしい日本語の活用が有効とされていること。やさしい日本語の中でも特に書き言葉に焦点を当て、お知らせなど書き言葉での情報発信での活用を想定していること。別冊「やさしい日本語書き換え例」で書き換えの一例を載せていること。コンテンツを編集・加工して利用する場合は、出典とは別に編集・加工したことを記載するよう求めていること出入国在留管理庁: 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン2026-09-25
構造化出力が、与えたJSONスキーマに必ず沿った応答を生成させる機能であること。JSONモードは正しいJSONであることのみを、構造化出力はスキーマへの準拠まで保証すること。すべての項目を required にし、additionalProperties を false にする必要があり、省略可能な項目は null を許す形で表すこと。enum で値を制限できること。安全上の拒否が refusal として返ること。出力の上限に達すると状態が incomplete で返ること。値そのものの誤りは起こりうることOpenAI: Structured Outputs2026-09-25

一文の長さ、ふりがなの付け方、言い換えない語などの具体的な基準は、ガイドライン本体と別冊を読んだうえで、自組織の基準として決めてください。 本記事の基準の表は例であり、ガイドラインの記載をそのまま写したものではありません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0231)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次