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保有個人データの台帳を作り、公表項目と実態の食い違いを洗い出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

システムの仕様書と業務の手順書を入力に、どこにどんな個人データがあるかを洗い出し、公表している利用目的と照らして食い違いを一覧にします。担当者の作業は、関係者に聞いて回ることから、出てきた候補を確かめることに変わります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
IT・SaaS/人材/医療/小売
対象部門
情報システム/法務
対象業務
内容確認・チェック/台帳・マスタ管理
主な課題
属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
12.5h/月
想定削減
69%
年間削減
330h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 棚卸の対象となるシステム・業務を選ぶ
  2. 担当部門にヒアリングの依頼を出す
  3. 担当者から、扱っている個人データの項目を聞く
  4. システムの仕様書や画面定義を見て、項目を確認する
  5. 利用目的、保管場所、保管期間、委託の有無を整理する
  6. プライバシーポリシーの記載と照らし、食い違いを探す
  7. 食い違いがあれば、担当部門と法務で対応を協議する
  8. 管理台帳を更新する
  9. 必要ならプライバシーポリシーの改訂を検討する
導入後(After)
  1. 棚卸の対象となるシステム・業務を選ぶ
  2. 自動仕様書・画面定義・データベース定義・業務手順書を集める
  3. 自動文書から、個人データに当たる項目の候補を抽出する
  4. 自動項目ごとに、取得元・利用目的・保管場所・保管期間・委託の有無の記載を探す
  5. 自動記載が見つからない項目を「確認が必要」として分ける
  6. 自動プライバシーポリシーの記載と照らし、対応する利用目的があるかを確認する
  7. 自動要配慮個人情報に当たりうる項目に印を付ける
  8. 担当者が候補を確認し、担当部門に確かめる
  9. 法務が公表内容との食い違いを評価し、対応を決める
  10. 自動台帳を更新し、次回の棚卸の対象と期限を設定する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 棚卸の対象となるシステム・業務を選ぶ
  2. 担当部門にヒアリングの依頼を出す
  3. 担当者から、扱っている個人データの項目を聞く
  4. システムの仕様書や画面定義を見て、項目を確認する
  5. 利用目的、保管場所、保管期間、委託の有無を整理する
  6. プライバシーポリシーの記載と照らし、食い違いを探す
  7. 食い違いがあれば、担当部門と法務で対応を協議する
  8. 管理台帳を更新する
  9. 必要ならプライバシーポリシーの改訂を検討する

問題は5つあります。

(a)ヒアリングに時間がかかる。 担当者に聞いても「たぶんこの項目です」という答えが返り、仕様書を見ると別の項目も入っています。 結局、文書を読むことになります。

(b)どこに個人データがあるか分からない。 システムが28件あり、SaaSも含まれます。「このツールに顧客の氏名を入れている」ことを情報システムが把握していないことがあります。

(c)委託先の一覧が更新されていない。 新しい委託先が追加されても、台帳に反映されないことがあります。

(d)開示請求に時間がかかる。 「私のデータを開示してほしい」と言われたとき、どのシステムを探せばよいかが台帳から分かりません。

(e)退職者・退会者のデータが残っている。 保管期間を過ぎたデータが消されているかを、確認する仕組みがありません。

  1. 棚卸の対象となるシステム・業務を選ぶ
  2. 【自動】 仕様書・画面定義・データベース定義・業務手順書を集める
  3. 【自動】 文書から、個人データに当たる項目の候補を抽出する
  4. 【自動】 項目ごとに、取得元・利用目的・保管場所・保管期間・委託の有無の記載を探す
  5. 【自動】 記載が見つからない項目を「確認が必要」として分ける
  6. 【自動】 プライバシーポリシーの記載と照らし、対応する利用目的があるかを確認する
  7. 【自動】 要配慮個人情報に当たりうる項目に印を付ける
  8. 【人】 担当者が候補を確認し、担当部門に確かめる
  9. 【人】 法務が公表内容との食い違いを評価し、対応を決める
  10. 【自動】 台帳を更新し、次回の棚卸の対象と期限を設定する

自動化されるのは「集める」「抽出する」「探す」「照らす」の4つです。残るのは「実態を確かめること」と「法的な評価」です。

02今回想定するシステム構成

構成図
仕様書 / 画面定義 / DB定義 / 業務手順書 / 委託契約書
   │
   ▼ SharePoint の棚卸フォルダ
   │
   ▼【トリガー】棚卸の対象を登録したとき / 新システム導入の申請時
Make(シナリオ)
   │
   ├──▶ 文書からテキストを取り出す
   │
   ├──▶ LLM API ── 個人データの項目の抽出
   │                 + 利用目的・保管期間・委託の記載の抽出
   │                 + 記載が見つからない項目の洗い出し
   │                 + 要配慮個人情報に当たりうる項目の印
   │
   ├──▶ プライバシーポリシーとの照合(利用目的の対応)
   │
   ▼
棚卸の候補一覧 ──【担当者が部門に確認】──【法務が評価】
   │
   ▼
個人データ管理台帳(SharePoint リスト)
   │
   ▼
プライバシーポリシーの改訂の検討(必要な場合)
役割想定する製品代替候補
ワークフローMaken8n、Power Automate、Python
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
保管SharePointBox、Google Drive
台帳SharePoint リストGoogle スプレッドシート

個人情報管理・プライバシー管理に特化したツール(データマッピング、同意管理、開示請求の対応を含むもの)が存在します。 まずそれを検討してください。自前で組む価値があるのは、自社の仕様書・手順書から実態を拾いたい場合です。 多くのツールは、担当者が入力した内容を管理するもので、入力の正確さは人に依存します。

Make を選んだのは、文書の取り込みからLLMの呼び出し、台帳への登録までを一連でつなげるためです。 処理の件数が月15件と少ないため、コードで書くほどの複雑さはありません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

トリガーは3つです。

1つ目は、定期の棚卸です。四半期ごとに対象を選び、処理を走らせます。年1回の一斉棚卸にしないでください。 45件を一度に見ると、担当者の負荷が集中し、形だけの確認になります。

2つ目は、新しいシステムを導入するときです。導入の申請が出た時点で、どんな個人データを扱うかを整理します。 事後の棚卸で見つけるより、はるかに手間が少なくなります。

3つ目は、業務委託先を追加するときです。委託契約の締結時に、委託する個人データの範囲を台帳に登録します。

2つ目と3つ目が、この構成の本当の価値です。 増えたときに記録する仕組みがないから、棚卸が重くなります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
システムの仕様書機能、データ項目、画面情報システム・ベンダー
画面定義入力項目、表示項目情報システム
データベース定義テーブル、カラム、型、コメント情報システム
業務手順書業務の流れ、扱う情報、保管方法各部門
委託契約書委託する業務、扱う個人データ、再委託の可否法務
公表しているプライバシーポリシー利用目的、開示請求の手続、問い合わせ先自社サイト
個人データの項目の定義何を個人データとして扱うかの社内基準法務(新しく作る
SaaSの一覧契約しているSaaSと、その利用部門情報システム
既存の管理台帳前回の棚卸の結果法務

「個人データの項目の定義」を先に作ってください。

氏名やメールアドレスは明らかですが、判断が分かれるものがあります。

項目検討が必要な理由
社員番号・会員ID単体では個人を識別できないが、他の情報と照合できる
IPアドレス・端末識別子他の情報と組み合わせて個人を識別しうる
顔写真・音声個人識別符号に当たりうる
購買履歴・閲覧履歴氏名と紐づいていれば個人データ
位置情報同上

この判断は法務が行うべきものです。 社内の基準を決めて文書にしてください。AIに判断させないための前提です。

Step3

データの取得方法を決める

文書の収集: SharePointのフォルダから取得します。仕様書が存在しないシステムがあることが、多くの企業の実態です。 その場合は、データベース定義(テーブル定義書)だけでも大きな手がかりになります。

データベース定義: テーブル名とカラム名、コメントを取得します。user_nametelbirth_date といったカラム名から、個人データの所在が分かります。 ただし、カラム名が col_01 のような命名の場合は手がかりになりません。

SaaSの一覧: 情報システムの契約台帳から取得します。部門が個別に契約しているSaaS(いわゆるシャドーIT)は、この一覧に載っていません。 経費精算のデータから、SaaSへの支払いを洗い出す方法もあります。

プライバシーポリシー: 自社サイトの公表内容をそのまま取得します。改訂履歴も残してください。 「いつからこの記載になっているか」が、後から問われることがあります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 文書の種別判定 … 仕様書/画面定義/DB定義/手順書/契約書を分けます。それぞれ読み取り方が違います
  2. 対象システムの特定 … 文書がどのシステムのものかを紐づけます
  3. 個人データの項目の候補の抽出 … 社内基準に照らして、候補となる項目を拾います
  4. 公表しているプライバシーポリシーの構造化 … 利用目的の記載を1件ずつに分けます
  5. 既存台帳の読み込み … 前回の棚卸結果を用意し、差分を見られるようにします
  6. 委託先の一覧の整理 … 契約書から、委託する個人データの範囲を取ります
Step5

AIに処理させる

処理内容
個人データの項目の抽出仕様書・DB定義から、社内基準に当たる項目を拾う
利用目的の記載の抽出手順書・仕様書から、その項目を何に使うかの記載を探す
保管期間の記載の抽出「◯年保存」「退会後◯か月で削除」といった記載を探す
委託の有無の抽出外部に渡している記載を探す
記載が見つからない項目の洗い出し利用目的・保管期間・委託の記載がない項目を挙げる
要配慮個人情報の候補の指摘健康、病歴、信条などに当たりうる項目に印を付ける
公表内容との対応の確認抽出した利用目的が、プライバシーポリシーのどの記載に対応するかを示す
担当部門への確認事項の作成文書から分からなかったことを、聞ける形にする

AIに次のことをさせないでください。

させないこと理由
ある項目が個人データに当たるかの判断法的な評価。社内基準に照らすだけにする
要配慮個人情報に当たるかの断定同上。「当たりうる」として印を付けるまで
法令に適合しているかの判断弁護士と個人情報保護委員会の判断
プライバシーポリシーの改訂案の作成公表文書であり、法務が書くもの
「この取扱いは問題ありません」という結論判断を省かせる
同意が必要かどうかの判断法的な評価

「問題ありません」と書かせないことが、特に重要です。 個人情報の取扱いは、少しの条件の違いで結論が変わります。AIが「適法です」と書いた記録が社内に残ると、後から「知っていたのに対応しなかった」と評価される材料になり得ます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、個人データの棚卸を支援する担当者です。
文書から、個人データに当たる項目とその取扱いの記載を抜き出してください。

【厳守事項】
- ある項目が個人データに当たるかを、あなたが判断しないでください。
  下記の社内基準に載っている項目名・パターンに一致するものだけを拾ってください。
  判断に迷う項目は candidates_to_review に入れ、理由を書いてください。
- 要配慮個人情報に当たるかを断定しないでください。
  健康・病歴・信条・犯罪歴などに関係しうる項目には
  sensitive_flag を true にし、「該当の可能性あり」とだけ書いてください。
  「要配慮個人情報に該当します」と書かないでください。
- 法令に適合しているかを判断しないでください。
  「問題ありません」「適法です」「同意が必要です」と書かないでください。
- プライバシーポリシーの改訂案を書かないでください。
- 文書に書かれていないことを補わないでください。
  利用目的・保管期間・委託の記載が見つからない場合は null とし、
  missing_information に項目名を入れてください。
  「通常は〜と考えられます」と書かないでください。
- 抽出した記載には、出典(文書名と該当箇所)を必ず添えてください。
  出典のない記載を出さないでください。
- 公表しているプライバシーポリシーとの対応は、
  「この記載に対応すると考えられる」という候補として示してください。
  対応する記載がない場合は "no_matching_purpose" とし、
  「対応する記載が見つかりません」と書いてください。
  それが違反であるとは書かないでください。

【個人データの項目の社内基準】
{personal_data_criteria}

【公表しているプライバシーポリシーの利用目的(1件ずつ)】
{privacy_policy_purposes}

【対象システム・業務】
{target_name}

【参照する文書】
{documents}

【前回の棚卸結果】
{previous_inventory}

「個人データに当たるかを判断しないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 これを書かないと、AIは学習内容に基づいて「これは個人情報に該当します」と判断します。個人情報保護法の解釈は改正やガイドラインの更新で変わるため、学習時点の理解に基づく判断は危険です。

「対応する記載がないことを違反と書かない」も必ず入れてください。 利用目的の公表方法は複数あり、プライバシーポリシー以外で対応している場合もあります。違反かどうかは法務が判断します。

Step7

出力形式を固定する

{
  "target_id": "",
  "target_name": "",
  "target_type": "system | business_process | outsourcing | paper_record",
  "data_items": [
    {
      "item_name": "",
      "found_in": "",
      "source_quote": "",
      "matched_criteria": "",
      "sensitive_flag": false,
      "purpose_of_use": { "text": "", "source": "" },
      "retention_period": { "text": "", "source": "" },
      "outsourced_to": { "text": "", "source": "" },
      "storage_location": { "text": "", "source": "" }
    }
  ],
  "policy_matching": [
    {
      "item_name": "",
      "extracted_purpose": "",
      "matched_policy_purpose": "",
      "match_status": "matched | partial | no_matching_purpose"
    }
  ],
  "missing_information": [],
  "candidates_to_review": [],
  "changes_from_previous": [],
  "questions_to_department": [],
  "extraction_warnings": []
}

source_quote(文書の原文)を必ず残します。 「氏名を扱っている」とだけ書かれても、担当者は確かめられません。どの文書のどこにそう書いてあるかが必要です。

missing_information が、この構成でもっとも価値のある出力です。 「この項目について、保管期間の記載がどこにもない」という事実が分かります。これが、担当部門に聞くべきことです。

match_status: no_matching_purpose は、公表内容との食い違いの候補です。 違反の断定ではありません。法務が評価します。

changes_from_previous には、前回の棚卸からの変化を入れます。 「新しい項目が3つ増えている」「委託先が1社追加されている」といった差分です。

なお、Claude API には出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があります(2026-09-17時点ではベータ機能として提供)。項目が多い出力なので、利用できると形の崩れを防げます。

Step8

システムへ連携する

つなぐ先内容
SharePoint仕様書・手順書・契約書の取得、結果の保管
SharePoint リスト(台帳)個人データ管理台帳の更新
自社サイトプライバシーポリシーの取得(公表内容)
Teams / Outlook担当部門への確認依頼
情報システムの契約台帳SaaSの一覧の取得

プライバシーポリシーの改訂を自動化しないでください。 公表文書であり、改訂には法務の確認と、場合によっては経営の承認が必要です。

台帳の更新は、担当部門の確認を経てから行ってください。 文書から抽出しただけの内容を台帳に入れると、「文書には書いてあるが実際には使っていない項目」が台帳に残ります。

Step9

人が確認する

すべての抽出結果を、担当者と法務が確認します。

確認する点誰が
1抽出された項目が、実際に扱っているものか担当部門
2missing_information の内容(利用目的・保管期間・委託)担当部門
3candidates_to_review(個人データに当たるかの判断)法務
4sensitive_flag が立った項目法務
5match_status: no_matching_purpose の評価法務
6台帳への登録内容法務・情報システム
7プライバシーポリシーの改訂の要否法務(必要に応じて弁護士)

3〜5と7は、法的な評価です。 この構成の外側にあります。材料をそろえることで、法務がそこに時間を使えるようにする、というのが狙いです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
仕様書が存在しないDB定義だけで処理する。「仕様書なし」を台帳に記録する
カラム名が col_01 のような命名手がかりにならない。担当部門へのヒアリングに回す
利用目的の記載が見つからないnull とし、missing_information に挙げる。「通常は〜」と補わない
個人データに当たるか判断が分かれる項目candidates_to_review に入れる。法務が判断する
要配慮個人情報に当たりうる項目sensitive_flag を立てる。断定しない
公表内容に対応する利用目的がないno_matching_purpose として法務に回す。違反と書かない
委託契約書に個人データの範囲の記載がないmissing_information に挙げる。契約の見直しの対象になりうる
部門が個別に契約しているSaaS契約台帳に載っていない。経費精算からの洗い出しを別に行う
保管期間を過ぎたデータが残っている台帳に記録し、削除の要否を担当部門と確認する
前回の棚卸から項目が増えているchanges_from_previous で示す。増えた経緯を確認する
開示請求が来た台帳から該当システムを特定する。この構成の直接の目的ではないが、台帳があれば速くなる
海外のサービスにデータを渡している外国にある第三者への提供に当たりうる。法務に必ず回す
Step11

記録を残す

  • 参照した文書の一覧(版数と日付つき)
  • 抽出結果と、その原文
  • 担当部門の確認結果(実際に扱っているか)
  • 法務の評価と、その判断日
  • 台帳の更新履歴
  • プライバシーポリシーの改訂履歴
  • 次回の棚卸の予定日

「法務の評価と判断日」を必ず残してください。 個人情報保護委員会からの照会や、本人からの開示請求があったときに、「いつ、何を確認して、どう判断したか」を説明する必要が生じることがあります。

台帳そのものが機密情報です。 「どのシステムに、どんな個人データがあるか」の一覧は、攻撃者にとって価値の高い情報です。 閲覧権限を厳しく設定してください。

04実装レベルの3段階

最小構成:仕様書と社内基準を生成AIに渡し、個人データの項目を抽出させる / 抽出
半自動化:棚卸の対象を登録すると、文書の収集・抽出・公表内容との照合までを自動化する / 収集・抽出・照合
本格構成:上記+新システム導入時・委託先追加時の自動起票+前回との差分+次回棚卸の期限管理 / 評価以外のすべて

本格構成に価値があります。 半自動化だけだと、「新しく増えたもの」を拾う仕組みがないため、棚卸のたびに知らないシステムが見つかります。 導入時に記録する仕組みを入れて初めて、台帳が実態に追いつきます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
15 件
1件あたり現在時間
160 分
1件あたり導入後時間
50 分
現在  15件 × 160分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 15件 × 50分 ÷ 60 = 12.5 時間/月
月間削減時間
27.5h
削減率
69%
年間削減時間
330h
年間金額換算(時間単価4,000円)
132万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 個人データを扱うシステムや業務が20件以上ある企業。システムの仕様書や業務手順書が文書として残っていること。プライバシーポリシーを公表していて、その内容と実態を照合したいこと。
向いていない
  1. 扱う個人データが従業員情報のみで、システムが数件の場合。すでに個人情報の管理台帳が整備され、更新の運用が回っている場合。仕様書も手順書も存在せず、担当者の記憶だけで運用している場合(先に文書化が必要)。

07最小構成で試す方法

  1. 個人データの項目の社内基準を作る(氏名、住所、電話番号、メール、生年月日、社員番号、顔写真、…)
  2. システムを1つ選ぶ(個人データを多く扱うもの
  3. そのシステムのDB定義または仕様書を用意する
  4. 社内基準と一緒に生成AIに渡し、個人データの項目を抽出させる
  5. 情報システムの担当者が把握している項目と比べる

見るのは次の4点です。

見る点判断
担当者が把握していなかった項目が出てきたか出てくれば、この構成には価値があります
個人データに当たるかを断定していないかしていたら、プロンプトを強める。ここが最重要
「問題ありません」と書いていないか書いていたら同上
出典(文書の該当箇所)が示されているか示されていなければ確かめられない

次に、公表内容との照合を試します。

  1. 自社のプライバシーポリシーの利用目的を1件ずつに分ける
  2. 抽出した項目の利用目的と照らし、対応する記載があるかを見る
  3. 対応が見つからない項目が何件あるかを数える

8の件数が、この構成を作る理由になります。 対応が見つからない項目が複数あるなら、プライバシーポリシーの見直しが必要な可能性があります。

この検証は、法務と一緒に行ってください。 出てきた結果の評価には法的な判断が要ります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが個人データに当たるかを判断する社内基準に照らすだけにする。判断に迷うものは法務に回す。最重要
「問題ありません」「適法です」と書かれるプロンプトで禁止する。判断を省かせる原因になる
要配慮個人情報に当たると断定する「該当の可能性あり」の印にとどめる
記載がない項目を「通常は〜」で埋める禁止する。missing_information に挙げる
出典が示されず確かめられないsource_quote を必須にする
仕様書がないシステムを飛ばすDB定義だけでも処理する。なければヒアリングに回す
部門が個別契約しているSaaSが漏れる経費精算から支払いを洗い出す。契約台帳だけでは足りない
年1回の一斉棚卸にする四半期で一巡させる。負荷の集中を避ける
新システム導入時に記録する仕組みがない導入の申請に個人データの項目を組み込む。棚卸が軽くなる
台帳の閲覧範囲が広すぎる厳しく限定する。攻撃者にとって価値の高い情報
プライバシーポリシーの改訂案をAIに書かせる禁止する。公表文書は法務が書く

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: システムの仕様書、データベース定義、業務手順書、委託契約書、プライバシーポリシー。「どこに、どんな個人データがあるか」の一覧は、組織のもっとも機微な情報の一つです。

  1. 台帳そのものの機密性 … 個人データの所在を示す台帳は、攻撃者にとって最も価値の高い情報です。 閲覧権限を法務・情報システムの限られた担当者に限定し、アクセスログを取ってください
  2. 外部AIへの入力可否 … 仕様書とDB定義を外部サービスに送ることになります。これは自社のシステム構成を外部に出すことです。 自社の情報管理規程を確認してください。テナント内で処理が完結する構成を選ぶ判断は、この用途では特に合理的です
  3. 個人データそのものを送らない … 送るのは仕様書・定義書であり、実際の個人データではありません。 サンプルデータが仕様書に含まれている場合は、除いてから送ってください
  4. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。必須条件です
  5. 法的評価を委ねない … 個人情報保護法の解釈は、改正とガイドラインの更新で変わります。AIの学習時点の理解に基づく判断を、根拠にしないでください
  6. 記録の保存 … 棚卸の結果と法務の判断は、個人情報保護委員会からの照会や本人からの請求に備えて保存してください。 保存期間は自社の規程に従います
  7. 委託先の管理 … 個人データの取扱いを委託する場合、委託先の監督が求められます。この構成は委託先の一覧を作るところまでで、監督そのものは別の業務です
  8. 自動実行してよい範囲 … 抽出と照合までです。個人データに当たるかの判断、法令適合の評価、プライバシーポリシーの改訂、台帳の確定は、必ず人(法務)が行います

誤りが起きた場合のリスクは、公表内容と実態のずれの見落としです。本人からの指摘や個人情報保護委員会からの照会があったときに、説明できない状態になります。 判断の根拠と日付を残してください。

10まず何から始めるか

1週目:個人データの項目の社内基準を作る

法務が中心となり、「何を個人データとして扱うか」の基準を文書にします。判断が分かれる項目(社員番号、IPアドレス、閲覧履歴、位置情報)について、自社としての扱いを決めてください。

技術より先にここを決めてください。 基準がないと、抽出結果を評価できません。

2週目:対象の一覧を作る

個人データを扱いうるシステム・業務・委託先を洗い出します。情報システムの契約台帳だけでなく、経費精算からSaaSへの支払いを拾ってください。 部門が個別に契約しているものが見つかります。

3週目:1システムで抽出を試す

個人データを多く扱うシステムを1つ選び、DB定義または仕様書から項目を抽出させます。担当者が把握していなかった項目が出るかを確かめてください。 あわせて、個人データに当たるかを断定していないかを必ず確認してください。

4週目:公表内容との照合を試す

プライバシーポリシーの利用目的を1件ずつに分け、抽出した項目と照らします。対応が見つからない項目の件数を数えてください。 法務と一緒に評価します。

2か月目:四半期の棚卸を回す

45件のうち15件について、この仕組みで棚卸を行います。160分が何分になるかを実測します。

3か月目以降: 新システム導入時と委託先追加時の自動起票を追加します。これが入って初めて、台帳が実態に追いつきます。 棚卸は「増えたものを確認する」作業に変わります。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-17/最終更新:2026-09-17
確認した内容情報源確認日
個人情報取扱事業者が、保有個人データに関し、①事業者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名、②すべての保有個人データの利用目的、③開示等の請求等に応じる手続(手数料の額を含む)、④保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項として政令で定めるもの、を本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければならないこと。本人から保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、遅滞なく通知しなければならないこと個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)2026-09-17
Make に Anthropic Claude アプリと Google Drive アプリがあり、文書を取り込んで Claude で処理するシナリオを組めることMake: Anthropic Claude and Google Drive Integration2026-09-17
Claude API に、出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があること(2026-09-17時点ではベータ機能)Claude Platform Docs: Structured outputs2026-09-17

ある情報が個人情報・個人データ・保有個人データ・要配慮個人情報のいずれに当たるかの判断、および個人情報保護法への適合の評価は、法務部門および弁護士の判断によります。 この構成はその判断を行うものではありません。利用目的の公表方法、委託先の監督、外国にある第三者への提供の取扱いについては、個人情報保護委員会のガイドラインおよび最新の法令を確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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