ランチェスター戦略は強者か弱者か|戦う場所の決め方

「うちは中小なので、ランチェスターでいう弱者の戦略ですよね」「大手が同じ領域に入ってきたので、もう勝ち目がありません」——この理論の話になると、この2つはほぼ必ず出てきます。ただ、どちらも前提が1つずれています。体系として整理されている側の定義では、強者と呼ぶのは会社の規模が大きい企業のことではありません。ある戦う場所の中で、順位が1位である企業だけを強者と呼びます。だから同じ会社が、ある領域では強者で、隣の領域では弱者になる。この記事では、強者と弱者を分ける線がどこにあるのかを確かめたうえで、全方位で戦えない会社がどこを捨ててどこに集めるのかを、打ち手の対応表と絞り込みの判断項目まで落として整理します。
カメ先生ランチェスター戦略は、規模の小さい会社のための理論だと思われがちなんだ。でも実際に分けているのは会社の大きさではなく、その戦う場所での順位のほうだね。
カメ子順位というのは、どの範囲で数えた順位なのでしょうか。
カメ先生そこが要点になる。範囲を決めないと順位も占有率も出せないから、この理論を使う作業は、まず「どこを戦う場所と呼ぶか」を決めるところから始まるんだ。範囲を変えれば、同じ会社の立場も変わる。
カメ子強者か弱者かを決める前に、範囲の決め方のほうで結論が動いてしまうのですね。
- 強者と弱者を分けるのは会社の規模ではなく、その戦う場所での順位。同じ会社が領域ごとに立場を変える
- 弱者の打ち手と強者の打ち手は裏返しの関係。相手がどちらの手を取っているかで、自分の手の効き方が変わる
- 生成AIに任せるのは候補の領域を並べる材料集めまで。勝てる場所は判定できないので、決めるのは人
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「規模が小さいから弱者」は、この理論の読み違い
この理論の解説を読むと、強者は大企業、弱者は中小零細企業や個人事業主だと書かれているものが少なくありません。実際にそう説明している記事も出回っています。ただ、この定義を採って実務に入ると、最初の一歩で止まります。全社で1つの立場を決めてしまい、どの商材でどう戦うかという話に降りていかないからです。
体系として整理されている側の定義は明快で、強者はその市場で1位の企業だけを指します。2位以下はすべて弱者です。規模ではなく順位で分けるので、社員が数千人いる会社でも、ある領域で2位なら、その領域では弱者の打ち手を取ることになります。逆に、社員が20人の会社でも、特定の業種の特定の業務で首位なら、その領域では強者の打ち手が正解になります。
この違いは言葉遊びではありません。規模で分けると、打ち手は会社ごとに1つへ固定される。順位で分けると、打ち手は領域ごとに変わる。同じ会社の中に、強者として守る領域と、弱者として攻める領域が同時に存在する。これが、この理論を実務で使うときの実際の姿です。全社で1つの立場を宣言した時点で、使える部分の大半が失われます。
もとは1914年の戦闘の法則で、経営のために作られたものではない
もとになったのは、イギリスの技術者フレデリック・ランチェスターが1914年に発表した戦闘の法則です。第一次世界大戦が始まった年に、戦闘における力関係が何によって決まるのかを整理したもので、1916年に航空戦を論じた著作としてまとめられました。工学の人が、当時新しかった航空機の投入効果を考えるために書いたものです。
前提として押さえておきたいのは、これが経営のために作られた理論ではないという点です。百科事典の記述でも、軍事の理論をそのまま販売の現場へ当てはめるのは難しいと指摘されています。数の効き方についての見立てを借りているだけであって、市場の観測から導かれた法則ではありません。
借り物であることを分かって使うかどうかで、扱い方が変わります。分かっていれば、当てはまらない場面が来たときに枠のほうを外せる。分かっていないと、当てはめ続けて現実の説明をねじ曲げることになります。この理論は結論を出す装置ではなく、戦う場所を決めるための問いの立て方として使う。この距離の取り方が、実務では最初に効きます。
2つの法則が分けているのは、当たり方のほう
法則は2つあります。第一法則は、刀や槍のように届く範囲が狭い武器で、1対1で当たる場面を想定したものです。このとき戦力は、兵の数と武器の性能を掛けた形で効きます。数が2倍なら戦力も2倍。接近戦、一騎打ちの法則と呼ばれます。
第二法則は、銃のように届く範囲が広く、集団で当たる場面を想定します。このとき戦力は、兵の数を2乗した値に武器の性能を掛けた形で効く。数が2倍なら戦力は4倍になります。間隔戦、確率戦の法則と呼ばれ、広い場では確率の法則が成立するために2乗になる、と説明されます。同じ数の差が、当たり方によって2倍にも4倍にもなる。ここがこの理論の中心です。
経営に置き換えると、こうなります。広い範囲で不特定多数に同時に当たる戦い方をすると、数の差がそのまま増幅される。狭い範囲に持ち込んで1対1で当たると、数の差は増幅されない。数で劣る側が広い場所で戦うのは、差を自分から広げにいく行為になります。だから弱者は戦う場所を狭め、強者は広げる。打ち手の一覧は、すべてここから出てきます。
日本で経営の理論として体系化されたのは1970年代
戦後、この数理モデルが経営学へ応用され、日本では経営コンサルタントの田岡信夫が、戦闘の法則を販売と経営の戦略へ翻訳して普及させました。1970年代のことです。いま日本で「ランチェスター戦略」と呼ばれているものは、この日本での体系化のほうを指しています。強者の戦い方、弱者の戦い方、市場占有率の目標値といった整理は、ここで組み立てられました。
つまり、ランチェスター本人が説いた経営戦略というものは存在しません。ランチェスターが出したのは戦闘の法則で、それを商売に翻訳したのは別の人たちです。出典を確かめると、この区別は解説のなかでも明示されています。海外の文献を探しても同じ体系は見つからないので、この理論を社内で共有するときは、日本で組み立てられた体系だと先に断っておくほうが誤解が減ります。
実務での意味は2つあります。1つは、細部が提唱した側の整理であって、検証された事実ではないこと。もう1つは、だからこそ自社の実態に合わせて置き換えてよいということです。使えるところを使い、合わないところは自社の数字で置き換える。原典に忠実であることに価値があるタイプの枠ではありません。
占有率の目安は、1962年に日本で導かれた数値
この理論とセットでよく引かれる占有率の数値も、日本での体系化のなかで出てきたものです。解説によれば、1962年に田岡信夫が社会統計学者とともに、米国の数学者クープマンが作ったモデルを解析して、73.9%、41.7%、26.1%という3つの目標値を導いたとされています。のちに19.3%、10.9%、6.8%、2.8%が加わり、7つの数値として整理されました。
| 目安 | 呼ばれ方 | 置かれている意味 |
|---|---|---|
| 73.9% | 独占的な水準 | 上限とされる。ここまで来ると立場が覆りにくい |
| 41.7% | 相対的に安定する水準 | 首位が安定するとされる水準 |
| 26.1% | 市場に影響を持つ水準 | 首位争いに加わるための下限とされる |
| 19.3% | 上位に並ぶ水準 | 上位集団の一角として数えられる |
| 10.9% | 認知される水準 | 検討の候補として思い出してもらえる |
| 6.8% | 存在が認められる水準 | 選択肢には入るが、比較の中心にはならない |
| 2.8% | 足がかりの水準 | その市場に参入したと言える最低限 |
押さえておきたいのは、これらが市場の観測から出た数値ではなく、モデルの解析から導かれた数値だということです。どの市場でも同じように効くと検証された値ではありません。使い方としては、自社の位置が上のどの段にあるかを見て、次にどの段を目指すのかという目標として置く。段そのものの正しさを議論しても、実務は1ミリも進みません。
26.1%についてはよく添えられる説明があります。この水準を確保していれば、残り全部が1つにまとまっても73.9%には届かない、というものです。ここから分かるのは、数値の意味が、絶対の量ではなく他社との関係で決まるということです。同じ26.1%でも、2位が25%の市場と、2位が5%の市場では、置かれている状況がまったく違います。数値を見るときは、必ず2位との差を横に並べます。
分母を決めないと、順位も占有率も意味を持たない
ここまでの話は全部、戦う場所をどう区切るかに依存しています。占有率は、分子を自社の売上、分母を市場の規模として計算しますが、分母をどう取るかは決めの問題です。同じ会社が、分母を国内全体に取れば1%、特定の業種の特定の業務に取れば40%になる。数字そのものは、どちらも嘘ではありません。
実務でいちばん揉めるのがここです。分母を広く取れば弱者になり、狭く取れば強者になる。都合のよい分母を選べば、どちらの結論も作れてしまいます。だから先に、分母の決め方の条件を置きます。買う側から見て、比較検討の候補が同じ集合になっているかどうか。ここが揃っていれば、分母として成立します。
揃っていない例を挙げます。自社の商材が製造業向けの在庫管理だとして、分母を業務システム全体に取ると、買う側が実際には比べていない商品まで含まれる。逆に分母を自社と同じ機能構成の商品に取ると、自社しかいないので占有率は100%になります。分母は、買う側が実際に並べて比べた相手の集合で決める。この1文を先に社内で合意しておくと、後の議論が半分の長さで済みます。
同じ会社が、領域ごとに強者にも弱者にもなる
分母の話が、そのまま強者と弱者の混在につながります。1つの会社が扱う商材は複数あり、商材ごとに戦う場所が違う。ある商材では首位、別の商材では5位、ということが普通に起きます。全社で1つの立場を決めると、首位の商材にも弱者の打ち手を当ててしまうことになります。
首位の商材に弱者の打ち手を当てると、何が起きるか。狭く絞って一点に集める打ち手なので、いま取れている周辺の売上を自分から手放すことになります。逆に、5位の商材に強者の打ち手を当てると、広い範囲へ薄く資源をまき、どこでも勝てないまま費用だけが出ていく。どちらも、立場を取り違えたことによる損です。しかも、損の出方が遅れて現れるので、原因の特定が難しくなります。
作業としては、商材ごと、あるいは領域ごとに一覧を作ります。領域の名前、分母の定義、自社の位置、首位の会社、首位との差。この5列の表が、この理論を使う実務のほぼ全部です。表が無いまま強者か弱者かを議論している場合、議論しているのは順位ではなく、その場にいる人の気分です。表は四半期に1回引き直せば足ります。
強者と弱者の打ち手は、裏返しの対応表になる
打ち手を整理します。弱者の側は、戦う場所を狭める、資源を一点に集める、相手に近づく、1対1に持ち込む、そして手の内を読ませないように動く。強者の側はその裏返しで、広く網をかける、総力で当たる、離れたところから届かせる、数そのもので押さえる、相手を自分の得意な土俵へ引き込む。5つずつが対になっています。
| 論点 | 弱者(その場所で1位ではない側) | 強者(その場所で1位の側) |
|---|---|---|
| 戦う範囲 | 狭める。1つの業種や1つの業務に限る | 広げる。範囲を広くして相手の力を分散させる |
| 資源の配り方 | 一点に集める。他を止めてでも寄せる | 総力で当たる。複数の手を同時に出す |
| 相手との距離 | 近づく。直に会って個別に対応する | 離れて届かせる。広告や販路で会う前に決める |
| 当たり方 | 1対1に持ち込む。比較の相手を1社に絞る | 数で押さえる。接点の数そのもので上回る |
| 順番 | 先に仕掛ける。相手が動く前に位置を取る | 後から出す。相手の手を見てから同じ手を出す |
| 差の作り方 | 違いを作る。同じ土俵に乗らない | 違いを消す。同じものを出して差を無効にする |
表の左右は対になっているので、片方だけを読んでも意味が取れません。弱者の手は、強者が同じ手を返してこないという前提で効きます。強者が同じ土俵に降りてきた瞬間に、弱者の手は効かなくなる。だから弱者の側は、打ち手を選ぶ前に、相手が降りてこない場所を選ぶ作業のほうが先に来ます。
降りてこない場所の目安は2つです。首位の会社にとって、その領域が売上構成のなかで小さいこと。そして、その領域に合わせるために首位の会社が何かを変えなければならないこと。相手が降りてくると自社の他の事業が損をする。そういう場所が、弱者にとって安全な場所です。ただ小さいだけの領域は、相手が本気になった瞬間に消えます。
基本にあるのは、違いを作ることと、違いを消すこと
5つずつの打ち手の下に、基本の型が1つずつあります。弱者は差別化、強者はミートと呼ばれる型です。差別化は、相手と違うものを作って比較されない状態を作ること。ミートは、相手が出してきた違いに同じものをぶつけて、違いそのものを消すことです。
ミートが効くのは、後から出しても間に合う場合です。首位の会社は販路も認知も持っているので、同じ機能を出せば、先に出した側の優位が短期間で消える。弱者にとって最も避けたいのは、模倣が容易な違いで戦うことです。機能の違いは模倣されやすく、特定業種の商習慣への対応や、顧客の業務手順への食い込みは模倣されにくい。ここに差があります。
だから弱者の側が違いを作るときの問いは、「うちは何が違うか」ではありません。「これを真似るとき、相手は何を捨てることになるか」です。相手が何かを捨てなければ真似できない違いだけが、時間を稼げる違い。捨てるものが要らない違いは、半年で並ばれる前提で計画を立てます。並ばれてから慌てるのが、いちばん高くつきます。
相手の手を読んでから、自分の手を決める
自分の立場を決めただけでは、打ち手は決まりません。相手がどの手を取っているかによって、同じ手の効き方が変わるからです。首位の会社が広く網をかけている最中なら、狭い領域は手薄になります。逆に首位の会社が特定の領域へ資源を寄せている最中なら、その領域は避ける。同じ領域でも、時期によって答えが変わります。
相手の手は、公開情報からある程度読めます。求人票に出ている職種と勤務地、事業説明の資料で強調している領域、価格表の改定、催しへの出展の傾向。資源を増やしている場所は、求人と出展に先に出ます。売上の内訳が公表されるより早く動くので、四半期に1回見ておく価値があります。
読んだ結果は1行にまとめます。首位の会社がいま力を入れている領域はどこで、手薄になっているのはどこか。この1行が変わったときだけ、自社の絞り込みを見直すと決めておきます。毎月見直すと、絞ったことの効果が出る前に絞り先が変わり、どの領域にも実績が積み上がりません。見直しの頻度そのものを、先に決めておく話です。
絞り込みが怖いのは、売上が減るように見えるから
絞り込みが決められない理由は、たいてい1つです。絞ると、いま取れている他の領域の売上が減るように見える。実際、短期では減ります。ここで議論が止まるのは、減る量だけを見て、増える量を数えていないからです。減る量は既存の数字から出せるのに、増える量は想定でしか出せない。この非対称が、議論を保守的な側へ引っ張ります。
数え方は3つの数字に分けます。件数、勝率、単価です。絞ると、接触できる件数は減ります。一方で、その領域に合わせた提案と事例が積み上がるので勝率が上がり、比較される相手が減るので単価も下がりにくくなる。受注は件数と勝率を掛け合わせて決まるので、件数が3割減っても勝率が2倍になれば受注は増えます。ここまでを紙に書いてから議論します。
実務では、この試算を絞る前に必ず作ります。いまの領域別の件数、勝率、平均単価を並べ、絞ったあとの想定を隣に置く。想定が外れたときにどこで気づくかも、一緒に書いておく。書いていないと、短期の売上が落ちた時点で撤回され、絞ったことの効果を一度も確かめないまま終わります。撤回そのものより、確かめられずに終わることのほうが損失です。
法人向けでは、地域ではなく4つの軸で絞る
この理論の解説には、地域を絞る例が多く出てきます。ある地区に営業所を集中させる、という形です。ただ、法人向けの商材、とくに全国どこでも同じように使えるものでは、地域の軸が効きません。代わりに使える軸は4つあります。業種、規模、業務の一工程、そして導入の段階です。
業種で絞ると、商習慣と規制が揃うので、提案の言葉と事例をそのまま使い回せます。規模で絞ると、決裁の重さと導入の体制が揃う。業務の一工程で絞ると、比較される相手が限定され、機能の説明が短くなる。導入の段階で絞るのは、はじめて入れる会社に限る、あるいは他社から乗り換える会社に限る、という切り方で、この4つのなかでは最も見落とされている軸です。
どれか1つで足りることは少なく、実務では2つを掛けます。製造業で従業員が数百人規模、といった形です。3つ以上掛けると、対象の会社数が数十社まで減り、市場としての厚みが無くなる。掛けるのは2つまで、対象が数百社は残る範囲で止める。これが実際の目安になります。数十社まで絞ると、1社の判断が全体の成否を決めてしまいます。
絞り込みの判断項目一覧
絞る前に確かめる項目を並べます。1つでも埋まらない項目があるなら、絞る判断はまだ早い。埋まらない項目があること自体が、材料が足りていないという知らせです。
- 分母を1文で書けるか:買う側が実際に並べて比べる相手の集合として、その領域を1文で言い切れるか
- 自社の位置が分かるか:その領域で自社が何位で、首位が誰かを、推測ではなく根拠を挙げて言えるか
- 首位にとって小さいか:その領域が、首位の会社の売上構成のなかで主力ではないと言えるか
- 真似るのに何かを捨てさせるか:首位が同じことをやろうとするとき、既存の何かを捨てる必要があるか
- 次の10社を名前で挙げられるか:まだ取れていない相手を、10社まで具体的な社名で挙げられるか
- 捨てる売上を数えたか:絞ることで手放す領域の売上と件数を、金額で出したか
- やめる条件を書いたか:何か月続けて何が起きなければ絞り方を見直すのかを、先に決めたか
7つのうち、5番目で落ちる候補がいちばん多くなります。塊としてまとまって見えても、次に声をかける相手を名前で挙げられないなら、それは分析上の集まりであって市場ではありません。名前で挙げられないのは、たいてい軸の切り方が抽象的すぎるときです。切り方を1段具体にすると、挙げられるようになります。
手順としては、次の順で進めます。順番を入れ替えると、材料が無いまま結論を先に置くことになります。
商材、業種、規模、業務の工程を組み合わせて、候補を5つに絞ります。10個並べると比べきれないので、最初から5つに制限します。
買う側が並べて比べる相手の集合として書きます。書けない候補は、この時点で落とします。ここで2つほど減るのが普通です。
公開情報と自社の受注記録の両方から見ます。分からない場合は分からないと書き、推測で埋めない。推測で埋めた位置は、後から事実として引き継がれます。
件数、勝率、平均単価、受注までの日数。数字が取れない候補は、判断材料が無いということです。取れるようにしてから戻ってきます。
ここを飛ばすと社内の合意が取れません。数えたうえで、それでも進めるかを決めます。金額を出す作業自体が、覚悟の確認になります。
2四半期を1区切りにし、区切りの終わりに見直す項目を先に書いておきます。書いていない見直しは、その場の印象で行われます。
生成AIの使いどころ:材料を揃えるところまで
この作業の大半は、材料集めと集計です。ここは生成AIに任せられます。1つ目は、候補の領域ごとに、競合が何社いてどこが先行しているかを並べさせること。公開されている事例のページ、料金の掲載、催しへの出展、求人の職種。集めた根拠は、要約ではなく原文のまま残させます。
2つ目は、自社の受注記録を候補の切り方で集計し直させることです。業種と規模で切って、勝率が高い塊を探させる。切り方を人が指定するのが要点で、指定せずに傾向を出してと頼むと、件数の多い塊だけが返ってきます。件数が多い塊は、これまで営業が多く当たってきた塊であって、勝率が高い塊とは限りません。この取り違えは、集計を任せたときに最も起きやすい失敗です。
3つ目は、絞ったときに捨てる売上の試算です。領域ごとの売上と件数を並べ、絞る案ごとに手放す金額を出させる。試算は複数の案で出させ、どの前提で成り立つのかを必ず書かせる。前提が書かれていない試算は、社内で説明できないので使えません。前提が書いてあれば、後から前提のほうが崩れていないかを点検できます。
勝てる場所は、機械には判定できない
材料が揃うと、そのまま「どの領域なら勝てますか」と聞きたくなります。ここは線を引きます。返ってくるのは、渡した材料から読み取れる範囲の推定で、判定の形をしていますが、判定の責任は負っていません。形と責任が分かれているものを、決定の場に持ち込まないことです。
判定できない理由は具体的です。勝てるかどうかは、これから自社がどれだけの資源をそこへ寄せるかで変わります。首位の会社が来期どう動くかでも変わる。どちらも、渡した材料には入っていません。過去の記述から現在の分布は作れても、これから自分が動かす分は計算に入らない。ここが、材料集めと判定を分ける線になります。
使い方を1つ変えると、この危険は消えます。判定を聞くのではなく、自分たちが選んだ領域に対する反論を書かせる。この領域を選ぶと成り立たなくなる条件を挙げさせ、そのうち社内の記録で確かめられるものだけを確かめに行く。決めるのは人、揺さぶるのが機械という分け方にしておけば、材料の質が上がっても判断が機械の側に移りません。
使わないほうがよい場面と、やりがちな失敗
この枠が効かない場面もあります。1つは、市場そのものがまだ立ち上がっていないとき。順位を数える相手がいないので、強者も弱者もありません。この段階でやるべきは絞り込みではなく、そもそも誰が何のために買うのかを確かめることです。もう1つは、順位が測れないとき。分母になる市場の規模が公表されておらず、自社の売上以外に数字が無い場合、位置を推測で置くことになります。推測の順位で立場を決めると、打ち手も推測の上に乗ります。
- 市場が立ち上がっていない領域では、順位ではなく、買う理由が成立しているかを先に確かめる
- 分母の数字が公表されていない場合は、占有率の代わりに、直接競合した案件での勝率を使う
- 代用した事実は必ず記録に残す。残さないと、半年後に推測が事実として引き継がれる
- 首位との差が僅差の場合は、順位で立場を決めない。差がひっくり返る前提で、両方の打ち手を用意する
- 規制や技術の前提が動いている最中の領域では、順位より、前提が動き終わる時期のほうを先に見る
やりがちな失敗も並べておきます。どれも、この理論を1度読んだ直後に起きやすいものです。
- 全社で1つの立場を決める:首位の商材にも弱者の打ち手を当てることになり、取れている売上を自分から手放す
- 絞ったつもりで何も捨てていない:注力領域を宣言しただけで、人と予算の配分が前のままなら、絞っていない
- 分母を決めないまま占有率を議論する:都合のよい分母を選べば、強者にも弱者にも見せられてしまう
- 模倣されやすい違いで戦う:機能の差は同じものを出されて消える。相手が何かを捨てないと真似できない違いを探す
- 絞り先を四半期ごとに変える:積み上がる前に切り替わるので、どの領域にも実績が残らない
- 規模で強者と弱者を決める:この体系の定義から外れる。分けるのは規模ではなく、その場所での順位
最後の1つが、この記事の出発点でした。強者か弱者かは会社に貼られる札ではなく、戦う場所ごとに付け直すものです。札として持ってしまうと、領域ごとに打ち手を変えるという、この理論の本体が使えなくなります。読んだあとに全社で1つの立場を宣言したくなったら、そこで一度止まるのが正解です。
まとめ
強者と弱者を分けるのは、会社の規模ではありません。その戦う場所での順位です。だから同じ会社が、ある領域では強者として広く網をかけ、別の領域では弱者として一点に集めることになります。順位を出すには分母が要り、分母は「買う側が実際に並べて比べた相手の集合」で決める。ここを先に合意しておかないと、都合のよい分母を選ぶだけで強者にも弱者にも見せられてしまいます。領域の名前、分母の定義、自社の位置、首位、首位との差。この5列の表が、この理論を使う実務のほぼ全部です。
打ち手は左右で対になっているので、相手がどちらを取っているかを見てから選びます。弱者の手は、相手が同じ土俵に降りてこない前提で効くので、降りてくると自社の他の事業が損をする場所を選ぶ。絞り込みは、減る件数だけでなく、上がる勝率と保たれる単価まで数えてから決めます。生成AIに任せるのは、競合の並べ直し、受注記録の切り直し、捨てる売上の試算という材料集めまで。勝てる場所の判定はできません。これから自社が寄せる資源も、相手の来期の動きも、渡した材料には入っていないからです。決めるのは、その決定を負う人です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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