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取引先の与信レビュー資料を決算書と公開情報から作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

取引先から受領した決算書のPDFを入力に、貸借対照表と損益計算書の主要な勘定科目を3期分取り出し、社内で決めてある指標(自己資本比率、流動比率、売上高の増減、営業利益率など)を計算して1枚の表に並べます。あわせて、社内基準に照らして目立つ点を箇条書きにした所見の下書きを作ります。

サマリー
利用ツール
AWS Textract/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Google Document AI/Power Automate/Python
対象業界
商社/建設/物流/製造
対象部門
財務
対象業務
内容確認・チェック/集計・分析
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
抽出
主な効果
判断支援/品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
14h/月
想定削減
65%
年間削減
312h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 与信台帳を見て、今月レビュー対象の取引先を洗い出す
  2. 営業経由で決算書を依頼し、PDFで受け取る(共有フォルダに保存する)
  3. PDFを開き、貸借対照表と損益計算書の主要科目を3期分、Excelの指標表に転記する
  4. 自己資本比率、流動比率、売上高増減率、営業利益率などを計算する
  5. 社内の判断基準(指標の閾値)と照らして、注意すべき点を洗い出す
  6. 販売管理システムで直近の売掛残高と支払遅延の有無を確認する
  7. 信用調査会社のレポートがあれば読み、公開情報(商号や所在地の変更など)を確認する
  8. 与信レビュー資料を作り、与信限度の案を付けて決裁に回す
導入後(After)
  1. 与信台帳から、今月レビュー対象の取引先を自動で洗い出す
  2. 決算書PDFを、取引先ごとのフォルダに保存する(依頼と受領は従来どおり)
  3. 自動PDFから貸借対照表・損益計算書の主要科目を3期分抽出する
  4. 自動科目名を社内の標準科目に対応付ける(対応表と突き合わせる)
  5. 自動社内の指標を計算し、3期分を並べた指標表を作る
  6. 自動販売管理システムから直近の売掛残高と支払遅延の履歴を取得して並べる
  7. 自動国税庁の法人番号システムで、商号・所在地の変更がないかを確認する
  8. 自動社内基準に照らして目立つ点を箇条書きにした、所見の下書きを作る
  9. 与信管理担当が、抽出された数値を原本と突き合わせて確認する
  10. 所見を直し、与信限度を判断して決裁に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 与信台帳を見て、今月レビュー対象の取引先を洗い出す
  2. 営業経由で決算書を依頼し、PDFで受け取る(共有フォルダに保存する)
  3. PDFを開き、貸借対照表と損益計算書の主要科目を3期分、Excelの指標表に転記する
  4. 自己資本比率、流動比率、売上高増減率、営業利益率などを計算する
  5. 社内の判断基準(指標の閾値)と照らして、注意すべき点を洗い出す
  6. 販売管理システムで直近の売掛残高と支払遅延の有無を確認する
  7. 信用調査会社のレポートがあれば読み、公開情報(商号や所在地の変更など)を確認する
  8. 与信レビュー資料を作り、与信限度の案を付けて決裁に回す

問題は4つあります。

(a)転記に時間がかかる。 3期分の主要科目を手で打つと、25分ほどかかります。決算書が紙のスキャンだと、さらに読みにくくなります。

(b)科目名の対応付けが人によって違う。 「売掛金」と「受取手形」を合算する担当者と、分けて見る担当者がいます。同じ会社を別の担当が見ると、指標の値が変わります。

(c)所見の書き方が属人的。 ベテランは「この業種でこの在庫回転なら気にしなくてよい」と判断できますが、その根拠は資料に残りません。担当が代わると、同じ会社の評価が揺れます。

(d)回りきらない。 月40社を2名で回すと、1人あたり月20社。他の業務と並行すると、後半の社は簡略化されます。結果として、年1回のレビューが「一部の会社は2年に1回」になっていきます。

  1. 与信台帳から、今月レビュー対象の取引先を自動で洗い出す
  2. 決算書PDFを、取引先ごとのフォルダに保存する(依頼と受領は従来どおり)
  3. 【自動】 PDFから貸借対照表・損益計算書の主要科目を3期分抽出する
  4. 【自動】 科目名を社内の標準科目に対応付ける(対応表と突き合わせる)
  5. 【自動】 社内の指標を計算し、3期分を並べた指標表を作る
  6. 【自動】 販売管理システムから直近の売掛残高と支払遅延の履歴を取得して並べる
  7. 【自動】 国税庁の法人番号システムで、商号・所在地の変更がないかを確認する
  8. 【自動】 社内基準に照らして目立つ点を箇条書きにした、所見の下書きを作る
  9. 【人】 与信管理担当が、抽出された数値を原本と突き合わせて確認する
  10. 【人】 所見を直し、与信限度を判断して決裁に回す

自動化されるのは「転記する」「計算する」「並べる」「気になる点を挙げる」の4つです。残るのは「数値が合っているかの確認」と「与信の判断」です。

02今回想定するシステム構成

構成図
取引先から受領した決算書PDF(デジタルPDF / スキャンPDF)
   │
   ▼
共有フォルダ(取引先コードごと)
   │
   ▼【トリガー】毎月1日 + ファイル追加時
処理スクリプト(Python)
   │
   ├─【スキャンPDF】──▶ Azure AI Document Intelligence(prebuilt-layout)
   │                        └─ 表を行列つきで抽出 → Markdown/テキスト化
   │
   ├─【デジタルPDF】──▶ LLM API に直接投入(citations を有効にする)
   │
   ├──▶ LLM API ── 勘定科目と金額の抽出(JSON)+ 根拠ページの提示
   │
   ├──▶ 標準科目への対応付け(社内の科目対応表)
   │
   ├──▶ 販売管理システム ── 売掛残高・支払遅延履歴
   │
   └──▶ 国税庁 法人番号システム Web-API ── 商号・所在地の変更履歴
   │
   ▼
指標表(3期分)+ 所見の下書き
   │
   ▼
確認画面(決算書の原本と抽出結果を左右に並べる)──【人が確認・判断】
   │
   ▼
与信台帳へ登録 + 決裁へ
役割想定する製品代替候補
実行環境PythonGoogle Apps Script、Power Automate
OCRAzure AI Document Intelligence(prebuilt-layout)Google Document AI、AWS Textract
生成AIClaude API(PDF対応・citations)OpenAI API、Gemini API
外部データ国税庁 法人番号システム Web-API官報、信用調査会社のレポート
台帳Google スプレッドシートExcel、kintone

信用調査会社のサービスを先に検討してください。 決算書の数値化、指標の算出、点数化までを提供している会社があります。自前で組む価値があるのは、自社の判断基準(業種ごとの閾値や、取引額に応じた見方)を反映させたい場合、または取引先から直接受領した決算書が調査会社のデータより新しい場合です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月1日の定期実行と、共有フォルダへの決算書PDFの追加の2つを起点にします。

定期実行では、与信台帳から「前回レビューから11か月以上経過」の取引先を洗い出し、レビュー対象の一覧を作ります。決算書が未入手の会社は、営業への依頼リストとして出します。

ファイル追加は、決算書が届いた時点で処理を始めるためのものです。決算期は会社ごとに違うので、月初にまとめて処理する設計だけでは、届いたPDFが1か月放置されます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
決算書PDF貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費明細、3期分共有フォルダ
科目対応表決算書の科目名と社内標準科目の対応(表記ゆれを含む)財務部の管理文書
判断基準指標ごとの閾値、業種別の目安与信管理規程
売掛残高・支払遅延履歴直近12か月の残高推移、遅延日数販売管理システム
与信台帳取引先コード、法人番号、現在の与信限度、前回レビュー日Excel/スプレッドシート
公開情報商号・所在地の変更、登記記録の閉鎖国税庁 法人番号システム Web-API
Step3

データの取得方法を決める

決算書PDF: デジタルPDFかスキャンPDFかで経路を分けます。

デジタルPDFは、Claude API に直接渡せます。1リクエストあたり最大32MB・600ページ(コンテキストウィンドウが1Mトークン未満の場合は100ページ)まで扱えます。各ページはテキストと画像の両方として処理されるため、表組みのレイアウトも読めます。大きなファイルは Files API にアップロードして file_id で参照すると、リクエストの本体を小さくできます。

スキャンPDFは、先にOCRに通します。これは省略できません。 Claude の citations 機能は、PDFのテキストを抽出して文単位に分割する仕組みのため、テキストを含まないスキャン画像のPDFは引用の対象になりません。 根拠ページを示せなくなると、この業務では確認に時間がかかります。

OCRには Azure AI Document Intelligence の prebuilt-layout を使います。このモデルは表を行数・列数・行結合・列結合の情報つきで抽出し、outputContentFormat=markdown でMarkdown形式の出力が得られます。v4.0(2024-11-30 GA)以降は、結合セルや複数行ヘッダーを表現するために表がHTML形式で出力されます。決算書は結合セルと階層のある表の塊なので、ここが効きます。

公開情報: 国税庁の法人番号システム Web-API で、法人番号を指定して基本3情報(商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号)と変更履歴を取得できます。利用にはアプリケーションIDが必要ですが、発行に費用はかかりません。1リクエストで指定できる法人番号は最大10件、期間指定による取得は最大50日までで、全件データの取得はできません。月40社なら、10件ずつ4回に分ければ足ります。

売掛残高: 販売管理システムのAPI、または月次エクスポートを参照します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. PDFの種別判定 … テキストが抽出できるかを調べ、できなければスキャンPDFとしてOCRへ回します
  2. 対象ページの絞り込み … 決算書一式には勘定科目内訳明細書や税務申告書が綴じ込まれていることがあります。貸借対照表・損益計算書・販売管理費明細のページだけに絞ると、精度が上がり費用も下がります
  3. 期の特定 … 3期分が1ファイルのこともあれば、3ファイルに分かれていることもあります。決算期をファイルから読み取り、どの期のものかを先に決めます
  4. 単位の確認 … 「単位:千円」の表記を拾います。ここを取り違えると、指標が1000倍ずれます
  5. Excelで受領した場合 … .xlsx は document ブロックで直接扱えないため、CSVかPDFに変換します
Step5

AIに処理させる

処理内容
勘定科目と金額の抽出貸借対照表・損益計算書の主要科目を、科目名と金額の組で取り出す
根拠ページの提示どのページのどの行から取った数値かを示す
科目名の寄せ「売掛債権」を社内標準科目の「売掛金」に対応付ける候補を出す
単位と期の判別千円単位か円単位か、どの決算期のものかを判別する
所見の下書き社内基準に照らして目立つ点を、根拠の数値つきで箇条書きにする
不整合の指摘貸借が一致しない、前期末と当期首が合わないといった点を挙げる

指標の計算はAIにさせません。 自己資本比率や流動比率は、抽出された数値からプログラムで計算します。計算をLLMに任せると、検算できない数値が資料に載ります。 AIの役割は「PDFから数値を取り出すこと」と「取り出した数値をもとに文章を書くこと」に限定します。

与信の可否、与信限度の金額、信用格付けもAIには出させません。 所見の下書きは「自己資本比率が前期の18%から9%に低下している」という事実の指摘までとし、「取引を縮小すべき」という結論は書かせません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは与信管理を担当する財務部員を支援する担当者です。
取引先の決算書から、社内の指標表に入れる勘定科目と金額を取り出してください。

【厳守事項】
- 決算書に記載されていない科目は、0 を入れずに null にしてください。
  「該当なし」と「記載なし」を区別してください。
- 金額は数値で返してください。単位が千円の場合は unit に "thousand_yen" と入れ、
  金額そのものは決算書の表記のまま返してください。円に換算しないでください。
- どのページから取った数値かを page に入れてください。
- 科目名が社内の標準科目と違う場合は、原文の科目名を source_label に残し、
  対応付けた標準科目を account に入れてください。
  【科目対応表】にない科目名は、account を null にし、unmapped に列挙してください。
- 与信の可否、与信限度、格付けを書かないでください。
  判断は人が行います。あなたは事実の指摘までにしてください。
- 所見には、必ず根拠となる数値と期を添えてください。
  「財務状態が悪化している」だけの記述はしないでください。
- 貸借が一致しない、前期末と当期首が合わない等があれば
  inconsistencies に列挙してください。数値を調整して合わせないでください。

【科目対応表】
{account_mapping}

【社内の判断基準(指標と閾値)】
{credit_criteria}

【決算書】
{financial_statements}

「0 を入れずに null」と「与信の可否を書かない」の2行が要です。 前者は、記載のない科目を0として扱うと指標が実態とずれるためです。後者は、AIの書いた結論が資料に残ると、決裁の場でそれが判断の根拠として扱われかねないためです。

Step7

出力形式を固定する

{
  "company_name": "",
  "corporate_number": "",
  "fiscal_periods": [
    {
      "period_end": "",
      "unit": "yen | thousand_yen | million_yen",
      "accounts": [
        { "account": "", "source_label": "", "amount": 0, "page": 0 }
      ]
    }
  ],
  "unmapped": [],
  "inconsistencies": [],
  "observations": [
    { "point": "", "evidence": "", "period": "" }
  ]
}

金額を数値型で固定し、単位を別のフィールドで持たせています。「1,234千円」のような文字列で返させると、後段の計算で必ず壊れます。

citations を有効にすると、回答に使った箇所が文単位で返り、PDFの場合は page_location(ページ位置)として返ります。根拠のページ番号が付いていると、確認画面でそのページを直接開けるようになり、突合の時間が大きく変わります。

Step8

システムへ連携する

指標表と所見の下書きは、スプレッドシートに出力します。与信台帳への登録は、担当者が確認して確定した後に行います。

販売管理システムへの与信限度の書き戻しは、この構成に含めません。 与信限度の変更は決裁を経て反映される値なので、承認ワークフローの外で自動更新する設計にはしません。

国税庁の法人番号システム Web-API から取得した商号・所在地の変更は、与信台帳の登記情報と比較し、差分があれば所見に加えます。商号変更や所在地の移転は、それ自体が与信上の確認事項になります。

Step9

人が確認する

全件、人が確認します。段階的な自動化もしません。

理由は、この資料が与信限度という金額の決裁に使われるためです。誤った数値にもとづいて限度を上げれば、回収不能の損失に直結します。

確認するのは次の3点です。

  • 抽出された数値が、決算書の原本と一致しているか(とくに自己資本、売上高、営業利益、現預金、借入金)
  • 科目の対応付けが妥当か(unmapped に入った科目の扱いを決める)
  • 所見の下書きが、事実として正しいか

確認を速くするための設計が重要です。

  • 確認画面で、決算書の原本と抽出結果を左右に並べて表示する
  • citations で返る根拠ページ番号から、PDFの該当ページへ直接飛べるようにする
  • 前期と比べて大きく動いた科目に色を付ける
  • 貸借の一致検算をプログラム側で行い、合わない場合は確認前に止める

最後の検算は必ず入れてください。貸借が一致していれば、主要科目の抽出はおおむね正しいと判断できます。 これが無いと、全科目を1つずつ目で追うことになり、確認に30分以上かかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
スキャンPDFで文字が読めないOCRの確信度を見て、低ければ人へ回す。推測値を入れない
貸借が一致しない処理を止めて人へ回す。数値を調整して合わせない
科目対応表にない科目名unmapped に入れて人へ回す。似た科目に勝手に寄せない
3期分そろっていないそろっている期だけで指標表を作り、不足を明示する。推計で埋めない
単位の記載がない人へ回す。金額の桁から推測させない
決算書が個人事業主の確定申告書様式が違う。自動処理の対象外とし、人へ回す
連結と単体が混在しているどちらの数値かを明示させ、混ぜない。判別できなければ人へ回す
法人番号が与信台帳にない法人番号システムの名称検索で候補を出し、人が特定する。自動で確定しない
決算書が入手できない資料を作らず、未入手として一覧に残す。信用調査レポートだけで代替しない
LLMが所見に結論を書いてしまった所見のテンプレートを事実の記述に限定し、確認画面で結論的な表現を検知して警告する
Step11

記録を残す

この業務では、判断の根拠を残すことが規程上の要件になります。

  • 決算書PDFの原本(受領日つき)
  • 抽出結果(生のJSON)と、根拠ページ
  • 計算した指標の値と、計算に使った数式
  • 所見の下書き(AI生成)と、人が修正した後の最終版
  • 確認者、確認日時、判断した与信限度
  • 参照した公開情報の取得日

AI生成の下書きと、人が確定した最終版を別々に残してください。 後で与信判断の妥当性が問われたとき、どこまでが機械の出力で、どこからが人の判断だったのかが分かる必要があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:生成AIの画面に決算書PDFを投入し、抽出結果をExcelへコピーする / 読み取りのみ
半自動化:フォルダ監視 → 抽出 → 指標計算 → 指標表と所見の下書きを出力 → 人が確認 / 転記・計算・下書き
本格構成:上記+販売管理システムの売掛情報+公開情報の自動確認+レビュー対象の自動抽出 / 確認と判断以外

半自動化の時点で、60分が30分程度になります。 転記の25分と計算の10分が消えるためです。本格構成にすると21分程度になります。売掛残高と公開情報の確認が自動化され、所見の下書きが揃うためです。 この業務では、半自動化で止める判断も妥当です。 販売管理システムとの連携は実装の手間が大きく、削減時間は9分程度にとどまるためです。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
21 分
現在  40件 × 60分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 40件 × 21分 ÷ 60 = 14 時間/月
月間削減時間
26h
削減率
65%
年間削減時間
312h
年間金額換算(時間単価4,000円)
125万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 掛売りの取引先が200社以上あり、年1回以上の与信レビューを社内規程で定めている企業。取引先から決算書をPDFで受領できていること。与信限度の判断基準(指標と閾値)がすでに文書化されていること。最終的に与信を判断する担当者が社内にいること。
向いていない
  1. 取引先が20社程度で、担当役員が個別に把握している場合。前払いや現金取引が中心で与信そのものが発生しない業態。金融機関の信用格付けのように、監督官庁の定めた手法と検証体制が要求される審査業務。決算書を入手できておらず、信用調査会社のレポートだけで判断している場合(元データが無いと自動化の対象が無い)。

07最小構成で試す方法

  1. 直近の決算書PDFを10社分用意する(デジタルPDFとスキャンPDFを混ぜる)
  2. 社内の科目対応表と判断基準をテキストにまとめる
  3. ChatGPTかClaudeの画面に決算書PDFを1社ずつ投入し、上のプロンプトを試す
  4. 抽出された主要科目(自己資本、売上高、営業利益、現預金、借入金)が原本と一致しているかを数える
  5. 貸借が一致するかを検算する

この検証だけは必ずやってください。 決算書の読み取り精度は、書式とPDFの作られ方に強く依存します。判断の目安は次のとおりです。

10社の結果判断
主要5科目が10社とも一致し、貸借も合う自動化する価値がある
8〜9社で一致使えるが、貸借の検算を必ず入れる。合わない社は人が処理する
スキャンPDFだけ精度が落ちるOCRを前段に入れる。デジタルPDFとは経路を分ける
半数以下決算書の書式の幅が大きすぎる。主要科目だけに絞って再検証する

所見の下書きは、指標表をそのまま貼って「社内基準に照らして気になる点を、根拠の数値つきで挙げてください。結論は書かないでください」と指示すれば試せます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
スキャンPDFで根拠ページを示せないcitations はテキストを含まないPDFを引用できない。OCRでテキスト化してから渡す
単位を取り違えて指標が1000倍ずれる「単位:千円」の表記を前処理で拾い、単位を別フィールドで持つ。円換算をAIにさせない
記載のない科目を0として扱うnull と 0 を区別させる。指標の分母が0になると計算が壊れる
科目名の表記ゆれで対応付けできない科目対応表に実例を集める。unmapped に出たものを毎月追記して育てる
指標の計算をLLMにさせて検算できない計算はプログラムで行う。AIは抽出と文章生成に限定する
貸借が合わないまま資料ができる検算を必ず入れ、合わなければ確認前に止める
連結と単体を混ぜるどちらの数値かを明示させる。判別できなければ人へ回す
AIが「取引縮小を推奨」と書いてしまう所見を事実の記述に限定する。結論的な表現を検知して警告する
法人番号を自動で確定して別会社に紐づける名称検索の結果は候補として出し、人が特定する
信用調査会社のレポートを外部AIに入れてしまう契約上の制限を確認する。確認前に入力しない
決算書のページ数が多くリクエストが通らない対象ページに絞る。大きいファイルは Files API にアップロードして参照する

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取引先の決算書、売掛残高、支払遅延の履歴、信用調査会社のレポート。取引先から秘密保持を前提に受領した財務情報が中心です。自社の情報ではありません。

  1. 外部AIへの入力可否 … 決算書は、取引先が与信審査のために提供したものです。目的外の利用や第三者への提供にあたらないかを、法務部門と確認してください。 受領時の合意内容によっては、外部サービスへの入力そのものが制限されます
  2. 信用調査会社のレポート … 多くの場合、契約で第三者提供や再利用が制限されています。外部AIへの入力が契約違反にならないかを、確認前に入れないでください。 判断がつかない場合は、レポートは自動処理の対象から外し、人が読む工程として残します
  3. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。取引先の財務情報を扱う以上、ここは選定条件になります
  4. アクセス権限 … 決算書PDFの保管場所と指標表を、財務部門と決裁者に限定します。営業部門が閲覧できる状態にすると、取引先との関係に影響します
  5. AIに判断させない範囲 … 与信の可否、与信限度の金額、格付けは、AIに出させません。所見も事実の指摘に限定します。「AIがこう評価した」という記述が決裁資料に残ると、判断の責任の所在が曖昧になります
  6. 自動実行してよい範囲 … 与信限度の書き戻しは自動化しません。決裁を経た値だけが台帳に入る状態を保ちます
  7. 誤りが与える影響 … 数値の誤りは、与信限度の過大設定を通じて回収不能の損失につながります。逆に過小に見積もれば、取引の機会を失います。どちらも人の確認で防ぐ設計にしています

判断の根拠と確認の記録を残し、後から追跡できる状態にしてください。

10まず何から始めるか

1週目:決算書の入手状況とPDFの種別を数える

レビュー対象500社のうち、決算書を入手できているのは何社か、そのうちデジタルPDFは何割かを数えます。入手率が半分を切るなら、営業経由の依頼の仕組みを作るほうが先です。 元データが無ければ、自動化する対象がありません。

2週目:10社で抽出精度を測る

デジタルPDFとスキャンPDFを混ぜた10社で、主要5科目の抽出精度と貸借の一致を測ります。この結果で導入可否が決まります。

3〜4週目:科目対応表を作る

10社の検証で unmapped に出た科目名を集め、社内標準科目への対応表を作ります。この作業がこの構成でもっとも地道で、もっとも効きます。 表記ゆれを50件ほど集めると、多くの決算書が通るようになります。

2か月目:半自動化を作る

フォルダ監視、抽出、指標計算、指標表と所見の下書きの出力までを作り、与信管理担当1名が1か月使います。60分が何分になるかを実測します。販売管理システムとの連携はまだ作りません。

3か月目以降: 削減効果が確認できたら、売掛残高と公開情報の自動取得を足します。あわせて、レビューが年1回・全社に回っているかを月次で確認してください。工数の削減幅よりも、この指標のほうが導入の成否を表します。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-11/最終更新:2026-09-11
確認した内容情報源確認日
Claude API のPDF対応が1リクエストあたり最大32MB・600ページ(コンテキストウィンドウが1Mトークン未満の場合は100ページ)であること。各ページがテキストと画像の両方として処理されること。大きなファイルは Files API にアップロードして file_id で参照できること。.xlsx はdocumentブロックで扱えないことClaude Docs: PDF support2026-09-11
citations がプレーンテキストとPDFを文単位に分割して引用を返すこと。PDFでは page_location(ページ位置)で返ること。テキストを抽出できないスキャンPDFは引用の対象にならないことClaude Docs: Citations2026-09-11
Azure AI Document Intelligence の prebuilt-layout が表を行数・列数・行結合・列結合つきで抽出すること。outputContentFormat=markdown でMarkdown出力が可能で、v4.0(2024-11-30 GA)以降は結合セルや複数行ヘッダーのため表がHTML形式で出力されることMicrosoft Learn: Document layout analysis2026-09-11
国税庁 法人番号システム Web-API で、法人番号を指定して基本3情報と変更履歴を取得できること。名称検索も可能。アプリケーションIDが必要だが発行費用は無料。1リクエストで指定できる法人番号は最大10件、期間指定は最大50日、全件データの取得はできないこと国税庁: 法人番号システム Web-API2026-09-11

販売管理システムからの売掛残高・支払遅延履歴の取得方式は製品によって異なります。この部分は利用環境に応じた個別確認が必要です。 取引先から受領した決算書および信用調査会社のレポートを外部AIサービスへ入力してよいかは、受領時の合意内容と各社との契約によります。法務部門に確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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