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仕入先から届く試験成績書を読み取って、受入検査の記録と規格判定まで自動化する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

仕入先から届く試験成績書を入力に、材料の識別情報と試験値を抽出し、社内で定めた規格値と照合して合否の候補を出します。受入検査担当の作業は、紙を見ながら打ち込むことから、抽出された値が正しいかを確かめることに変わります。

サマリー
利用ツール
AWS Textract/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Document AI/Make/n8n/Power Automate
対象業界
商社/建設/物流/製造
対象部門
品質管理/購買
対象業務
データ入力・転記/内容確認・チェック
主な課題
入力作業が多い/情報が見つからない/確認ミスが多い
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/工数削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
70h/月
AI導入後
23.3h/月
想定削減
67%
年間削減
560h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 入荷した材料に成績書が添付されている、またはメールで届く
  2. 受入検査担当が、発注書・納品書と成績書を突き合わせる
  3. 成績書から、材料記号・炉番・製造番号・寸法を読み取る
  4. 成分値(炭素・ケイ素・マンガンなど)と機械的性質(引張強さ・降伏点・伸び)を読む
  5. 社内の規格表を開き、規格値の範囲に入っているかを見る
  6. Excelの受入検査記録に転記する
  7. 生産管理システムにロット情報を登録する
  8. 成績書のPDFを共有フォルダに保存する
導入後(After)
  1. 成績書が指定のフォルダに入る(メール添付の自動保存、またはスキャン)
  2. 自動書類の種別を判定する(成績書か、納品書か、その他か)
  3. 自動仕入先を特定し、対応する抽出モデルを選ぶ
  4. 自動材料記号・炉番・製造番号・寸法・試験値を抽出する
  5. 自動発注データと照合し、どの発注に対する成績書かを特定する
  6. 自動社内の規格表と照らし、規格値の範囲に入っているかを判定する
  7. 受入検査担当が、抽出結果と判定を確認して承認する
  8. 自動受入検査記録に登録し、成績書を検索できる名前で保管する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 入荷した材料に成績書が添付されている、またはメールで届く
  2. 受入検査担当が、発注書・納品書と成績書を突き合わせる
  3. 成績書から、材料記号・炉番・製造番号・寸法を読み取る
  4. 成分値(炭素・ケイ素・マンガンなど)と機械的性質(引張強さ・降伏点・伸び)を読む
  5. 社内の規格表を開き、規格値の範囲に入っているかを見る
  6. Excelの受入検査記録に転記する
  7. 生産管理システムにロット情報を登録する
  8. 成績書のPDFを共有フォルダに保存する

問題は4つあります。

(a)様式が仕入先ごとに違う。 どこに何が書いてあるかを探すところから始まります。慣れている担当者でも、新しい仕入先だと倍かかります。

(b)転記のミスが出る。 炉番は英数字が混ざった長い文字列です。月に数件、写し間違いが起きます。

(c)規格の版が古いまま使われる。 規格表がExcelで管理されており、更新されても全員の手元が入れ替わりません。

(d)あとから探せない。 ファイル名の付け方が人によって違い、「この製品に使った材料の成績書」を探すのに30分かかることがあります。

  1. 成績書が指定のフォルダに入る(メール添付の自動保存、またはスキャン)
  2. 【自動】 書類の種別を判定する(成績書か、納品書か、その他か)
  3. 【自動】 仕入先を特定し、対応する抽出モデルを選ぶ
  4. 【自動】 材料記号・炉番・製造番号・寸法・試験値を抽出する
  5. 【自動】 発注データと照合し、どの発注に対する成績書かを特定する
  6. 【自動】 社内の規格表と照らし、規格値の範囲に入っているかを判定する
  7. 【人】 受入検査担当が、抽出結果と判定を確認して承認する
  8. 【自動】 受入検査記録に登録し、成績書を検索できる名前で保管する

自動化されるのは「読む」「探す」「照合する」「保管する」の4つです。残るのは「合っているかを判断する」だけになります。

6の規格判定を自動化することが、この構成の値打ちです。 規格表を1か所で持ち、そこを参照する形にすれば、古い版が使われることがなくなります。

02今回想定するシステム構成

構成図
メール添付 / スキャン / 仕入先ポータルからのダウンロード
   │
   ▼
共有フォルダの受領場所
   │
   ▼【トリガー】ファイルが作成されたとき
Make
   │
   ├──▶ 書類種別の判定(成績書 / 納品書 / その他)
   │
   ├──▶ OCR ── 材料記号 / 炉番 / 製造番号 / 寸法 / 試験値 を構造化
   │       └─ 仕入先ごとに学習したカスタム抽出モデル
   │
   ├──▶ 発注データとの照合(生産管理システム)
   │
   ├──▶ 規格表との照合(プログラムで数値比較)
   │
   └──▶ LLM API ── 読み取り結果の整合確認と、注記の読み解き
   │
   ▼
確認画面(成績書の画像と抽出結果を並べる)──【人が承認】
   │
   ▼
受入検査記録へ登録 + 検索できる名前で保管
役割想定する製品代替候補
ワークフローMakePower Automate、n8n
OCRAzure AI Document IntelligenceGoogle Document AI、AWS Textract
生成AIClaude APIChatGPT、Gemini

仕入先に電子データでの提供を依頼するほうが先です。 CSVやEDIで成績値を受け取れるなら、OCRは要りません。主要な仕入先10社に依頼するだけで、枚数の半分が消えることがあります。 それでも残る分に対して、この構成を使ってください。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

共有フォルダにファイルが作成されたことを起点にします。

メール添付を自動でこのフォルダへ保存する部分も作ります。ただし、成績書以外の添付も大量に届くため、送信元アドレスまたは件名での絞り込みが必要です。成績書専用のメールアドレスを用意し、仕入先にそこへ送ってもらうのがもっとも確実です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
試験成績書材料記号、炉番、製造番号、寸法、成分値、機械的性質仕入先(PDF・紙)
発注データ発注番号、材料記号、数量、納期、仕入先生産管理システム
納品データ納品番号、入荷日、数量生産管理システム
社内規格表材料記号ごとの規格値の範囲、適用する規格の版品質管理部
仕入先マスタ仕入先コード、正式名称、成績書の様式の種別購買部
過去の成績書同じ仕入先・同じ材料の過去の値受入検査記録
Step3

データの取得方法を決める

OCR: Azure AI Document Intelligence のカスタム抽出モデルを使います。同じ様式の文書の例が5つあれば学習を始められます。

カスタムモデルには2種類あります。

種類向くもの学習時間
カスタムテンプレート見た目が一定の様式。フォーム型1〜5分
カスタムニューラル同じ情報を持つが様式が異なる文書30分以上

仕入先ごとに様式が違うこの用途では、まずカスタムニューラルを試してください。 公式の案内でも、2つのうちから選ぶ場合はニューラルから始めることが勧められています。すべてのバリエーションに1つのモデルで対応できるためです。

入力の条件も確認しておきます。PDFとTIFFは最大2,000ページまで処理でき、有料プランでのファイルサイズの上限は500MBです。 画像は50×50ピクセルから10,000×10,000ピクセルの範囲である必要があります。成績書1枚であれば、いずれも問題になりません。

紙の成績書のスキャン: 解像度は200dpi以上を目安にしてください。炉番は英数字が混ざるため、低解像度だと読み間違えます。

社内規格表: これを1か所に集約するのが、この構成の準備で最も重要な作業です。Excelで各自が持っている状態をやめてください。 材料記号ごとに、成分と機械的性質の上限・下限、適用する規格とその版を持ちます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 書類種別の判定 … 成績書、納品書、荷札、その他を分けます。混ざったまま抽出モデルに渡すと、意味のない値が返ります
  2. 仕入先の特定 … 文書の上部にある社名や、メールの送信元から特定します。仕入先が決まると、使う抽出モデルが決まります
  3. 向きの補正 … スキャンした紙は上下逆や横向きのことがあります
  4. 複数枚の分割 … 1つのPDFに複数の成績書が入っていることがあります。炉番の変わり目で分割します
  5. 重複の検出 … 同じ成績書が再送されることがあります。「仕入先+炉番+製造番号」で照合します
Step5

AIに処理させる

役割を3つに分けます。

OCR(Document Intelligence)にさせること: 文字と項目の読み取り。表の中の数値の抽出。ここはLLMにさせません。 専用モデルのほうが数値の読み取りが安定し、費用も安いためです。

プログラムにさせること: 規格値との数値比較。上限・下限との照合は計算であり、AIの仕事ではありません。 ここをAIにさせると、検算ができなくなります。

LLMにさせること:

処理内容
単位の整合「MPa」「N/mm²」「kgf/mm²」の混在を、社内の単位にそろえる
項目名の名寄せ「引張強さ」「TS」「Tensile Strength」を1つの項目に対応づける
注記の読み解き「熱処理条件」「特記事項」などの自由記述から、判定に関わる記述を拾う
異常の指摘同じ仕入先・同じ材料の過去の値と比べて、外れている値を指摘する
読み取り結果の整合確認成分の合計、桁数、明らかにあり得ない値を指摘する

「単位の整合」を軽く見ないでください。 引張強さの単位が違うまま比較すると、規格外の材料を合格にします。 ここは必ず変換し、変換前の値も記録に残します。

構造化出力を使い、抽出結果の形式を固定します。制約付きデコードによってスキーマに沿ったJSONの生成が保証されるため、数値の欄に文字列が混ざることを防げます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、材料の試験成績書の受入検査を支援する担当者です。
OCRで抽出された成績書の内容を確認してください。

【厳守事項】
- 数値を書き換えないでください。
  OCRの抽出結果をそのまま引き継いでください。
- 読み取れなかった項目を推測で埋めないでください。
  null のままにし、unreadable に列挙してください。
- 合否の判定をしないでください。
  規格値との比較はプログラムが行います。
- 単位の変換を行った場合は、変換前の値と単位を必ず残してください。
- 注記や特記事項に、判定に関わる記述(熱処理、試験方法、
  適用規格の版、除外条件)があれば、原文のまま引用してください。
- 過去の値と比べて外れている項目は指摘してください。
  ただし、外れている理由を推測しないでください。

【OCRの抽出結果】
{ocr_result}

【この材料の項目定義(社内の呼び方と単位)】
{item_definitions}

【同じ仕入先・同じ材料の過去10件の値】
{past_values}

「合否の判定をしない」の1行が重要です。 規格値との比較は、上限・下限との単純な数値比較です。これをAIにさせる理由がありません。

Step7

出力形式を固定する

{
  "supplier_code": "",
  "certificate_no": "",
  "material_grade": "",
  "heat_no": "",
  "lot_no": "",
  "dimensions": { "thickness": null, "width": null, "length": null },
  "chemical_composition": [
    { "element": "C", "value": null, "unit": "%", "raw_value": "", "raw_unit": "" }
  ],
  "mechanical_properties": [
    {
      "item": "tensile_strength",
      "value": null,
      "unit": "MPa",
      "raw_value": "",
      "raw_unit": "",
      "test_direction": ""
    }
  ],
  "applied_standard": "",
  "notes_quoted": [],
  "outliers": [],
  "unreadable": [],
  "page_image_ref": ""
}

raw_valueraw_unit を必ず持たせます。 変換後の値だけを残すと、あとから検証できません。

数値は文字列でなく数値型で返させます。文字列にすると、カンマや空白が混ざって後段の比較が壊れます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先何をするか
生産管理システム発注・納品データと照合する。ロット情報を登録する
受入検査記録抽出値、判定、承認者を登録する
規格表判定の基準を参照する。1か所で管理する
文書の保管先検索できる名前で保存する(材料記号+炉番+仕入先+入荷日

保管時のファイル名の規則を決めてください。 「この製品に使った材料の成績書を出せ」と言われたときに、炉番から1回の検索でたどり着ける状態にします。これがこの構成の隠れた効果です。

Step9

人が確認する

全件、人が承認します。段階的な自動化もしません。

理由は、この記録が製品の品質を保証する根拠になるためです。誤った値が記録に残れば、製品に問題が起きたときの原因追跡が成り立ちません。

確認を速くするための設計が重要です。

  • 確認画面で、成績書の画像と抽出結果を左右に並べて表示する
  • 抽出した箇所を、画像上でハイライトする
  • 規格値に対する位置を、範囲の中のどこかが見える形で表示する
  • outliersunreadable を色分けする
  • 規格の範囲に余裕をもって収まっている項目は、まとめて確認できるようにする

これらがないと、確認に6分かかり、削減効果が出ません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
数値が読み取れないnull で返し、unreadable に入れる。推測値を入れない
規格値の範囲外だった自動で不合格にせず、人へ回して判断させる(特採の手続きがある)
規格表に材料記号がない判定せず人へ回す。自動でマスタに追加しない
単位が想定と違う変換し、変換前の値も残す。変換できない単位は人へ回す
成績書が複数ページにまたがる炉番の変わり目で分割する
同じ成績書が再送された「仕入先+炉番+製造番号」で重複を検出し、処理を止める
発注データと材料記号が合わないnot_matched として人へ回す。自動で紐づけない
手書きの追記があるLLMに引用させ、人が読む列に出す
スキャンの解像度が低い抽出の確信度が下がる。再スキャンの対象として返す
新しい仕入先の成績書既存モデルで試し、精度が出なければ人が処理する。5件たまったら学習する
Step11

記録を残す

この業務では、記録の保存が品質保証の要件になります。

  • 成績書の原本(画像・PDF)
  • OCRの抽出結果(生の状態)
  • 単位変換の前後の値
  • 規格判定の結果と、参照した規格表の版
  • 承認者、承認日時
  • 人が修正した項目と、修正前後の値

4番目の「参照した規格表の版」を必ず残してください。 規格が改定されたあとに「当時どの基準で判定したか」を問われます。

最後の項目は精度の実測値になります。「成分値はそのまま通るが、炉番は2割修正されている」と分かれば、炉番の読み取りだけを改善すればよいと決まります。

04実装レベルの3段階

最小構成:OCRサービスの画面に1枚ずつ投入し、結果をコピーする / 読み取りのみ
半自動化:フォルダ監視 → OCR → 規格判定 → 確認画面 → 記録への登録 / 読み取りと照合
本格構成:上記+仕入先ごとのカスタムモデル+発注データとの照合+保管の自動化 / 承認以外のすべて

半自動化の時点で、6分が3分程度になります。 読み取りと規格照合が自動化されるためです。本格構成にすると2分程度になりますが、仕入先ごとのモデルの学習と維持が必要です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
700 件
1件あたり現在時間
6 分
1件あたり導入後時間
2 分
現在  700件 × 6分 ÷ 60 = 70 時間/月
導入後 700件 × 2分 ÷ 60 = 23.3 時間/月
月間削減時間
46.7h
削減率
67%
年間削減時間
560h
年間金額換算(時間単価3,000円)
168万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 材料や部品の試験成績書(ミルシート・検査成績書)が月300枚以上届き、受入検査で規格値との照合を行っている企業。仕入先が20社以上あり、成績書の様式が仕入先ごとに違う場合。トレーサビリティの記録を求められる製品を扱う場合。
向いていない
  1. 成績書が月数十枚で、様式が1〜2種類に固定されている場合。仕入先が電子データ(CSVやEDI)で成績値を送ってくれる場合(OCRより先にそちらを依頼する)。成績書を保管するだけで規格判定を行っていない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 主要な仕入先3社の成績書を、各10枚ずつ用意する
  2. Document Intelligence の Studio に投入し、抽出結果を見る
  3. 材料記号・炉番・製造番号・成分値・機械的性質が正しく取れたかを確認する
  4. 30枚のうち、全項目が正しく取れたのが何枚かを数える
  5. あわせて、炉番だけの正解率を別に数える

5を分けて数えるのが大事です。 炉番は追跡の鍵になる項目で、ここの精度が低いと構成全体が成り立ちません。

判断の目安は次のとおりです。

全項目の正解率判断
8割以上自動化する価値がある
5〜8割仕入先ごとにカスタムモデルを学習する。5枚から始められる
5割未満スキャンの品質を先に見直す。それでも上がらなければ、仕入先に電子データを依頼する

規格値との照合は、成分値をスプレッドシートに入れて範囲を比べるだけで試せます。AIを使わずに効果が測れる部分です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
仕入先ごとに様式が違い精度が安定しないまずカスタムニューラルで試す。精度が出ない仕入先だけ個別にモデルを学習する
炉番の読み間違いが出る解像度を上げる。確信度が低いものを人へ回す。ここは妥協しない
単位が混在して比較を誤る変換を必須にし、変換前の値も残す。変換できない単位は人へ回す
規格表の版が分からなくなる判定時に参照した版を記録に残す
規格外の値を自動で不合格にしてしまう自動で判定を確定しない。特採の手続きがある
数値がカンマ入りの文字列で返る出力スキーマで数値型を指定する
1つのPDFに複数の成績書が入っている炉番の変わり目で分割する
同じ成績書を二重に登録する「仕入先+炉番+製造番号」で重複を検出する
あとから成績書が探せない保管時のファイル名の規則を決める。炉番を必ず含める
確認画面が使いにくく時間が減らない画像と抽出結果を並べ、抽出箇所をハイライトする。ここを省くと効果が出ない

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先名、材料の成分値、機械的性質、発注情報。自社が何をどこから買っているかが分かる情報です。

  1. 仕入先との秘密保持 … 成績書には、仕入先の製造条件に関わる情報が含まれることがあります。外部サービスへの入力可否を、取引基本契約の秘密保持条項で確認してください
  2. 調達構成の機密性 … どの材料をどの仕入先から買っているかは、競合に知られたくない情報です。アクセス範囲を限定してください
  3. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。成績書を外部の学習データにしないでください
  4. 記録の改ざん防止 … 受入検査の記録は、品質保証の根拠になります。抽出値の修正履歴を必ず残し、あとから書き換えられない形で保管してください
  5. 判定の責任 … 合否の判断は、資格と権限を持つ検査担当が行います。AIの出力を判定の根拠にしないでください
  6. 数値の計算をAIにさせない … 規格値との比較はプログラムで行います。検算できない判定を記録に残さないでください
  7. 保存期間 … 成績書の保存期間は、製品や業界の要求によって定まります。自社の品質マニュアルと顧客との取り決めに従ってください
  8. 自動実行してよい範囲 … 読み取り、照合、規格との比較、保管までです。合否の承認は必ず人が行います。特に、規格外の値を自動で処理する分岐を作らないでください

誤りが起きた場合のリスクは、規格外の材料を合格として通すことと、追跡できない記録を残すことです。前者は製品の不具合につながり、後者は問題が起きたときに範囲を特定できなくします。承認ログと修正履歴を必ず残してください。

10まず何から始めるか

1週目:仕入先に電子データを依頼する

主要な仕入先10社に、成績値をCSVまたはEDIで送れないかを聞いてください。 送れる仕入先があれば、その分はOCRが要りません。この確認を飛ばして開発を始めないでください。

2週目:規格表を1か所に集める

材料記号ごとの規格値の範囲を、1つの表に集約します。適用する規格とその版も列に入れてください。 各自のExcelに散らばっている状態をここで終わらせます。

これはAIを使わなくても効きます。 古い版での判定がなくなるだけで、品質の問題が1件減ることがあります。

3〜4週目:30枚で精度を測る

主要な仕入先3社の成績書を各10枚投入し、全項目の正解率と、炉番だけの正解率を数えます。この結果で導入可否が決まります。

2か月目:半自動化を作る

フォルダ監視 → OCR → 規格判定 → 確認画面までを作り、受入検査担当1名が2週間使います。6分が何分になるかを実測してください。 生産管理システムとの連携はまだ作りません。

3か月目以降: 削減効果が確認できたら、発注データとの照合と、記録への自動登録を実装します。あわせて、保管したファイルが炉番で検索できるかを必ず確かめてください。

半年後には、仕入先ごとの成分値のばらつきを集計してください。 受入検査の工数削減より、購買の交渉材料になることのほうが大きいかもしれません。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-21/最終更新:2026-09-21
確認した内容情報源確認日
Azure AI Document Intelligence のカスタム抽出モデルが、同じ様式の文書の例が5つあれば学習を開始できること。カスタムテンプレートは一貫した見た目の文書を対象とし学習時間が1〜5分、カスタムニューラルは構造化・半構造化・非構造化の文書に対応し学習時間が30分以上であること。2つから選ぶ場合はニューラルから試すことが勧められていること。PDFとTIFFは最大2,000ページまで処理でき、ファイルサイズの上限が有料プラン(S0)で500MB、無料プラン(F0)で4MBであること。画像は50×50ピクセルから10,000×10,000ピクセルの範囲であることMicrosoft Learn:カスタム ドキュメント モデル2026-09-21
Claude APIの構造化出力が、制約付きデコードによりスキーマに沿ったJSONの生成をモデル側で保証すること。列挙・定数・参照は使えるが、再帰スキーマや数値の範囲指定は使えないことClaude Docs: Structured outputs2026-09-21
Claude APIのPDF対応が、1リクエストあたり最大32MB・最大600ページ(コンテキストウィンドウが100万トークン未満の場合は100ページ)であること。各ページがテキストと画像の両方として処理され、表やチャートの理解に使えることClaude Docs: PDF support2026-09-21

受入検査の記録は、製品の品質を保証する根拠になります。 合否の判定は、資格と権限を持つ検査担当が行うものであり、この構成が出すのは判定の候補です。AIの出力を判定の根拠として記録に残さないでください。 規格値との比較は数値の計算として行い、生成AIに計算させないでください。規格の範囲外となった値を自動で処理する分岐を作らないでください。特別採用の可否は、定められた手続きで判断されるべきものです。

成績書には仕入先の製造条件に関わる情報が含まれることがあります。 外部の生成AIサービスやOCRサービスへ渡してよいかを、取引基本契約の秘密保持条項と自社の情報管理規程で確認してください。成績書の保存期間と保存方法は、自社の品質マニュアルと顧客との取り決めに従ってください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。OCRの精度は成績書の様式と印字・スキャンの品質に強く依存するため、自社に届く成績書での実測が必要です。

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