AIOpsとは何を自動化する仕組み?|運用の異変に先に気づく

AIOpsとは何を自動化する仕組み?|運用の異変に先に気づく

「夜中に通知が120件鳴って、朝に開いたら全部が同じ1つの原因からでした。当番は3人で回しているのに、鳴る数だけが毎月増えていきます」「運用にAIを入れる話が出ていますが、止めるか止めないかをAIに決めさせるわけにはいきません。結局どこまでを任せる話なのかが、誰の説明からも出てきません」。この2つは別々の心配のように見えて、同じ1点でつながっています。鳴る数も、任せる範囲も、決まっていないまま話が進んでいる。株式会社ボスコ・テクノロジーズが2025年11月12日から13日に、運用にAIを使う仕組みを導入している企業の情報システム担当者110名に実施し、2026年5月に公表した調査では、導入して業務の負荷が減ったと答えた割合は75.4%(大幅に減った24.5%、やや減った50.9%)でした。同じ調査で、AIの誤検知や誤動作が起きていると答えた割合は66.4%、その対応が負担になっていると答えた割合は89.0%です。負荷が減ることと、負担がなくなることは別に動いています。減ったのは目で追う作業で、増えたのはAIの出した結果を確かめる作業だからです。この記事では、運用の作業を「気づく」「切り分ける」「直す」「記録する」の4つに割り、どこをAIに寄せられるのか、どの決定を人が握り続けるのかを、手をつける順番まで含めて書きます。


カメ先生カメ先生

運用にAIを入れると聞くと、障害を自動で直す仕組みだと思われがちですが、いま実際に効いているのは、もっと手前の工程です。鳴った通知を束ねて、人が見るべき件数まで落とす。ここが詰まっているせいで、その先の予兆や自動の対処に手が届かないままになっている会社が多いのです。


カメ子カメ子

通知を減らすことと、束ねることは違うのでしょうか。


カメ先生カメ先生

違います。減らすのは鳴らないようにすること、束ねるのは鳴った事実を残したまま1件として見せることです。減らす側に寄せると、見落としが起きた事実そのものが記録から消えるので、しきい値の直し方が分からなくなります。


カメ子カメ子

束ね方が間違っていたときは、元の1件までさかのぼれるということですか。


この記事のポイント
  • 寄せられるのは「気づく」と「切り分ける」が先で、「直す」は最後。順番を逆にすると、根拠のない対処が先に動き出す
  • 通知は減らすのではなく束ねる。束ねる条件は、時間の幅と同じ系統と同じ症状の3つで書き、束の元の1件に戻れる形にしておく
  • 止めるか縮退させるかの決定、社外に知らせる判断、復旧手順の実行承認の3つは人が握る。AIには根拠を並べさせ、人が読んで決める

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目次

運用にAIを組み込むとは、記録から異変を見つけて対応の一部を任せる考え方

運用の現場には、絶えず3種類のものが流れています。1つ目は機器やアプリが書き出す記録、2つ目は決まった間隔で測っている数値(使用率、応答の速さ、待っている件数)、3つ目は状態が変わったときに飛ぶ通知です。運用にAIを組み込む仕組みは、この3種類をまとめて受け取り、平常時の形と照らして外れているものを出し、関係のある事象を1件にまとめ、原因の候補と対処の候補を並べるところまでを担います。呼び名は複数ありますが、指している範囲はほぼこの4つです。

従来の監視との違いは2つに絞れます。1つ目は、しきい値を人が書かなくても平常時の形から外れを出せること。2つ目は、別々に鳴った通知の間の関係を見て1件にまとめられることです。注意したいのは、この2つが逆向きに働く点です。1つ目は候補を増やすので、放っておくと鳴る数が増えます。2つ目は数を落とします。同じ仕組みの中で、増やす働きと減らす働きが同時に動いているので、どちらを先に効かせるかを決めずに入れると、鳴る数は前より増えます。

扱う範囲の線引きも先に言っておきます。ここで書くのは、社内で動かしているシステムそのものの様子を見て、対応の一部を任せる話です。作った生成AIの仕組みを毎週回していく体制の話(当てる問いの束、版の追いかけ方、費用の見方、当番の置き方)は別の仕事で、そちらは作った後に回す仕事として整理する必要があります。動いているAIの様子が外から見える状態を作る話も、向きが逆の別の作業です。この記事は、運用の側にAIを使う一方向だけを扱います。

運用が壊れるのは障害の日ではなく、通知が鳴りすぎて誰も見なくなった日

運用が回らなくなる瞬間は、大きな障害が起きた日ではありません。鳴る数が、人が確かめられる数を超えた日です。1人の当番が1回の勤務で内容まで確かめられる通知は、経験的に数十件が上限です。100件を超えると、開く前に件名だけで捨てる判断が始まります。この時点で監視は機能を止めていますが、通知は止まっていないので、外からは正常に見えます。

規模の大きい業界の数字を見ると、母数の感覚がつかめます。金融庁が2026年7月に公表した「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」は、2025年4月から2026年3月までに金融機関から受領した障害の報告を分析しており、その脚注で報告件数は約1,600件と書いています(2026年3月時点で調査中・未記入の約100件は集計の対象外)。事象別の割合は、ソフトウェアの不具合が39.2%、設定の誤りや操作の誤りといった管理面・人的要因が29.3%で、この2つで全体の約7割を占めます。機器の故障は6.7%にとどまり、主因ではないという点が重要です。

同じレポートの事例集には、監視が置かれていたのに気づけなかった型が載っています。ある障害の原因として「正常性の監視において、接続を保持する表の数が許容量を超えていることを検知できなかった」と記されており、対策として「接続の数が許容量を超えた場合の検知の実施」が挙げられています。別の事例では、外部の委託先の内部で部署をまたぐ連絡がうまくいかず、復旧の対応に時間を要したと書かれています。見ていなかったのではなく、見る対象の一覧に入っていなかった。鳴りすぎている状態は、この抜けを見つけにくくします。

通知が多いのではなく、同じ原因の通知が別々に届いている

120件の通知が、120個の問題を意味していることはまずありません。1つの機器が応答しなくなると、その機器を見ている監視から1件、その機器につながっているアプリから数件、そのアプリを使う業務の側から数件、外向けの応答を測っている仕組みから数件と、依存関係の下から上へ順番に鳴っていきます。さらに再試行の設定が入っていると、同じ通知が数分おきに繰り返されます。数が増えるのは、問題が増えたからではなく、1つの問題が経路の数だけ姿を変えて届くからです。

この構造は数えられます。直近1か月の通知を、障害として記録された原因の側と突き合わせ、1件の原因に対して何件の通知が出たかを系統ごとに割り算します。この比が10を超える系統から手をつけると効きます。比が1に近い系統は、束ねる余地がないので触りません。数える材料は、通知の履歴と障害の記録という既にある2つだけで足ります。新しく調査を企画する必要はありません。

先の調査で、導入後に軽くなった作業を尋ねた設問(回答83名・複数回答)では、1位が記録の目視確認が67.5%、2位が定型の監視レポートの作成が61.4%、次に深夜と休日の通知対応、一次の切り分け、記録とチケットの管理、原因の調査と分析がいずれも53.0%で並びました。上位2つは、どちらも人が目で追っていた作業です。関係部署への報告と連絡は33.7%にとどまっており、軽くなったのは見る作業で、伝える作業はあまり動いていないことが読み取れます。

束ねる条件は、時間の幅と同じ系統と同じ症状の3つで書く

束ねる規則は、3つの条件の組み合わせで書きます。時間の幅は、何分以内に届いたものを同じ束とみなすか。同じ系統は、依存関係の上でつながっているかどうか。同じ症状は、失敗の種類が同じかどうかです。3つのうち1つでも抜くと、束ね方が乱暴になります。時間の幅だけで束ねると、たまたま同時刻に起きた無関係な2件が1件に見えます。系統だけで束ねると、朝の障害と夕方の障害が同じ束に入ります。

それぞれの決め方には目安があります。時間の幅は、その系統でいちばん間隔の長い再試行より少し長く取ります。再試行が3分おきなら5分、10分おきなら15分です。系統は意見で決めず、機器からアプリ、アプリから業務という台帳の並びをそのまま使います。症状は通知の文面で分けるとうまくいきません。文面は製品ごとに違うので、つながらない、遅い、返ってきた答えが違うの3種類に寄せ直してから比べます。

束ねた後に必ず残すものが3つあります。束の代表として選んだ1件、束ねた元の件数、そして元の1件1件へ戻れる参照です。3つ目が抜けている実装をよく見かけます。戻れないと、束ね方の誤りを後から直せません。無関係な2件を1件にまとめてしまったとき、まとめられて消えた側が何だったのかを確かめる手段がなくなり、規則の直しようがなくなります。束ねは可逆な操作として作ります。

「外れている」と「これから壊れる」は、別の仕組みとして分ける

この2つは同じ言葉で語られがちですが、入力も出力も別です。外れているかどうかを見る仕組みは、いまの値が平常時の分布から離れているかを判定します。出るのは「いま、ふつうではない」という事実です。これから壊れるかどうかを見る仕組みは、値の動き方から先の状態を推し量ります。出るのは「この先、限界に届きそうだ」という見込みです。前者は現在の話で、後者は未来の話です。混ぜると、外れの通知を予兆と呼び、当たり外れの評価ができなくなります。

先を読む側が成り立つには条件があります。同じ壊れ方が過去に複数回起きていて、その手前の数値の動きが記録に残っていることです。記録が3か月しかない環境では、月末の締めのときだけ起きる壊れ方の手前は学べません。四半期に1回の処理で起きる型なら、1年以上の記録が要ります。ここを飛ばして先を読む仕組みから入れると、それらしい見込みが毎日出るのに、当たったかどうかを誰も判定できない状態になります。

先の調査には、この順番の取り違えが数字で出ています。導入の目的を尋ねた設問(回答110名・複数回答)では、障害の予兆検知を強化するためが47.3%で挙がっています。ところが、実際に軽くなった作業を尋ねた設問の選択肢と結果には、先を読むことに相当する項目が1つも出てきません。軽くなったと答えられたのは、記録の目視確認と定型のレポート作成という、いまを見る作業の側だけでした。目的の側では先を読む期待が高く、成果の側では現在を見る作業が動いている。この差が、導入の順番を決める材料になります。

誤検知と見逃しは、同時には減らせないという前提から始める

1本の基準で判定している限り、誤検知と見逃しは片方を減らすと片方が増えます。基準を厳しくすれば、鳴らなかった本物が増える。緩めれば、鳴った空振りが増える。この関係は仕組みの出来とは別に成り立つので、両方を同時に減らすには基準の本数を増やすしかありません。応答の速さだけで判定していたところに、失敗した件数の比と、待っている件数の増え方を足す。観点が3つになると、1つだけが外れている状態と3つが同時に外れている状態を分けられます。

どちらを先に許すかは、運用の側では決められません。業務の持ち主が決めることです。金額が動く処理や、外部に約束した時間がある処理は、見逃しを許さない側に寄せます。空振りが増えても、鳴らなかったほうの損が大きいからです。社内の参照だけに使う仕組みは逆に寄せます。この線を先に引かずに調整を始めると、鳴りすぎたという苦情が来るたびに基準が緩み、半年後には何も鳴らない状態になります。

空振りが減らない原因の多くは、基準ではなく平常時の形を1つしか持っていないことにあります。平日の昼と深夜、月末の締めの日と月の中日、大きな案内を出した直後とふだんの日は、それぞれ別の形です。1つの形にまとめると、月末の正常な混み方が毎回外れとして鳴ります。曜日と時刻、月内の位置、社内の予定表にある大きな行事の3つで形を分けて持たせるだけで、空振りは目に見えて減ります。基準の置き方そのものは、計器を置く側の記事で扱った領域なので、ここでは形を分ける観点だけを挙げておきます。

誤検知が出た日に、誰が何をどこに書くか

空振りは必ず出ます。問題は、出た後に何が残るかです。先の調査で、誤検知や誤動作にどう対応しているかを尋ねた設問(回答73名・複数回答)では、事後に結果を検証している64.4%、その都度手作業で停止し修正している63.0%、実行の前に人が内容を確認している61.6%が並ぶ一方、誤動作を記録して設定を調整しているは39.7%にとどまりました。手で直す人は6割を超えているのに、直した内容を設定に返している人は4割弱です。同じ空振りが翌週も出る理由は、ここに全部あります

書く項目は3つに絞ります。どの通知だったかなぜ誤りと判断したか次に同じものが来たらどう扱うか。1件あたり3行です。項目を増やすと、当番の勤務中に書き切れず、書かれない記録になります。3行でも、2つ目が入っていれば規則を直せます。誤りと判断した理由は、その場で見た画面と、比べた別の数値の2つを書けば足ります。

書く人は、誤りと判断した本人に限ります。翌朝に引き継いだ人が代わりに書くと、判断の理由が落ちて、事象の説明だけが残ります。そして月に1回、同じ空振りが何回出たかを数えて上位3件だけを直します。全部直そうとすると着手しないまま次の月が来ます。同じ調査で、誤動作への対応が負担になっていると答えた割合は89.0%(非常に35.6%、やや53.4%)でしたが、負担の中身は1件あたりの重さではなく、同じ判断を何度も繰り返していることの側にあると考えるほうが実態に近いはずです。

運用の作業を4つに割ると、AIに寄せられる場所が決まる

運用の仕事は「気づく」「切り分ける」「直す」「記録する」の4つに割れます。この4つは寄せられる度合いがはっきり違うので、割らずに「運用を自動化する」と書くと、いつまでも着手できません。下の表は、4つそれぞれについて、任せられる範囲と人に残るものを並べたものです。

作業中身AIに寄せられる範囲人に残るもの
気づく記録と数値と通知を見て、ふだんと違う状態を見つける束ねること、平常時の形との比較、順位付け。ここがいちばん寄せやすい見る対象の一覧に何を入れるかの決定
切り分けるどこが原因かを絞り、影響が出ている範囲を確かめる原因の候補を並べる、同時に起きた事象を集める、除外した候補と理由を書く候補のどれを採るかの決定と、範囲の確定
直す止める、切り替える、戻す、作り直す手順の下書き、戻せる作業の実行、実行後の確認実行してよいという承認と、止めるか縮退させるかの決定
記録する何が起きて何をしたかを残し、社内と社外に伝える経過の時刻順の整理、報告の下書き、同種の過去事例の抽出社外に出す文面と、伝える相手と時期の判断

表の並びは、そのまま着手の順番になります。いちばん上から寄せて、下は最後に回す。理由は、上の2つは間違えても記録が残るだけで済み、下の2つは間違えると社外に影響が出るからです。先の調査で軽くなった作業の上位が、記録の目視確認と定型のレポート作成だったのは、表の1行目と4行目の一部が実際に動いている姿だと読めます。

4行目には落とし穴があります。経過の整理と下書きは寄せやすいのに、寄せた結果として点検の仕事が増える点です。下書きは早く出てきますが、時刻の取り違えや、実際には試していない手順が混ざることがあります。社外に出す前に読み合わせる工程を置かないと、間違った経過が公式の記録として残ります。同じ調査では、AIの操作の記録について、すべての操作が詳細に記録されていると答えたのが46.4%、主要な操作のみが31.8%、記録はあるが詳細が不十分が11.8%でした。あとから説明する立場になったとき、この差がそのまま説明できる範囲の差になります。

人が握り続ける3つの決定は、止める、知らせる、直す許可

任せる範囲を決める議論は、たいてい「どこまで自動化するか」から始まって結論が出ません。逆から決めると早く終わります。人が握り続ける決定を3つ名指しして、それ以外を候補にするのです。3つとは、止めるか一部を落として動かし続けるかの決定、顧客や取引先に知らせるかと、いつどの文面で知らせるかの判断、そして復旧の手順を実行してよいという承認です。共通点は、間違えたときに戻す先が自社の外か契約の側にあることです。

先の調査で、AIに業務を任せることへの抵抗の理由を尋ねた設問(回答67名・複数回答)では、誤動作が起きたときに誰が責任を取るのかが不明確が68.7%どのような根拠でAIが判断したのか分からないが55.2%で上位に並びました。制御できなくなりそうが53.7%、想定外の動作に対応できないが52.2%と続きます。上位2つはどちらも、動作そのものではなく決定の手前にある問題です。だから打ち手は「判断させない」ではなく、判断の材料を書かせて、人が読んで決める形にすることになります。

根拠として並べさせる項目は4つで足ります。この4つが揃っていれば、当番の人が3分で読んで決められます。

  • 見ている数値と、その時刻。いつからいつまでの値を見て、ふだんの何倍になっているか
  • 比べた平常時の形。同じ曜日と時刻のふだんの範囲と、いま外れている幅
  • 同じ束に入っている事象。何件を1件にまとめたか、束ねた条件は時間の幅か系統か症状か
  • 除外した候補と、その理由。もっともらしいのに採らなかった原因を、なぜ外したか

4つ目が最も効きます。候補を並べるだけの出力は、読む側に判断の材料を渡しません。外した理由が書かれていると、読んだ人が別の見立てを持ったときに、どこで見解が分かれたのかが特定できます。運用の場では、これが引き継ぎの質を決めます。

決める人と時間も、事前に1枚に書いておきます。夜間の当番が単独で決められるのはどこまでか。止めるか縮退させるかは当番が決めてよい、社外に知らせる判断は当番では出せない、という線は多くの会社で成り立ちます。この線が引かれていないと、当番は誰かに連絡が付くまで何もしません。連絡を待っている時間が、そのまま復旧までの時間に加算されます。

導入の順番は、集める、束ねる、予兆、自動の対処

この4段は、上の段が終わっていないと下の段が作れません。順番を守れば、費用がかかるのは最後の1段だけになります。逆から始めると、途中で上の段の議論が始まって工程が止まります。

STEP1
記録と数値を1か所に集める

機器、アプリ、業務の仕組み、外向けの応答を測っている仕組みから、記録と数値を1か所に寄せます。ここで確かめるのは、時刻がそろっているかの1点だけです。時計が数秒ずれているだけで、事象の前後関係が入れ替わります。集める期間は、いちばん間隔の長い業務の周期の3倍を目安にします。月末に起きる型を扱うなら3か月では足りず、1年は要ります。

STEP2
同じ原因の通知を束ねる

時間の幅と同じ系統と同じ症状の3条件で規則を書き、1件の原因に対する通知の数がいちばん多い系統から適用します。合図は、当番1回の勤務で内容まで確かめられる件数まで落ちることです。件数が落ちても、束の元に戻れない実装になっていたら、この段は終わっていません。

STEP3
平常時の形を分けて持ち、外れを出す

曜日と時刻、月内の位置、社内の予定表にある行事の3つで形を分けます。ここで出るのは「いま、ふだんと違う」であって、先の見込みではありません。1か月は鳴らすだけで、対処には結びつけない。空振りの傾向が見えてから、鳴らす基準を絞ります。

STEP4
先を読む仕組みと、自動の対処を足す

同じ壊れ方が複数回記録に残っている型だけを対象にします。自動の対処は、戻せる作業から1つだけ選んで始めます。1つ目で承認の記録が残る形を作ってから、2つ目を足す。ここまで来ると、費用も外部への委託も具体的に見積もれます。

STEP5
順番の外に置くもの

業務の持ち主が決める重要度の一覧と、人が握る3つの決定の線引きは、この4段のどこにも属しません。1段目と並行して先に書いておきます。後から書こうとすると、4段目の直前で工程が止まります。

1段目から3段目までは、新しい道具を買わずに進められる部分がかなりあります。必要なのは、時刻の合った記録、依存関係の台帳、通知の履歴、そして社内の予定表です。先の3段は道具ではなく整理の仕事で、費用がかかる4段目は前の3段が終わっていれば短く済みます。予算の説明としても、この順番のほうが通りやすくなります。

自動で直させてよい作業と、承認を挟む作業の線引き

線を引く基準は3つです。戻せるか影響が1つの機器の中に閉じているかやったことが後から確かめられる形で残るか。3つとも満たす作業だけを自動の側に置きます。1つでも欠けたら承認を挟みます。下の表は、現場で判断が分かれやすい作業を並べたものです。

作業扱い理由
予備がある構成の1台を再起動する自動でよい戻せて、影響が1台に閉じ、いつ実行したかが残る。最初の1つに向く
一時的な置き場の古い中身を消す条件付きで自動消す対象の条件を先に固定し、消した一覧を残すなら自動でよい。条件を広げるときは承認を挟む
処理する台数を増やす条件付きで自動上限の台数と、増やしてよい時間帯を先に決める。費用が動くので、上限を超える増やし方は承認を挟む
設定を前の版に戻す承認を挟む戻せる作業に見えて、戻した先の版が別の不具合を持っていることがある。どの版に戻すかは人が選ぶ
失敗した処理をやり直す承認を挟む二重に処理される可能性がある。金額や在庫が動く処理は、影響の範囲を人が確かめてから
通信の経路を切り替える承認を挟む影響が1台に閉じない。切り替えた先が混んでいると、範囲が広がる
顧客や取引先に知らせる人だけが行う戻せない。文面と時期の判断は、人が握る3つの決定の1つ

表の2行目と3行目が「条件付き」になっているのは、同じ作業でも条件の広さで危なさが変わるからです。消す対象を「7日より前の一時的な中身」と固定してあれば安全ですが、「容量が足りないときに古いものから消す」と書くと、消してよくないものが対象に入る余地が生まれます。自動の対処は、作業の名前ではなく条件の書き方で危なさが決まります。条件を広げる変更は、それ自体を承認の対象にします。

実行の記録に何を残すかも、この段で決めます。いつ、どの判断に基づいて、どの作業を、どの範囲に実行したかの4つです。4つ目が抜けている実装が多く、後から「どの機器に対して実行されたのか」を追えなくなります。先の調査で、AIの操作がすべて詳細に記録されていると答えたのが46.4%だったことを踏まえると、記録の設計は道具の初期設定に任せず、こちらから4項目を指定するほうが確実です。

効果は、気づくまでの時間と復旧までの時間と、見られた通知の割合で測る

測る数は3つで足ります。1つ目は異変が起きてから人が把握するまでの時間、2つ目は把握してから業務が戻るまでの時間、3つ目は鳴った通知のうち、人が中身まで確かめた割合です。3つ目は見落とされがちですが、いちばん早く動き、いちばん正直な数です。1つ目と2つ目は障害が起きないと測れませんが、3つ目は毎日測れます。

1つ目の数え方には注意が要ります。束ねを入れた後、起点を束の代表1件の時刻に置くと、時間が短くなったように見えます。実際には、束に入った最初の1件が鳴った時刻が起点です。ここを取り違えると、束ねただけで数字が改善したという報告ができてしまい、次の段への判断を誤ります。起点は束の中の最も早い時刻で固定し、この定義を1行で書き残しておきます。

4つ目に置きたい数が1つあります。同じ原因の再発の回数です。時間が短くなっても再発が減っていなければ、速く手当てできるようになっただけで、原因は残っています。3か月ごとに、原因が同じ障害を数えて並べます。上位に同じものが残り続けているなら、その系統は自動の対処を足す対象ではなく、作り直しの対象です。この見分けは、時間の数字だけでは絶対に出てきません。

記録が足りないまま先に進む型が、いちばん多い失敗

失敗の型は、どれも進んでいる感じがするところが共通しています。仕組みは動き、画面は増え、報告には新しい言葉が並びます。増えないのは、人が中身まで確かめた通知の割合だけです。

  • 記録がそろっていないのに先を読む仕組みから始める。3か月分の記録で月末に起きる型を学ばせようとして、当たったかどうかを判定できない見込みが毎日出る
  • 通知を止めただけで終わる。鳴る数は減るが、鳴らなかった本物も一緒に消える。しかも消えた事実が記録に残らないので、止めすぎたことに半年間気づけない
  • 自動の対処から始める。予備のない機器を再起動させる設定を最初に入れて、業務時間中に止まる。戻す判断をする人が決まっていないので、止まっている時間が延びる
  • 空振りを手で直すだけで、設定に返さない。同じ空振りが翌週も出る。当番が替わると、また同じ判断を最初からやり直す
  • 全系統に同時に入れる。関係者が増えて日程が合わず、どの系統でも1段目が終わらない。まず、1件の原因に対する通知の数が最も多い系統1つに絞る
  • 重要度を機器の側だけで決める。申込みの画面が止まっても優先度が低いままになり、業務の側から見て順番が逆になる

2つ目の型は、いちばん静かに進みます。鳴りすぎている状態への対処として、通知を止める設定は手軽で、効果がすぐ数字に出ます。しかし止めた通知の一覧と止めた理由が残っていないと、次に同じ系統で障害が起きたときに、鳴らなかったのが設定のせいなのか仕組みのせいなのかが分かりません。止めるなら、止めた対象と理由と、いつ見直すかの3つを同じ場所に書く。これがあれば、止めるという選択自体は悪くありません。

3つ目の型を避ける具体的な方法は1つだけです。自動で直させる作業の1つ目を、業務時間外に、予備のある構成で、戻せる作業から選ぶこと。ここで承認と記録の形が動くのを確かめてから、2つ目を足します。1つ目を業務時間中の重要な系統で試すと、うまくいっても誰も評価せず、失敗すると全体が止まります。

  • この記事で扱ったのは、運用の側の作業にAIを寄せる話です。動いているAIそのものの様子を外から見える状態にする計器の置き方、作った生成AIの仕組みを毎週回す体制、AIエージェントを直すたびに壊れる箇所を確かめる回帰テストは、いずれも別の作業として扱っており、ここでは順番の説明に必要な範囲でしか触れていません
  • 引用した割合は、株式会社ボスコ・テクノロジーズが2025年11月12日から13日に実施し2026年5月に公表した調査の集計です。対象は、運用にAIを使う仕組みを既に導入している企業の情報システム担当者で、有効回答は110名です。母数が小さく、導入済みの企業に限った調査なので、全企業の平均としては読めません。設問ごとの回答者数(110名、83名、73名、67名)にも差があります
  • 障害の件数と事象別の割合は、金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」(2026年7月公表、2025年4月から2026年3月までに受領した報告の分析)の記載です。金融機関から報告された障害に限った数で、業界全体の障害の総数ではありません
  • AI関連の投資の伸びは、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」(東証上場企業とそれに準じる企業4,500社を対象、有効回答957社、調査は2025年9月から10月)の集計です

マーケティング部門が出すべきなのは、止まって困る画面と時間帯の一覧

運用の話は情報システム部門の内側で進みがちですが、通知の優先度を決めるところだけは業務の側が関わらないと必ずずれます。理由は単純で、機器の重要度と業務の重要度が一致していないからです。台帳の上では代替のある小さな仕組みでも、そこに申込みの画面が乗っていれば、止まった30分の損は大きくなります。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2026」では、IT予算が増える理由にAI関連の投資と利用料の増加を挙げた割合が、2025年度計画の36.3%から2026年度予測の43.7%へ7.4ポイント上がりました。運用に寄せる投資が増えるほど、優先度の付け方を決める場面が増えます。

マーケティング部門が出せる材料は3つです。止まって困る画面の一覧、それぞれが特に困る時間帯、その画面が止まったときに気づく人の名前。3つ目が要ります。画面の名前だけを渡すと、止まった通知が情報システム部門の中で止まり、案内の停止や代替の窓口の用意といった業務側の手当てが遅れます。同じ調査では、言語系の生成AIを導入済みと答えた企業が33.9%、試験導入中と導入準備中を含めて53.4%でした。社内で使う仕組みが増えるほど、止まったときに困る人の範囲も広がります。

時間帯の一覧には、ふだんの繁忙とは別に、こちらが作った混み方を入れます。大きな案内を送った直後の1時間、展示会の会期中、月末の締めの2日間。これは業務の側にしかない情報で、運用の側は知る手段を持ちません。予定を先に渡しておけば、平常時の形を分けて持つ設定にそのまま使えます。渡さなければ、その1時間の正常な混み方が毎回外れとして鳴り、次の月には鳴らないように基準が緩められます。業務の予定を渡さないことが、結果として監視の目を粗くします

よくある質問

従業員が数十人の会社にも、この話は要りますか

要りますが、順番が変わります。人数が少ない会社では、通知を見る人が1人か2人しかいないので、束ねる価値が相対的に大きくなります。逆に、先を読む仕組みは記録の量が足りないことが多く、後回しになります。1段目と2段目だけを先にやり、3段目と4段目は数年分の記録がたまるまで置いておくのが現実的です。人数が少ないほど、通知が1人に集まるので、鳴る数の上限は早く来ます。

いま使っている監視の道具を、入れ替える必要がありますか

1段目と2段目については、入れ替えなくても進む場合が多いです。必要なのは、記録と数値を1か所に出せることと、通知の履歴を後から検索できることの2つだけです。既にある道具がこの2つを満たしていれば、束ねる規則を外側に足す形で始められます。入れ替えの判断が要るのは4段目、つまり自動の対処を足す段階です。入れ替えを先に決めると、決め終わるまで1段目が始まりません。

記録は、どれくらいの期間残せばよいですか

扱う壊れ方の周期で決まります。日次で起きる型なら3か月、月末に起きる型なら1年、四半期の処理で起きる型なら2年以上です。全部を同じ期間残すと費用が跳ねるので、細かい記録は短く、要約した数値は長く残す2段構えにします。1分ごとの細かい値は3か月、1時間ごとにまとめた値は2年、といった形です。先を読む仕組みが使うのは、多くの場合まとめた側の値です。

先を読む仕組みが鳴ったのに何も起きなかったら、外れと数えますか

そのままでは数えられません。鳴った後に人が手当てをしていれば、当たっていたが防いだのか、最初から外れだったのかが区別できないからです。判定するには、鳴った時点で何をしたかを1行残す必要があります。何もしなかった場合だけを外れの候補として数え、手当てをした場合は別に集計します。この1行がないと、先を読む仕組みの精度は永久に測れません。

当番の人数は減らせますか

鳴る数が減っても、すぐには減らせません。減るのは1件あたりの手間で、決める人が要る場面の数は変わらないからです。先に減るのは、深夜に起こされる回数と、朝いちばんに記録を読み直す時間です。人数を見直すなら、束ねを入れて3か月たった後に、当番1回あたりの中身まで確かめた通知の数と、決定を求められた回数の2つを数えてから判断します。

この記事で使った言葉
  • 束ねる:同じ原因から出た複数の通知を、鳴った事実を残したまま1件として見せること。元の1件に戻れることが条件
  • 平常時の形:曜日と時刻、月内の位置、社内の行事で分けて持つ、ふだんの値の範囲。1つにまとめると月末が毎回外れになる
  • 縮退:全部を止めるのではなく、一部の機能を落として動かし続けること。止めるか縮退させるかの決定は人が握る
  • 一次の切り分け:原因の候補を絞り、影響の出ている範囲を確かめる最初の工程。候補を並べるところまでは寄せられる
  • 可逆な操作:やった後で元に戻せる作業。自動で直させる対象は、まずここから1つ選ぶ

まとめ

運用にAIを組み込む仕組みが実際に効いているのは、障害を自動で直すところではなく、鳴った通知を束ねて人が見るべき件数まで落とすところです。120件の通知は120個の問題ではなく、1つの原因が依存関係の経路の数だけ姿を変えて届いた結果です。束ねる規則は、時間の幅と同じ系統と同じ症状の3条件で書き、束の代表1件、束ねた元の件数、元の1件へ戻れる参照の3つを必ず残します。戻れない実装は、束ね方の誤りを直せません。いまふだんと違うことを出す仕組みと、これから壊れる兆しを出す仕組みは別物で、後者には同じ壊れ方が複数回記録に残っていることが条件になります。導入の目的では予兆の強化が47.3%で挙がるのに、実際に軽くなった作業として答えられたのが記録の目視確認67.5%と定型のレポート作成61.4%だったという差は、この条件の順番を示しています。空振りと見逃しは1本の基準では同時に減らせないので、観点の本数を増やし、どちらを先に許すかを業務の持ち主が決めます。空振りが出た日には、どの通知か、なぜ誤りと判断したか、次はどう扱うかの3行だけを本人が書き、月に1回、回数の上位3件を直します。運用の仕事を気づく、切り分ける、直す、記録するの4つに割れば、寄せる順番は上から下です。そして人が握り続ける決定は3つ、止めるか縮退させるか、社外に知らせるかとその時期と文面、復旧手順を実行してよいという承認です。AIには判断させず、見ている数値と時刻、比べた平常時の形、同じ束に入っている事象、除外した候補とその理由の4項目を並べさせ、人が読んで決める形にします。次の一手は、道具を選ぶことではありません。直近1か月の通知を障害の記録と突き合わせ、1件の原因に対して通知が何件出たかを系統ごとに数えてみる。この比が最も大きい系統1つが、今から手をつける場所です。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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